ラヴクラフトの遺産 (創元推理文庫) (創元推理文庫 F ラ 1-11)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (599ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488523114

作品紹介・あらすじ

20世紀最大の怪奇小説作家、H・P・ラヴクラフト。彼を愛し、その作品に影響を受けたホラー作家は、枚挙にいとまがない。その生誕100周年を祝し、ここに高弟ロバート・ブロックをはじめ、F・ポール・ウィルスン、B・ラムレイら14人の"遺産相続人"が集い、恐怖と奇想の物語を書き下ろした。かの巨匠を現代に蘇らせる魔道書の如きアンソロジー、ついに登場。

感想・レビュー・書評

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  • ラヴクラフトに影響を受けた英米の作家による
    オマージュ・アンソロジー。

    収録作は、

     レイ・ガートン「間男」(The Other Man)
     モート・キャッスル「吾が心臓の秘密」(A Secret of the Heart)
     グレアム・マスタートン「シェークスピア奇譚」(Will)
     ブライアン・ラムレイ「大いなる〝C〟」(Big "C")
     ゲイリー・ブランナー「忌まわしきもの」(Ugly)
     ヒュー・B・ケイヴ「血の島」(The Blade and the Claw)
     ジョゼフ・A・シトロ「霊魂の番人」(Soul Keeper)
     チェット・ウィリアムスン「ヘルムート・ヘッケルの日記と書簡」
     (From the Papers of Helmut Hecker)
     ブライアン・マクノートン「食屍鬼メリフィリア」(Meryphillia)
     ジーン・ウルフ「黄泉の妖神」(Lord of the Land)
     ゲイアン・ウィルスン「ラヴクラフト邸探訪記」(H.P.L.)
     エド・ゴーマン「邪教の魔力」(The Order of Things Unknown)
     F・ポール・ウィルスン「荒地」(The Barrens)

    SFありホラーあり、玉石混交の短編集。
    何を言わんとしているのかよくわからない(笑)
    にもかかわらず、
    しっかり読ませてしまうジーン・ウルフ「黄泉の妖神」
    が圧巻。
    拾い物はエド・ゴーマン「邪教の魔力」。

    詳細は後でブログに。
    https://fukagawa-natsumi.hatenablog.com/

  • それぞれの作品の冒頭に作者紹介,文末に作者によるラブクラフトへの愛情込めた作者後記.とても贅沢なアンソロジーだと思うの.「間男」「忌まわしきもの」「邪教の魔力」あたりが好き.

  •  ラヴクラフト生誕100周年を記念して作成されたアンソロジー集。ラヴクラフトが生み出した概念である《宇宙的恐怖/コズミックホラー》をテーマにした13篇の作品が収録されている。ここで注意したいのは、「クトゥルー神話は《宇宙的恐怖/コズミックホラー》に内包される概念」であることだ。つまり本書は、「クトゥルー神話を含むコズミックホラーの作品集である」ことを、これから読もうとする人、購入しようとする人は気をつけてほしい。
    ------------------------------------------------------------
    『間男』(ガートン)
     妻が突然、幽体離脱にのめり込むようになる。そして幽体離脱中のうわ言から、彼女が肉体を持たない相手と浮気をしていると踏んだぼくは、同じように幽体離脱の方法を習得し、妻の後を追うことに――。
    (予想外の結末に「ええー……っ」と唸った後は絶句してしまった。)

    『吾が心臓の秘密』(キャッスル)
     汝は不死を望むかね? 無論有償であり、代価が必要だが、死という無窮の暗黒に囚われる恐怖に比べれば些細なものだ。お気付きの通り、吾輩は代価を支払い不死者となった。今から、その経緯を語るとしよう――。
    (幼少期の体験から死を恐れた男が、不死を得るまでの経緯を語るという自伝的な内容。幼少時の体験の、正気を削られるような描写は、ラヴクラフトへのオマージュを感じられる。)

    『シェークスピア奇譚』(マスタートン)
     かつて、シェークスピアが所属していた劇団によって建てられ、そして焼け落ちた劇場があった地から死体が発見される。状況証拠から劇場が火事に遭った際に巻き込まれて死んだ人間と思われたが、その身体には何か巨大な口に食いちぎられたと思しき痕があった――。
    (シェイクスピアとクトゥルー神話を絡めたフーダニットもの。シェイクスピアが旧支配者である■■と契約していたという展開で、あなたが『Fate/Grand Order』のプレイヤーなら一読をお薦めする。)

    『大いなる"C"』(ラムレイ)
     時は近未来。大いなる"C"の要請により、わたしは友人に会いに行くことになった。変わり果てたアメリカ大陸を車で移動する間、過去を振り返る。全ては、月の裏側に隠れていた、もう一つの月が発見されたことから始まった――。
    (タイタス・クロウシリーズなどでお馴染みのラムレイによる侵略もの。大いなる"C"のビジュアル表現は正に宇宙的恐怖に満ちており、映像で見たいと思わせるほど。)

    『忌まわしきもの』(ブランナー)
     クラインは蚤の市で、自身の醜い顔とよく似た顔をしたトカゲが封じ込められた、プラスチックの塊を購入する。次の日に帰宅してトカゲを見ると、昨日は開いていたはずの右目が閉じていた。こいつは生きているのか――?
    (原題が"Ugly [ブサイク/醜悪]"ときた。だがシンプルかつ本作の内容に相応しいもの。はたして誰の何が"Ugly"なのか。ぜひ読んで確かめてほしい。)

    『血の島』(ケイヴ)
     取材のために、妻とともにハイチで暮らすことにしたキャノン。嫌悪するものが多い島での暮らしに気を荒立てる妻を宥めながら引っ越しを終わらせたその晩、地下室で、頭部と両手のみの幽霊と遭遇してしまう――。
    (土着信仰に当時の政治情勢を絡めた内容の因果応報譚。)

    『霊魂の番人』(シトロ)
     宗教にのめり込む妻に愛想を尽かして家を出たカールは、途中で自動車事故を起こしてしまう。目覚めるとそこは病院ではなく、その近くに住んでいるという男の家だった。そして男は彼を監禁し、天国に至る教育を強いるのだった――。
    (悪夢めいた内容。それがはたして、狂信者に囚われたという悲劇なのか、それとも本当に死んでいて、選択を誤った末に地獄に堕ちるという悲劇なのか、曖昧なまま結末を迎えるというのがモダンホラーらしさ。)

    『ヘルムート・ヘッケルの日記と書簡』(C.ウィリアムスン)
     高慢でサディストの気がある作家のヘッケルは、プロヴィデンスで次作の構想を練っていた。しかし、傑作と疑わなかった新作を盗作と指摘される。激昂したヘッケルは、盗作したネタ元と指摘されたラヴクラフトの作品を"初めて"読んでみると、その内容は確かに自身の新作と酷似していて――。
    (作家や創作活動をしているものには正に恐怖を感じさせる内容。果たして自分は、書いているのか書かされているのか。)

    『食屍姫メリフィリア』(マクノートン)
     メリフィリアは食屍鬼に成り果てた今も、俗世に未練を残していた。ある夜、狂気を歌う人間の詩人に一目惚れするが、彼から、自分が恋い慕っていた女性の遺体を代価にした依頼を請われ、煩悶しながらもそれを飲むことに――。
    (悍ましくも切ないラヴロマンス。食屍鬼の性生活や変身能力など、TRPGに使えそうな新設定が盛り込まれているので、KP経験者にお勧めしたい。)

    『黄泉の妖神』(ウルフ)
     伝承を収集しているクーパーは、とある地に住む老人から「魂抜き鬼」の話を採集する。老人の家族に誘われて一晩泊まることにしたクーパーはその夜、彼らが何かを恐れていることに気付く――。
    (土着系×宇宙系のハイブリッド作品。)

    『ラヴクラフト邸探訪記』(ウィルスン)
     文通相手の誘いに応じてプロヴィデンスを訪れたエドワード。そして待ち合わせの場所に来た文通相手はラヴクラフトその人だった! 彼はどのようにして病気を克服したのか、そして彼の傍に立つパートナーの正体は――。
    (ラヴクラフト愛に溢れるパロディかつオマージュ作品。ライナーの『星の世界へ』が気に入った人なら、きっとこの作品もお気に召すだろう。)

    『邪教の魔力』(ゴーマン)
     ある夢を見るようになったことをきっかけに、かつて住んでいた街を再訪したハンロンは、その足でかつて交流していた老人に会いに行く。老人は言った。「お前は邪神に生贄を捧げる役目に選ばれたのだ」と――。
    (短編ながらも闇に塗れた情緒の描写は濃く、役目に選ばれた男の悲哀と苦悩を伝えてくる。)

    『荒野』(F.P.ウィルスン)
     会計士のわたしの元を、かつての恋人が訪ねてくる。彼はジャージー・デビルの伝承を採集するためにわたしの地元に行きたいのだが、その迷いやすい立地ゆえに案内を申し込んでくる。満たされない日々を送っていたわたしは気分転換も兼ねて承諾したのだが、彼の本当の目的は別にあった――。
    (ラストに相応しく、規模は小さいながらも優れた冒険ホラーもの。怪現象の描写は素晴らしく、映像で見たいくらいに濃密。ちなみに、この作品に登場する「光」は、TRPGでは神話生物/クリーチャーとして扱われていて、『マレウス・モンストロルム』にデータが掲載されている。)

  • ラヴクラフト生誕100年を祝し彼の影響を受けた14人の作家による書き下ろしアンソロジー。正直を言えばクトゥルー神話は同じパターンになりがちなので、後世の人間が真似しても新鮮味がなくつまらないケースが多い。そんな中、グレアムマスタートンの「シェークスピア奇譚」とFPウィルスンの「荒地」が素晴らしい。ゲイアンウィルスンの「ラヴクラフト邸探訪記」も好き。読むにつれてパラノイア的恐怖が頭を占めていく。クトゥルー神話のパターン化した完全性がもう少しで破れそうな期待をさせる。

  • ラブクラフトに向けたアンソロジー。ラブクラフトの影響を受けたとかクトゥルフ神話とかの括りでなく、ラブクラフトを尊敬する人達がラブクラフトのために書いた短編と言った趣き。

    そして、ラブクラフトとそれ以外の作家の圧倒的な差に愕然とする。軽く読むにはそれなりですが。

  • ポール・ウィルスン『荒地』
    人を惑わす広大な松林という、珍しい舞台。
    インスマスやダンウィッチもそうだけど、アメリカが舞台だと、まず物理的に遠い!(現代文明から)と感じられるのがいい。
    主人公の神経過敏さと、連れの躁的な言動の不気味さ。
    ドラマチックで後味の悪い結末もいい。
    かなり好きな話。
    寝る前に読んだら夢見が悪くなった。

    ・グレアム・マスタートン『シェークスピア奇譚』
    クトゥルフ物でしかもシェークスピアまで持ち出した。
    腕の無いのを有名人の名前でごまかしてずるいぞ、という印象。
    でもシェークスピアに関するエピソードは面白い。
    どこまで本当なんだろう。

  • 2000年はHPL生誕110周年だったそうで、彼に捧げられたとも言えるアンソロジー。

    HPLといえば"クトゥルー神話"なのだが、これはそれに限らず、「極めてアメリカ的(解説より)な」ホラー・アンソロジーとなっている。

  • いくつか既読もあったもののなかなか楽しかった。ラムレイ「大いなるC」は着想、スケールの大きさ、スピーディな展開とそろった傑作。現代的な筆致の「邪教の魔力」「荒地」も面白かった。

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