本バスめぐりん。 (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
3.56
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本棚登録 : 866
感想 : 61
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488487072

作品紹介・あらすじ

2019年、Twitterで話題!文庫本発売です。

都会を走る移動図書館、愛称「本バスめぐりん」。乗り込むのは六十五歳の新人運転手テルさんと、図書館司書ウメちゃんの、年の差四十のでこぼこコンビだ。巡回先で二人と一台を待ち受けるのは、利用者とふしぎな謎の数々で……。棚に並んだ本の中に、あなたの好みの一冊がありますように。本でつながる想いをのせて、めぐりんは今日も走る。本屋、出版社などさまざまな「本の現場」を描く著者が贈る、ハートフル・ミステリ。

感想・レビュー・書評

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  • あなたは、『移動図書館』を知っていますか?

    『移動図書館』、その言葉からは『野を越え山を越え、人里離れた辺境の集落まで本を載せたバスが走り、集まってきた村人たちに貸し出し、さらに次の集落を目指す』、そんな光景が思い浮かぶのではないでしょうか。幼い頃、親戚の家にお泊まりさせていただいた際、山村の奥深くに、生活の糧となるものを届ける移動販売車を目にしたことを覚えています。『移動図書館』と聞くと、それと同じイメージが私には浮かびます。しかし、その認識は間違っているようです。『となりの横浜市にだって移動図書館はあるんだぜ』と予想外なその活躍場所。決して山村だけでなく、大都市の近郊であっても『住んでるところから図書館が遠いエリア』へと向けて『行政サービスの一環としてまわっている』というその存在。

    そんな『移動図書館』にふとしたきっかけで関わることになった一人の男性の物語がここにあります。定年して『することのない日々』に辟易していたというその男性。『娘や息子には「ボケるよ」「大丈夫?」』と言われ、『いったい何が楽しくて生きているのよ』と妻に呆れられる毎日を送っていたその男性。そんな男性が始めたのは『移動図書館』の運転手でした。慣れない仕事に『この仕事、自分に向いているだろうか』と悩みながらも相棒となる司書の菜緒子と共に市内を巡回する日々。その中で『移動図書館がこんなにも利用されているとは、始めるまで想像もしていなかった』と気づく瞬間が訪れます。

    この作品はそんな男性が『とまどいもしたが新しい発見や気づきはたくさんあった』と『移動図書館』に関わる日々を思う物語。そんな日々の中に『少しは自分も変われた』と新しい自分に出会うことになる物語です。

    『所定の位置に車を駐め、サイドブレーキをかけてほっと息をつく』のは、主人公の照岡久志。そんな久志は『還暦を過ぎ、六十代も半ばになって』、『運転手さん』と呼ばれるようになることに戸惑いを感じます。『ちょっとそこの、上の本を取ってよ。あたしじゃ手が届かないの』と言う老婦人に対応するも『ちがう、それじゃない。右の。もっと右。行き過ぎ』と慣れない久志は戸惑います。ようやく目的の本を渡すも『あー、字ぃ小さいわ。こんなの読めやしない』と訴える老婦人に『なら、戻しておきましょうか。借りませんよね』と、元の場所に差し込む久志。しかし、老婦人はどうも『不機嫌そうな面持ち』です。そんな時『どうしましたか』と、同僚の梅園菜緖子が声をかけました。『二十代半ばの若い女の子』という菜緒子は、先程久志が収納した本を見て『茶道の本をお探しですか』と訊きます。『今度ね、行くかもしれないの。お茶の会みたいなのに… 今からでも勉強しとこうかと思って』と話す老婦人を『はい。ご案内します』と『車の反対側』へと誘います。『満足げにうなずき』、『こうでなきゃね』という一瞥を投げかけられた久志。『会社にいたときだったら』、『二十代の若者など…やっと少し使えるようになったというひよっこ』、しかし『今の久志にとって菜緖子は先輩だ』と思う久志は、『経験も知識も菜緖子の方が勝っている』と感じます。『やれやれ。ほんとうに、やれやれだ』と思う久志。そんな『久志の住む種川市』には『八つの市立図書館』があります。そして、種川市にも『移動図書館』があると『還暦を迎えてのクラス会』で初めて知った久志。そんな『移動図書館』の手伝いをしていると『久志よりも数年早く退職した榎本賢一』に聞いてもどこか他人事だった久志。しかし、定年して『朝から晩までの時間を持てあます』ようになった久志に再び賢一から声がかかります。『移動図書館の運転手にならないか』というその内容。帰って話をすると『まったく知らないところにお父さんが飛びこもうとするなんて』と妻の聡子に驚かれる有り様。しかし、賢一の熱心な勧めもあってやってみることにした久志。『通称「本バス」と呼ばれ、公募で決まった愛称は「めぐりん号」』という『移動図書館』は、『市内十六カ所を二週間かけてぐるりとまわ』ります。そんな中で、慣れない仕事に『この仕事、自分に向いているだろうか』と思いつつも日々来訪する人々と接していく久志。そんな久志が相棒である菜緒子と街を巡る中で身近なミステリーに向き合う物語が始まりました。

    『大都市である横浜に隣接している』という架空の都市である種川市の『市内十六カ所を二週間かけて』巡回するという『本を載せたバス』=『移動図書館』に光を当てるこの作品。五つの短編から構成される連作短編の形式をとっています。そんな作品で視点の主となるのは、定年を迎え、『することのない日々』に飽き飽きし、『娘や息子には「ボケるよ」「大丈夫?」としょっちゅう言われてしまう』という日々を送っていた照岡久志でした。『本なんてちょっとしか読まないし。偏ってるし』と、当初は後ろ向きだった久志も、定年後の何もない日々から脱出したい思いで『移動図書館』の運転手を引き受けます。そんな久志がそもそも驚いたのは『うんと遠くの、どこかの地方の話』だと思っていた『移動図書館』が自分が暮らす街にも存在していたという事実でした。『住んでるところから図書館が遠いエリアもある…そういう人たちに向けて行政サービスの一環として』提供されているというそのサービス。そんなサービスをあなたは利用したことがあるでしょうか?また、そんな『移動図書館』を目にしたことがあるでしょうか?そして、そんな図書館を利用してみたいと思うでしょうか?私はこの作品を読むまで『移動図書館』というもの自体言葉含めて全く知りませんでした。国内には実に342もの『移動図書館』が稼働しているという現状を知っても、そのものを知らない身にはなかなかイメージがわきません。しかし、大崎さんは五つの短編を通じてそんな『移動図書館』というものをとても丁寧に、わかりやすく読者に説明しながら物語を進めてくださいます。説明のための説明ではなく、あくまで物語の進行に溶け込むようになされるその説明で、作品を読み終える段では、この作品を読んだ読者に『移動図書館』というものが鮮やかに頭の中に浮かび上がる、そして、自分の住む街には『移動図書館』がないのか、調べたくなる、そんな興味深い読書がそこには用意されていました。

    大崎梢さんと言えば、代表作「配達赤ずきん」の刊行直前まで書店員をされていらした方です。本、本棚、そして本屋と、本に対する思いの強さから生まれる数々の名作群には、やはり本を愛するブクログのユーザーの皆さんには親近感が強く湧くところがあるのではないかと思います。そんな皆さんは、本を、書店で買うか、図書館で借りるかのいずれかの手段によって手にされていると思います。同じ本でも手にする手段が違うとそこに生まれるドラマも違ってくる、この作品はそんな一面も垣間見せてくれます。その違いが、本屋さんで本を買うという一方通行な流れではなく、借りて返してというやりとりの発生する図書館ならではの流れに注目したものでした。それが、『前にこの本を借りた方が、あやまって私物を挟んだまま返却したそうなんです』と、本に挟んだ”あるもの”が、本来繋がらなかったはずの人と人とを結びつけていく起点となる〈テルさん、ウメちゃん〉。また、新しく引っ越してきたものの友人も出来ず、何故か『同じ本を借り続ける』と、ミヒャエル・エンデの名作「モモ」ばかり借りていくという少女が『移動図書館』によって、ある人と繋がっていたことが結末に判明する〈道を照らす花〉。そして、『ここにいますよ。いつでも自由に来てください』という『移動図書館』というもののあり方、本と人とを繋げていくそんな施設の存在意義を感じる〈降っても晴れても〉など、そこに展開されるのは一方向のやり取りの本屋さんではあり得ず、双方向のやり取りの発生する図書館ならではの物語でした。

    また、身近なミステリーが物語に上手く絡められながら展開するこの作品には、本を強く愛する大崎さんだからこそのこんな印象的な言葉も登場します。

    『本って、変わらないのがいい…いつでもどんなときでも、開けばそこに同じ物語がある… 変わらないから安心できる』。

    私たちは、本を読む時に何を目的とするでしょうか?人によって嗜好は異なりますし、その時の気分によっても読書の目的は変わってくるでしょう。そして、本を読んで私たちは読中、読後に何らかの感想を持ち何かしら感情が動かされることがあるはずです。その内容によって、喜怒哀楽のいずれかの感情が必ず刺激される行為、それが読書でもあります。一方で本を読む私たちが生きる環境は一日一日と変化していきます。昨日と全く同じ今日が、そして明日があるなどという人はいないでしょう。それに対して、本は変わらない世界の象徴です。いつでも読み返せば、そこには同じ物語が待っていてくれる。変化する日常に比べて、決して変わらない物語がそこに待っていてくれる、そこに行けば安心感を与えてくれる、それが本。そして、そんな本が『いつでもそこにあって、自分を待っててくれる』という図書館の存在。

    ああ、なんという優しい、乱暴に扱うと壊れてしまいそうな感覚の上に描かれた物語なんだろう。そこに紡がれる人の優しさ、あたたかさを感じながら、本を閉じました。

    『移動図書館はあくまでもみんなのものよ。ベビーカーに乗ってくる赤ちゃんでも、杖を突いてくるお年寄りでも、目当ての本がちゃんとある。積まれている。どうぞどうぞと手招きしてる』という『移動図書館』を舞台に五つの物語が展開するこの作品。本屋さんで本を買ってしまえば一生それは自身の元に存在し続けます。しかし、『自分ちにある本を図書館でみつけるとなぜか嬉しくてわくわくしました』という感情を抱く人がいます。『不思議ですね。中身はまったく同じなのに、でもどこかちがうんです』という感情を抱く人がいます。そんなとても繊細な感情を大切にしながら、今日もあなたの元へと走り続ける『移動図書館』。本と人を繋いでいくその存在の大きさに気付かされた、そんな作品でした。

  • 都会を走る移動図書館、愛称「本バスめぐりん」。

    ここにいますよ。いつでも自由に来てください。
    棚に並んだ3000冊の本の中に、好みの一冊がありますように。
    口下手な運転手テルさんと、体育会系女子の司書ウメちゃんが、雨の日も晴れの日も曇りの日も、あなたのお越しを待っています。

    それぞれの巡回先で小さな謎をふたりが解決していく。
    みんなのさりげない優しさが心地よくて楽しめました。
    ただ最終章はちょっとわちゃわちゃし過ぎだったかな。

    これからも、いっぱい借りて、いっぱい買って、いっぱい読む!
    私は本が好きなんだと再確認出来る1冊でした。
    移動図書館、利用してみたかったな。


    『故郷の野山を見てほっとできる人もいるだろう。好きな音楽に癒やされる人もいるだろう。可愛いペットに慰められる人もいる。食べ物や飲み物で和む人もいる。本もだろうか。物語世界で癒やされる。ほっとできる。』

  • 神奈川県の横浜に隣接する「種川市(架空)」の公立移動図書館めぐりんとその利用者たちをめぐるハートフル・ミステリー。「図書館」&「地域コミュニティー」という日常生活に根ざした話で楽しめた。以前テレビドラマでやっていた『3匹のおっさん』(原作本もあるが)と似たようなゆるいローカルな雰囲気だなぁと個人的には感じた。同じ市内でもいろんな特色を持つ地区を巡回しており、その地区ごとの課題や環境はなんとなくリアルだった。移動図書館を通じて利用者同士が交流する様子は微笑ましかった。主人公はリタイア後、第2の仕事として任務にあたる運転手さん。続編もあるようなので、ぜひ読みたいと思う!

  • ブックウオッチング:『本バスめぐりん。』 大崎梢さん - 毎日新聞
    https://mainichi.jp/articles/20191106/ddm/015/040/021000c

    tomii masako(@tomidoron) • Instagram写真と動画
    https://www.instagram.com/tomidoron/

    本バスめぐりん。 - 大崎梢|東京創元社
    http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488487072
    http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488027674

  • 移動図書館”めぐりん号”の新人運転手”テルさん”が主人公のハートフル・ミステリ短編集。

    新人とはいえ65歳のテルさん。コンビを組む司書の”ウメちゃん”は20代。デコボココンビが微笑ましいやり取りを繰り広げます。

    利用者や相棒との温かい人間関係が描かれていてほのぼの。ニュータウンやお洒落な高級住宅地。まるで知っている町の出来事のようで親近感が沸きました。

    図書館で何を借りようかとワクワクする気持ちや、思いがけない本と出会う喜び…わかります。私は読みたい本をWEBで予約して借りる事が多いのですが、棚をじっくり見て探すのも醍醐味ですよね。登場する本が気になったので、今度借りに行きたいと思います。

  • 本バスめぐりんという、市立移動図書館に、定年退職後に再就職した65歳の新人運転手、テルさん
    図書館司書、ウメちゃんのコンビ。

    前職はエンジニアとして、プロジェクト開発~管理まで勤め上げたバリバリの会社人だが、公共サービスの接客となると勝手が違う。
    管理職となって若手との交流も減ってしまったがゆえ、様々な年代、職種の利用者の対応にギクシャクする。

    都内の図書館は、遅延本があると借りられなかったり、メールで知らせるなど、システム対策がめっちゃ進化してる。
    基本ちゃんと2週間で返すというルールを守る、市民達のマナーがなっている前提なのは、現代であるのかな…。ネガティブかニュースの見すぎかな?

  • #読了 2023.2.3

    「ハートフルミステリー」ってなによ?wと思ってたけど確かに言い得て妙でしたわ◎

    著者の作品は「クローバー・レイン」を読んだことがあって、イメージとしては「ニュートラル」「ハートフル」そんな中で、乗り越えるべき課題が出てくる、それを乗り越える姿に自分も少しがんばろうかなと思える、そんなかんじ。

    今回はそれにミステリー要素が加わった。別に殺人事件が起きるとかではなく、ミステリーと野次馬根性のような「気になるなぁ〜」の間のような感じで気軽にソワソワ感と解決した時のスッキリ感を楽しめる作品。登場人物たちの一生懸命さにも好感◎

    おとなしい美少女にみんなが甲斐甲斐しくするかんじはあまり好きじゃなかったかなw基本的には移動図書館の利用を重ねて顔を覚えられると「常連」になっていくわけだけど、常連になったからといってスタッフの人や他の利用者と仲良しクラブしたいわけじゃない。「この前あれ借りてた」とか勝手に噂されるのは嫌だなぁ。
    特に私はビジュアルに自信がないから、美少女でなんか周りがみんな気にするってかんじが、「美少女じゃなかったら、みなさん気にしなかったんじゃないんですかぁ?おぉん?」という性格の歪み丸出しの感想も出てきてしまうw
    まぁみんないいひとたちってのは伝わってきたので楽しく読めました◎

    移動図書館めぐりん。喜怒哀楽はっきり元気はつらつウメちゃんとサラリーマンリタイア後に運転手をすることになったテルさん。その土地や利用者さんを巡るストーリー。

    関係ないと思っちゃえばそれまでだし、諦めちゃえば終わりなんだけど、それを主人公のテルさんウメちゃんは気にかけ、行動を起こしていく。おせっかいもよくないけど放っておけないし、解決できるならできたほうがいいんだけど、、、と悩みながらも利用者さんに関わっていく。性善説を願い、そう生きてる人たちにとってはとても気持ちよく読める作品だと思う。

    本作の構成も短編でありながら、最後のお話ではこれまでの短編に出てきた利用者たちが登場して解決していく感じも良かった。

    解説にもあったが、著者の「本」への愛を感じる。基本的には主人公のテルさんウメちゃんの話だけど、(作家先生に失礼な表現だけど)「生活の中に(読者として)本の存在があった人だなぁ」と感じる。

    本との関わり方やその表現に、本書を読みながら何度か涙してしまった。登場人物に感情移入して涙することはあったが、こうして本という存在への感情で涙するとは思わなかった。自分もこれまでの人生に本があったんだなぁと改めて思う。

    ちなみに今住んでるところの移動図書館あるか調べたら2010年に廃止されてた(´-ω-`)やはりなかなか存続は難しいのだなぁ。



    -フレーズメモより p107-について
    ここ泣いちゃったわぁ。自分でもびっくり。

    私が通っていた小学校にも移動図書館が来ていた。当時習い事も多かったので、熱心に通ったということもないけど、バスにたくさん本が載ってる、ステップで上がって小さな図書館になってる、その中に入れるということにテンションがあがったものだ。図書室には行かないけど移動図書館が来ていたら覗きに行って、たまに借りていた。本書にある、本と出会う機会というのはそういうことだなと思う。
    当時は学園七不思議的なホラー系やこまったさんシリーズなど読んでいた記憶がある。

    また、母親が図書館で本を借りるタイプだったので、夏休みはよく一緒に行っていた。車で15分くらいかかるので母親の車で行くことが多かった。母親はミステリーなどの文庫もよく読んでいたし、冠婚葬祭や植物の育て方などのハウツー物も必要に応じて借りていたので、図書館は身近だったし、好きだった。

    自分は優等生気質なとこがあるし、(文字で書くと仰々しくなるが)父親が理不尽に怒鳴り散らす人でそれがほんとに嫌だったから、普通の公共の場より「他の人に迷惑かけないよう静かに過ごす」ということがより徹底されている空間に安心感があったのだと思う。今でも図書館という空間が好きだ。同じ理由で美術館や静かなカフェも好き。朝までオールでカラオケ!とかも大好きだけどね(笑)

    自分と移動図書館の思い出を振り返りながら母親と通った図書館のことを思い出した。
    親が図書館で本を借りる姿は、子どもが本を身近に感じる手法としてありだなぁと気付かされた。もう少し娘が大きくなったら一緒に行こうと思う。

    -フレーズメモ p137-について
    結婚後に登録制バイトででっかい工場の単純作業勤務のときに、20分休憩、お昼休憩、20分休憩というところがあった。でっかい工場だからロッカー室は遠い。作業着のポケットに小銭とケータイと文庫本を忍ばせて、休憩ごとに本を読んでいた。たばこ吸う人のたばこ休憩と似てるかもしれない。本読んでると10分でも「休憩したなぁ」って感覚になるよね。わかるわかる。

    -フレーズメモより p231-について
    本は感動する場面が違ったり、捉え方が違ったりするのがいいよね。そこの違いは映画や漫画より、より個性が出る気がする。

    -フレーズメモより 解説-について
    自分が読んだことある本を図書館や本屋さんで見かけたときの、あの感覚。ほんとね。なんだろね。あの感覚。うんうん、過去の一部を肯定してもらえた感覚。わかるわかるー。




    ◆内容(BOOK データベースより)
    種川市の移動図書館「本バスめぐりん」。乗り込むのは六十五歳の新人運転手テルさんと図書館司書ウメちゃん、年の差四十のでこぼこコンビだ。返却本に挟まれた忘れ物や、秘密を抱えた利用者など、巡回先でふたりを待ち受けるのは、いくつもの不思議な謎?!書店員や編集者を主人公に「本の現場」を描いてきた著者による新たな舞台は、図書館バス!ハートフル・ミステリ短編集。

  • 移動図書館「本バスめぐりん」で働き始めた65才のテルさんと、図書館司書ウメちゃんが、利用者さんとの触れ合いの中で小さな謎を解きながら市内16ヶ所を回る日々を温かく描いている。

    移動図書館を利用したことがないので分からないが、こんなに利用者同士やスタッフが仲良くなるものなのか、と驚いた。
    どこか地方ののどかな田舎町というわけでもなく、神奈川県のとある市なので。
    もちろん物語なので楽しんで読みましたが、ちょっと違和感も残ります。

  • 横浜に隣接する種川市を走る移動図書館
    久志はリタイアをして
    知り合いの賢一の後任でこの移動図書館のバス運転手になる
    通称「めくりん号」
    火曜日~金曜日午後まわる
    図書館社員の菜緒子とともに
    久志は「テルさん」
    菜穂子は「ウメさん」
    2人の年の差コンビと利用者がまきおこす
    ほのぼのミステリーと人間模様

    図書館は貸出人数の統計が出て
    様々なイベントを立ち上げ
    イベント人数を集計
    地域と連携をして図書館を盛り上げる
    図書館も潰れる時代で必死
    そうそうそうなのだよねと頷きながら読む

    コロナやネット社会がすすみ
    人との関係の気迫さに拍車がかかる
    だからこそこの小説の人々の繋がりや温かさに強い憧れをもった

    本も人との繋がりも私個人にとっては
    大切にしたいもの

    各章で「モモ」や「新参者」など
    各章にあった色々な本が出てくるのも粋で良い

  • 移動図書館めぐりん号をとりまく小さなほのぼのミステリー。
    なのだけれど、利用者さん達が他人のプライバシーに踏み込みすぎて行き過ぎた井戸端会議のよう。
    本を借りただけでここまで勝手に詮索やら分析をされると思うとほのぼのというよりちょっと不快で、小さなコミュニティって怖い。

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著者プロフィール

大崎梢
東京都生まれ。書店勤務を経て、二〇〇六年『配達あかずきん』でデビュー。主な著書に『片耳うさぎ』『夏のくじら』『スノーフレーク』『プリティが多すぎる』『クローバー・レイン』『めぐりんと私。』『バスクル新宿』など。また編著書に『大崎梢リクエスト! 本屋さんのアンソロジー』がある。

「2022年 『ここだけのお金の使いかた』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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