黒いチューリップ (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488512019

作品紹介・あらすじ

風車とチューリップの国オランダ、その片隅で神秘の花、黒いチューリップの創造に没頭する青年コルネリウスは、陰謀にまきこまれていまは断頭台へひかれていく運命にあった。風雲急を告げるオランダ戦争前夜の史実を背景に、大自然の摂理の妙と地上の血なまぐさい係争をめぐって展開する、大デュマ会心の恋と戦乱の雄渾なる一大叙事詩!

感想・レビュー・書評

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  • 『モンテクリスト伯』や『三銃士』の著者による恋愛小説。

    序盤は、ヤン・デ・ウィット兄弟惨殺事件から始まります(本書では、ジャン・ド・ウィット)。これは、オランダの国政のトップが、白昼の路上で民衆による集団リンチで亡くなったもので、著者による脚色があるものの、1672年に実際に起こった歴史的事件です(スピノザが怒って弾劾文のビラを貼りに行こうとした逸話が残っています)。

    それと時を同じくして、チューリップ栽培に夢中で世の中に無関心な青年が、莫大な懸賞金のかけられた黒いチューリップの品種開発に成功します。この青年、同じくチューリップ栽培に執心している隣人から嫉妬され、先の事件の兄が名付け親という関係と、その兄から重要書類を手渡された場面を盗み見られて密告されてしまいます。結果、青年は共謀者として逮捕されて監獄に。このままでは黒いチューリップは日の目を見ることが出来ません。そこで、その監獄の看守の娘に貴重な球根を託して育ててもらうことにするのですが、執念深い隣人がつけ狙い…

    と、主人公が監獄に入れられてしまうので、活躍するのは看守の娘。とてつもなく執念深い隣人のせいで、後半はハラハラドキドキの連続で一気読み。こんな人が隣人なんて真っ平ごめんですが、最後は大円団で終わるのでホッとしました。

    少し残念なのが、最後の方で主人公の勘違いから、育ててくれた女性に感謝するでもなく、罵りの言葉が漏れる場面の主人公のクズっぷり。必死な気持ちは分かりますが、感謝は大事だよなと思いました。

  • (あらすじ)
    オランダ、ドルトレヒトでチューリップの栽培に没頭しているコルネリウスは穏やかな青年でチューリップ以外の事には無関心。ある夜政治家である名付け親のコルネイユ・ド・ウィットから重大な手紙を預かってほしいと頼まれる。フランス王国ルイ14世はオランダを支配下に置きたいと目論んでいて、その手紙が見つかると彼とその弟で前総理大臣のジャン・ド・ウィットも売国奴として扱われてしまう。

    しかし運命は彼等に冷たく、ウィット兄弟は暴徒と化した住民によって惨殺されてしまう。コルネリウスも手紙を持っていた事で共犯とされ死刑が宣告されたが、新しい元首オレンジ公の恩赦によって終身刑となった。

    コルネリウスは黒いチューリップを咲かせるという大きな野望を持っていた。もしも黒いチューリップを咲かせる事が出来たらオランダの園芸協会から賞金と園芸家としての栄誉が与えられる。

    彼はこっそり隠し持ってきたチューリップの球根を牢獄の看守の娘ローザに託し、彼女を指導して、看守や他のものに見つからないよう密かに栽培を始めるのだが…
    ーーーーーーーーーーーーーーーー
    デュマ父のストーリーテリングの上手さは絶妙。ヒロインのローザがおとなしいけど芯のしっかりした好感度の高い少女で、彼女とコルネリウス、若い恋人達のやり取りがなんとも初々しく微笑ましい。

    ローザの父、看守のグリフィスは暴力的だしコルネリウスの隣人でチューリップ農家のボクステルは陰湿で嫉妬深く、キャラクターはややステレオタイプではあるが憎みきれない人間臭さがあって面白く読み進められた。

  • 登場人物が少なく読みやすかったです。
    物語としても、初めは流れが悪く読み進めづらかった部分はあるものの、中盤以降のハラハラ感のある展開が面白く感じました。
    「いじわる、おだまり」が好きでした

  • 黒いチューリップと恋を巡って物語が展開されていく。
    無罪にも関わらず困難な状況に陥ったベルルの悲観に暮れる事なく、小さな希望を持ち続ける姿は本当に素晴らしい。趣味に没頭できる才能がいかに凄いことかを教えてくれる。

    ローザとの恋の行方もさることながら、ボクステルの悪人ぶりも見物。嫉妬から生まれた怨念は自己を滅ぼす事になる。ボクステルの最後はまさにそれを表している。

  • ダルタニャン物語読了直後につき、印象はやや薄くなってしまったかも。
    ルイ14世がちょろっと話題に上るので、思い返してみたりもしつつ。
    チューリップバブルについては文春文庫の『チューリップ・バブル―人間を狂わせた花の物語』を昔読みましたねぇ。
    その熱狂具合が垣間見られる本でした。
    もっとも、熱狂具合は冒頭の私刑のシーンの方が上でしたけれど…。

  • 大デュマ、このころの小説というのがジャンルとして一番幸福だったのでしょう。勧善懲悪の物語として堂々としている。なんと云っても最終章のタイトルが、そのものずばり「大団円」。大団円のある小説を久しぶりに読んだ。いいな古典。

  • 終わりの方はちょっと性急な感じだけど、中盤のチューリップに一喜一憂する主人公が面白くてニヤニヤしてしまった。趣味に夢中になってる人って、だいたいこんな感じよね。牢番の娘との恋も微笑ましい。

  • 面白かった!!
    大分前に古本屋で購入した後、ずっと積んであったのですがようやく読みました。読み始めたらあっという間でした。(旅行に持って行ったので帰り道他の面子が寝ている中、読み終えてしまった)デュマって1/4黒人の血が入っていたんですね。そして椿姫のデュマのお父さんだったとは。恥ずかしながら知りませんでした…

    珍しい原種の薔薇や蘭を求めた植物ハンターが活躍したこともありました。品種改良を重ね、珍しい品種を求めるのは今の時代も変わらないのできっと好事家は今も昔も変わらないのでしょう。それは青いバラを追い求める今の世界でも同じことが言えそうです。(青いバラも発表されてますしね~)

    血沸き肉躍る大衆小説とはこういうものだ!と言うお手本のような作品だと思いました。面白かったです!!

  • デュマの作品は「モンテ・クリスト伯」「三銃士(ダルタニアン物語)」と長尺が多いので、気軽に手にとれるという点で貴重な作品です。

    20年ぶりくらいに読みました。勧善懲悪でストレートなストーリーは牧歌的と思えるくらい。昔読んだときは胸のすく思いをでしたが、今読み返すとボクステルが哀れなんですよ。もともとは主人公が背の高い家を立てて日当たりが悪くなったことが原因でしょ? 最初は被害者なんですよ。段々心が歪み悪に染まっていく。その過程がなかなか恐ろしいのです。

  • この訳では初読。
    初めて読んだのは、中学生のとき。
    とりあえず仮レビュー。

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著者プロフィール

1802-70。フランスを代表する小説家・劇作家。生涯に長短合わせて250篇あまりの作品を書いたとされる。主な作品に『コルシカの兄弟』『モンテ・クリスト伯(巌窟王)』『三銃士』『ブラジュロンヌ子爵(鉄仮面)』『ダルタニャン物語』『王妃マルゴ』『王妃の首飾り』など。

「2016年 『ボルジア家』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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