図書室の魔法 上 (創元SF文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488749019

作品紹介・あらすじ

喪失と孤独を抱えた聡明すぎる少女を救ったのは、本との出会い。秘密の日記に綴られた青春を静かな筆致で描く、ヒューゴー賞・ネビュラ賞・英国幻想文学大賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 1979年.モリは双子の妹を亡くし、母からは攻撃を受けている。全寮制の学校に入ることになったモリは孤独な毎日を送りながらも大好きなSFやファンタジーを読み漁り…

    今上巻を読み終えたところ。
    SFやファンタジーの解説や要素が沢山散りばめられています。
    とくにトールキンの『指輪物語』はあちらこちらで引用されているので、読んだことがある人の方が断然面白いと感じると思います。その他『ナルニア国物語』、ル・グイン、フィリップ・K・ディックやアーサー・C・クラーク、スターウォーズまでSFやファンタジーの有名どころが、いーっばい出てきます。
    私は、『指輪物語』の映画3部作を観たことはあるものの、トールキン1冊、ハインライン1冊しか読んだことがなく、モリたちが本の書評を語るシーンでは、全くついて行けない状態ですが、それでも十分面白いです。

    フェアリー(妖精というより自然の中の精霊のイメージ)が見えるモリ。身体と心が成長してもフェアリーは見えるのか。
    通常でない方法でできた友情でモリは大丈夫なのか。
    母はどうしてモリを攻撃してくるのか。父や親戚とはどうなるのか。
    そしてモルの魂は…
    気になります…とっても。明日まで待てません。
    今から図書館へ下巻を借りに行ってきます!

  • 『SFを読んでいると、今まで想像すらしていなかったような視点を提示されることで、新たな考えが広がってゆく。そしてわたしは、それをとても嬉しく思う。』(P91より)

    もしいつか、SFの何が面白いのかと、誰かに聞かれたらモリのこの言葉を拝借したい。

    1970年代末、15才の少女のモリは、精神を病んだ母から逃れ一度も会ったことのない、実父のもとに引き取られる。しかし、実父と同居していた叔母たちの意向で、女子寄宿学校に入れられてしまう。

    周囲になじめない彼女は、日記に心情を吐露し、自分にしか知らない秘密と、SFとファンタジー小説を支えに日々を過ごしていく。

    モリの書いている日記、という形式で進んでいくこの『図書室の魔法』という小説。神の視点や状況描写がなく、モリの書き言葉のみで進行するので、状況はややつかみにくいかも。

    モリはなぜ、正常に歩けなくなるほどの怪我を負っているのか。モリの双子の妹はなぜ亡くなったのか。母親が病んだ理由は。そしてなぜモリに悪意を向けるのか。
    そのあたりの説明は匂わせるくらいで、上巻では語られることはほとんどありません。

    学校や親戚の叔母たちになじめない彼女の著述は、自然に愚痴っぽくなり、不満が大部分を占めます。読んでいてなかなか気分が上がりにくいし、日常の話が続くので小説としてのゴールも、いまいち掴めない。

    さらに、彼女にしか見えないフェアリーの存在や、魔法の存在も謎。
    日記の著述ではモリはフェアリーと話をし、魔法も当たり前のように書いているのだけど、これが彼女の想像の話なのか、どこまで本気で書いているのかも良く分からない。

    現実からの逃避なのか、創作なのか。はたまたいわゆる不思議ちゃんなのか。それとも本当に見えているのか。ここも話の筋が掴みにくくなる理由かも。

    でも繊細な描写は、魅力的の一言に尽きる。モリが寄宿学校の休暇期間中に、故郷に帰る部分なんかは、郷愁や彼女の胸の内の寂しさが垣間見えて、自然と心に残るし、
    ウソかホントか分からないフェアリーたちとの交流の描写も、現実と幻想の境界線が曖昧になるような、なんとも言いがたい雰囲気に満ちあふれています。

    寄宿学校での生活の描写が詳細でリアルなので、その雰囲気や英国の文化も読んでいて興味深いのだけど、この実生活のリアルさとフェアリーとの交流や、魔法のことを大真面目に書くメルヘンな彼女の著述が、なんともアンバランス。
    それが日記にアクセントを出している気がします。

    果たしてどこまでが現実で、どこからが想像なのか。読んでいるうちにそれが曖昧になってきて、本当にフェアリーや魔法が生活の中に隠れている気分にもなってきます。

    そんなモリのもう一つの支えがSF小説とファンタジー小説。日記の中でも次々と言及されるのだけど、その数がまあすごい。

    トールキンの『指輪物語』、ル・グウィンの『ゲド戦記』、ルイスの『ナルニア国物語』といった世界三大ファンタジーにアシモフ、クラーク、ハインラインのSFビッグ3は当たり前。

    他には分かるところでいったら、カート・ヴォネガット、ジェイムズ・ティプトリー、ロバート・シルヴァーバーグ等々(著者名と作品が一致したの、これくらいしかない……)
    しかもSFだけでなく文学、ミステリ、さらにはマルクスやプラトンといった政治・哲学書まで、まあウジャウジャと出てくる、出てくる……。これ全部読んでる強者はいるのか?

    じゃあ、この本がブックリスト代わりに使えるか、と言われたらそんな感じでも無い。作品それぞれに詳しい説明があるわけでもないし、多分、ある程度SF・ファンタジーへの造詣がないと、その部分の面白みは伝わらない気がします。そういう意味では読み手を選ぶ小説かも。

    でも逆にいうと、SF・ファンタジーファンなら楽しみは倍増しそう。ル・グウィンの『所有せざる人々』の社会に思いをめぐらすモリであったり、『ナルニア国物語』の宗教性の賛否をめぐる話なんかは、読んだことある人は「ああ、あのことね」と内輪ネタ的な楽しみ方もできそう。
    そして、まったく知らない作品や、名前だけは知っている作品が作中で出てくると、ついつい気になってしまう。

    「これだけの読み手であるモリが絶賛する小説って、どんな小説なんだ?」

    ブクログをしていると、凄い読み手の人がたくさんいて、「この人がこれだけ絶賛している作品や、作家ってどんなんなんだ?」と思うことはよくありますが、この日記の書き手であるモリにも、その思いを感じるのです。

    そしていつの間にか、同じ本を読んだもの同士の縁、同じジャンルが好きなもの同士の縁や情というものを、架空の存在であるモリにも感じてしまう。

    だから、鬱々とした描写が続いても、うんざりすることなく、モリのその後が気になって読んでしまう、そんな気がします。

    鬱々とした描写が多い一方で、モリが図書室の先生と仲良くなったり、小説を通して、初めて会った父と関係性を深めたり、上巻のラスト近くで寄宿学校のある地元で開かれるSFの読書クラブに参加するシーンなんかは、心救われる気がします。

    孤独を深め、フェアリーと魔法だけに救いを求める彼女が、愛した本、愛したSFやファンタジーで人と繋がるのは、同好の士としてただただ嬉しく感じます。

    モリの怪我の理由。妹が死んだわけ。母の悪意。フェアリーと魔法。

    今一つ分からないところも多いし、場合によってはそれが詳しく言及されないまま、下巻も終わってしまう気がしないでもない。でも、モリの行く末だけはちゃんと見届けてあげないと。
    上巻を読み終えた時点では、そんな気分になっています。

  • ジョー・ウォルトンの新たな魅力。
    15歳の本好きな少女の視点で、寄宿学校の生活に、フェアリーと魔法が絡む物語。

    モリことモルウェナ・マコーヴァは、15歳。
    モリが幼い頃に家を出たきりだった父親のダニエルに引き取られ、すぐ父の姉たちによって全寮制の女子校に送り込まれます。
    ウェールズの峡谷にある美しい村で生まれ育ったモリ。
    母方の祖父母と叔母に可愛がられて育ちましたが、祖父の入院で、顔も知らなかった父の元へ来るしかなくなったのでした。

    イングランドでは言葉のなまりも違い、学校でからかわれることになります。
    1年前に交通事故で双子の妹モルを喪い、自分も片脚が不自由になっているモリ。
    しかも、その事故には実の母親が絡んでいて‥
    今も悪意に満ちた手紙を送ってくるという。
    森に住むフェアリーを見ることが出来た双子ですが、イングランドではフェアリーも滅多に見当たらない。

    読書家で、特にSFを大量に読んでいるモリ。
    孤独な日々を支えているのが、魅力に溢れた本の世界でした。
    伯母たちに逆らえない大人しい父のダニエルもSF好きだったため、だんだん友人のようになります。
    学校の図書室の司書ミス・キャロルには親切にしてもらい、勧められたジョセフィン・テイも読んだり。
    そして、町の図書館に集まるSFのサークルがあることを知り、参加できることに!

    そう簡単にはめげない女の子が抱える不幸が痛ましいけれど、日記の形でびしばし子供の本音が語られるのが面白い。
    一体、どんな展開に‥?!
    ファン投票で選ばれるヒューゴー賞を受賞したというのは、わかります♪

  • あらら、感想を書き留め忘れていた。
    きっと下巻を読み終えてから…と思ったんだろうけれど、下巻にも書いてない。

    でも星3つということは、面白かったはず。

  • 凄い!「ヒューゴー賞・ネビュラ賞・英国幻想文学大賞受賞作」

    東京創元社のPR
    http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488749019

  • 1979年。家を出て、父を頼って中学(高校?)に入ったモルウェナ。叔母や従兄弟に世話になりながら、学校に通う。事故で失った妹のことを思いつつ、古本と図書館を通じて、SFを読み漁る毎日だが、友人や図書館の司書を通じて交友が広がっていく…。

    イントロのわかりやすい小話の後に「このあとはこのような読みやすい文章はない」と綴られているとおり、モルウェナ(モリ)による一人称の日常と思考が日記のスタイルで続いていく。客観的な情景描写がないため、モリのかってに想像している世界の話なのか、そういう物事が起こっているのかがわかりにくい。

    本作の少なくとも上巻で、どうしても拭いきれない部分はそこである。本当にフェアリーはいるのか。母親が魔女で、モリに呪いをかけているのは本当なのか。そもそも魔法は存在するのか。双子のモルは本当に存在したのか。

    根本の部分を信じてよいのかどうなのかわからぬまま読みすすめることになるうえ、序盤に3人のおば、実の父、別の父、祖父と祖母などイギリスらしいめんどくさいファミリーのお約束が羅列される。イギリス物ってこれが面倒なんだよな。その家を出ればいいのに、トラブりながら家にいる。トラブルが有るからお話が出来るのか。

    また本作の面白いところでもあり、ほとんどの人にとっては知ったこっちゃない話が、日記の1.5回に1度は出てくるSFの話である。というか、本の感想。トールキン『指輪物語』をある意味頂点に据えているモルウェナと、その友達。そこにティプトリーJr、ル・グイン、アシモフなどのSFやファンタジーの作家に対する思い入れがこれでもかと詰められており、その話の2回に1回くらいはニヤリと出来なければ、ただ鬱陶しいだけであろう。

    とりあえず、上巻が終わった時点では日常のドラマの話なのか、ファンタジーに片足を突っ込んでいるのかの判断がつかない。ましてやSFの部分に関しては、創元SF文庫である以外の内容はない。

    上巻の後半になって女学生の日常からドラマは動き始め、理解しやすくはなっているが、ここで面白いかっていう判断ができる人はいないだろう。

    ただ、ちょっと可愛らしい表紙につられて買うと、かなり痛い目にあう作品である。

    余談「ヒューゴー賞ネビュラ…受賞」って、表紙のど真ん中に書くものかね。あと、「Among Others」からこの子供が手に取りそうなタイトルにしたのもやや疑問。子供向けではない。なお、訳は読みやすい方だと思う。

  • 【あらすじ】
    15歳の少女モリは精神を病んだ母親から逃れ、一度も会ったことのない実父に引き取られたが、親族の意向で女子寄宿学校に入れられてしまう。周囲になじめないモリは大好きなSFと、自分だけが知る魔法やフェアリーの秘密を支えに生きてゆこうとする。1979‐80年の英国を舞台に、読書好きの繊細な少女が日記に綴る青春の日々。ヒューゴー賞・ネビュラ賞・英国幻想文学大賞受賞作。

    ・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆

    訳文が非常に読みづらいのと、内容がとてもわかりにくく、全然物語に入っていけなかったため、上巻の途中で読むのをやめてしまいました。端々にものすごい量の英米文学の名著らしきタイトルが出てきますが、それを知らない人間にとってはただ物語をわかりにくくしているだけ。イギリスの文化に精通している人・興味がある人なら楽しめるのかも。
    主人公が何者か、どのような立場に置かれた人間なのか、この物語は何に向かって進んでいくのか…その辺りが全く見えないまま数百ページ読むのは辛いです。

  • 双子の妹を失い、魔女と化した母親から逃れたモリは事故で足が不自由になるが、幼いころ別れた父親と3人の伯母さんに引き取られる。そして、伯母さんたちが卒業した寄宿制の女子高に行くことになる。
    数学以外の成績は優秀だが、女子高の女の子たちになじめない。モリは大好きなSFやファンタジーの小説を読むことに没頭する。学校の図書室の本だけでは足りず、町の公共図書館も利用するようになり、そおで開催される読書会に参加するようになるう。

    数々のSFやファンタジーのタイトルが登場し、モリの読書量の多さに驚き!
    モリが魔女と畏れる母親とは、双子のモルを失い自身も障害を負った事故とは、後半でわかるのかしら??

  • 読書会って面白いよね!
    感想は下巻で。

  • す、す、素晴らしい!
    感想は下巻で。

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