経済危機のルーツ ―モノづくりはグーグルとウォール街に負けたのか
- 東洋経済新報社 (2010年4月9日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (366ページ)
- / ISBN・EAN: 9784492395325
感想・レビュー・書評
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前半の70年代から90年代に至る歴史のパート、IT・金融のパート、まとめのパートに分かれている。金融のパートは金融に無縁の人にはとっつきにくい内容になっているので飛ばしてもよさそうだ。しかし、前半の歴史のパートだけでも読む価値は大いにある。
経済や指導者の変遷が現代にいたるまでどう必然性を持って推移してきたかが各国横串で解説されている。70年代のアメリカがベトナム戦争で苦しんでいる頃、イギリスは、フランスは、ドイツは、ソ連は、日本は、というように国の政治や経済が有機的につながりを持ち頭に理解を促してくれる。
なるほど、イメージとしてはアメリカの80年代というのは数々のハリウッド映画やレーガン大統領のイメージから華やかなイメージがあったが、かなり疲労している状態にあった。イギリスにおいても同様だ。というのもこれらの国は脱工業化を図り、生産性が人口に比例しない産業へシフトしようとしていたのだ。それがITや金融というものだ。
日本は戦後の荒廃からの復興と人口増加と工業化のタイミングが一致することで高度成長を成し遂げ、バブルへと突入した。その裏でアメリカやイギリスは脱工業化をしていたのだ。
このような強烈な成功体験は日本人の中で強く印象づけられ広く共有された。「ものづくり」や「家族のような会社」「年功序列」「終身雇用」の成功もあの時代だから最適な産業であり、組織形態だったと言えるだろう。
日本も脱工業化を図るべきという主張ではあるが、その先がITか金融かは日本という国民性に適しているのかは検討が必要なものだろう。この成熟した社会はもう一皮向けて新たな波を生み出せるのだろうか。 -
市場経済はなぜ歴史遺産を残せるのか。
→文化を残すのは市場。多くのひとの判断が反映される分権社会では極端に間違ったことは起きない。
技術上の変化と経済政策の思想の変化、どちらが大切か。
→技術。特に90年代のIT情報技術。しかし、分権や自由という概念と技術の進歩は密接に結び付いている。 -
70年代から現代に至るまでの近代史。読ませる文章。
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もいちど読む
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ちょうど本書を読んでいたところ、1980年以来の貿易収支赤字のニュースが伝えられ、昨夜のNHKのニュースでは野口氏がビジネスモデルの転換(「脱工業化」)が必要とコメントしていた。日本のモノづくりの再生一色というトーンから変化が起きているのかな。
本書は、現在の世界経済危機の背景を70年代から振り返って検証している。現在の日本の立ち位置が理解できる良書と思う。バブル崩壊で「失われた20年」とかいっててんやわんやし、世界に対して閉じこもってているうちに世界は大きく変わった。(1)冷戦終結と中国工業化、(2)金融とITの変革、(3)(資本と人的資源の)グローバリゼーション。
日本は海外に学ぶ率直さを取り戻し、脱工業化する必要があると主張している。 -
要旨は金融>製造だけか?!
これ程までに弱者の痛みに無頓着だと思わなかった。 -
70年代からの世界の経済活動の歴史を順に紐解いていくことにより、浮かび上がる日本の今の状況。
読みやすく分かりやすい。住宅ローンについて他に幾つか読んだが、この本の説明が一番わかりやすかった。 -
・変化に対応すること
・古いものの生き残りを支援してはいけない
・質の高い教育が必要 -
知らないことがたくさん書いてあったから、情報集としてはいい刺激になった。けど、数字の並べ方とかが、露骨に事実を歪めてそうで(比較する対象じゃないものを並べたり、技と必要な数字出さなかったり)読みながらちょっとこれ見せ方歪めてない?っていちいち気になったのが内容が良かっただけに余計残念。
あと彼はきっと昔の日本人のトップを走って近代的(なんなら昔は語学ができたり海外に行けるのはそれこそ特権階級だったんだろうから余計に)特別な生活を送ってたんだろうなっていう自慢がちらほら。本当に恵まれたお金持ちだったんだろうからしょうがないし、だからこそいろいろ知っててこの本が書けるんだろうけど、まーなんていうか、庶民が本当はどう思ってどんな生活をしてたのかはこの本からは見えない。
あと金融の話が、知らない人にはわからんよね、っていうていで書いてるから、本当にわかんなかった。かみぐだいてくれてるけど、あたしには足りなくて理解出来ず。
ドイツとロシアが興味深かった。アメリカとイギリスのことこそメインなのかもしれないけど。ものに面白かったことには間違いなし。