- Amazon.co.jp ・本 (461ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488464028
作品紹介・あらすじ
僕の住む国では、いろんなことが起きた。戦争が終わったんだ――猫は摩訶不思議な物語を語り始める。伊坂幸太郎10冊目の書き下ろし長編は、世界の秘密についてのおはなし。
感想・レビュー・書評
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R4.11.16 読了。
猫とネズミの関係性を巡る攻防や鉄国の兵士を誰が殺したかの謎解きぐらいまでは、楽しめましたが、最後は少し残念な終わり方でした。でも、猫たちの会話や動きは、描写が見えるようで読むのが楽しかったのに…。
私には伊坂さんらしくない物語だなあと感じられました。 -
長かったー。
冒頭から語り手が猫なので、めちゃめちゃ好きな感じだとわくわくしながら読み始めたが、次第に世界観に飽きてしまった。
もっとじっくりと時間をかけて読めるとよかったのかな。
本との出会いはタイミングも大事だなと思った。 -
目を覚ました男の胸の上に乗っている一匹の猫。その猫が語り始めたのは、どこかの国の戦争が終わったという話。
猫が人の言葉を話す時点で摩訶不思議なのですが、その話の内容も負けず劣らず摩訶不思議。戦争が終わったと宣言した王は兵士に突然討たれ、誰も乗っていない馬が町の広場に現われ、さらにこの世界には、クーパーという謎の怪物がいて、その怪物との戦いに向かった兵士は”透明”になってしまうという。
さらに語り手の猫は、鼠に捕まってしまい、そこでもまたおかしな話を聞かされて……
この話はファンタジーなのか、と思いつつも、この猫の話を聞く男が、役所の職員で浮気された直後で、さらには株取引が趣味という、ファンタジー感の欠片もない設定。読んでいる間、この話はどこに向かっていくのか、と探り探り読んでいきました。
物語の終盤の種明かしは圧巻の一言! 伏線を張っているのは、薄々感じるところはあったものの、それがどう回収されるのかは見当もつかず。そして、終盤物語の意味が明らかになると伏線はもちろん、世界観の構築、登場人物たちの行動、すべてが一気につながってくるのです。
「木を見て森を見ず」という言い回しはよく使われますが、この作品はまさにそんな感じ。伏線や登場人物たちの行動を描くのに猫の視点はうってつけだな、と感じます。神の視点のようにすべてを提示する必要もなく、一方で人間の思考や行動の制限がはいることもない。
そんな視点を使って部分部分を絶妙に見せつつ、物語の全体像が分かった瞬間に全てがストンと腑に落ちるよう作られています。不可解なものたちが一気に繋がる、まさに伊坂マジックといわざるを得ません。この爽快感はかなりのものでした。
そうした伏線回収や作品に仕掛けられたサプライズもさることながら、この物語の持つ意味もなかなかに考えさせられます。国と国の関係、国家と個人、対外的なものへの恐怖、狭められた視界。いずれも今の世界や、国と自分たちのあり方を考えさせるものであり、寓話的な側面も感じられます。
そして、猫のトムの語り口もユニーク! 友人の猫たちとジャンプ勝負をしたり、尻尾の動きを気にしたり、鼠を追いかける描写なんかは、本当に猫が語っているかのよう。
改めて考えてみるととんでもない物語なのですが、先に書いたようにそれを伊坂マジックが可能にしてしまった、そんな小説だったように思います。伊坂さんの作品を読むのはかなり久しぶりだったのですが、物語も語り口もとてもユニークで、読後感は爽やか。そして巧みに作り上げられた作品に感じました。 -
寓話のような、ファンタジーのような・・それでいて、現実世界の縮図とも取れる、一筋縄ではいかない物語です。
“戦争に負けた”小さな国に暮らす、猫のトムの視点と、この世界に漂着(?)した、妻に浮気された公務員の“私”の視点、そして“クーパーの兵士”となった若者の視点。この三つの視点織り交ぜての構成となっております。
本書のタイトルにもなっている“クーパー”とは、杉に似た“樹木の化け物”のことで、そのクーパーを倒す為に選ばれるのが“クーパーの兵士”と呼ばれております(これも、後で意味が変わる事に・・)。
前半は、敗戦国が戦勝国の兵士たちに支配される様。とまどう小国の人間たちとそれを眺める猫君の語りが、“私”と“クーパーの兵士”パートを挟みながらも長々と続きます。
正直、途中で“ちょっと、冗長だな・・”と思ってしまった程、進みが緩いのですが、これは伊坂さんお馴染みの“伏線ゾーン”であって、後でザザーッと回収してくれるまで黙って読むべし。という感じです。
そう、終盤の怒涛のような伏線回収は圧巻で、様々な事がオセロの如く覆っていく展開は読んでいて爽快になりました。
個人的に、この物語の要素である“閉ざされた小国”“隠された外の世界の真実”“支配者からの刷り込み”というテーマは、私の大好きな漫画『進撃の巨人』に通ずるところがあるかも、と勝手に思った次第です(“壁”もあるし)。
この話に登場するキャラである、複眼隊長の「何が正しくて、何が誤っているのか自分で判断しろ」という台詞がありましたが、まさに現実世界でも“己の曇りなき眼(まなこ)”で物事を見定める事が大切という事ですよね。
まぁ、私の眼(まなこ)は曇りガラス状態ですけど・・(苦笑)。 -
「君はいつも、僕たちの近くにいるなあ」
それだけじゃないよ。
我々猫は、いつも人の話を聴いてる。
人の喜怒哀楽を、不可解な行動を、
言い伝えを、戦争を、歴史を眺めてる。
そして、参加したがってる。
ネズミを追ったり、欠伸をしながらね。 -
私個人的には、伊坂幸太郎は当たり外れがある人なのだけど、この小説はとても読みやすかった。
猫が語り手となって始まるファンタジー。
クーパーという不気味な植物を倒すために、徴兵される青年たちと、息子はアレながら慕われる施政者冠人。
そこに鉄の国からの兵士たちが攻め込んでくる……。
人と、猫と、鼠と、しがないサラリーマン。
この四者の強弱構造が面白いのだけど、単純明快なストーリーに、強い者の傲慢さと弱い者の理性が上手く絡み合っていると思う。
最後に進展が明示されるのも、良い。
一つの訳の分からない出来事が終わって、それぞれが自分の内側に集約していく後味は好きだ。
喋る猫は、いついかなる時もチャーミングである。 -
戦争という難しいテーマを伊坂幸太郎らしく描かれています。私は好みです。
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ねこが語り聞かせてくれるある国のお話。
人も馬もそしてネズミもいるねこの住むその国は、戦争が終わって、支配されることになった。
「俺を信じるかどうかは、おまえたちの自由だ。どんなものでも、疑わず鵜呑みにすると痛い目に遭うぞ。たえず、疑う心を持てよ。そして、どっちの側にも立つな。一番大事なのはどの意見も同じくらい疑うことだ」
物事を一方的に見ることの危うさ。
自分の頭で考えることの大切さ。
付け足し。
初めて馬をみたねこのトムが、馬の歩き方をまねするシーンがとてもかわいい♡ -
最初は少しとっつきにくい感が強いが、慣れるといつもの伊坂ワールド。ただ、読む人は選ぶだろうな。本能に抗ってちゃんと鼠の訴えに耳を貸すトム君はとても知的でジェントルな猫。猫たちをはじめ、例外2人を除いてどのキャラクターも魅力的。目に見えることだけを信じてはいけない。聞いたことをそのまま鵜呑みにしてはいけない。爽やかな読後感だった。
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作者があとがきで記載している通り、とんでもないホラ話です。ストーリーが進むに連れて「おとぎ話」度が増していく感じです。作者の作品らしい格言が盛り込まれていますし、猫たちの会話でのギャグも好きです。
中盤までは物語りの進行が遅く退屈する場面もあるが、終盤での
真実が語られるシーンや、公務員の活躍が痛快で、読了感は悪くないです。
この作品は伊坂さんが大好きな大江健三郎さんのオマージュなんだと思います。だから、伊坂さんのいつもの作品とは...
この作品は伊坂さんが大好きな大江健三郎さんのオマージュなんだと思います。だから、伊坂さんのいつもの作品とは少し違うのだと思います。
私は大江さんが大好きなので、読みながらとても楽しかったので、いろんな読み方や考え方があるなぁと思いました。
読魔虫さんの感想も正しいと思います。
オマージュ作品の感想はいろんな意見が聞けて楽しいです(*^^*)