経済危機のルーツ ―モノづくりはグーグルとウォール街に負けたのか

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  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (366ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492395325

感想・レビュー・書評

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  • 1970年代からの世界経済の歴史が学べる本。ただ、金融立国が日本の進むべき道だとは思えない。。。

  • 野口さんの書かれる本は本当に深く、そして幅広く、様々な点で頷かされ、そして納得させられます。この本も是非読むべき1冊だと思います。

  • ちきりん著『マーケット感覚を身につけよう』参考文献

  • 「金融緩和で日本は破綻する」よりは遥かにわかりやすく理解できました~。
    以前、NHKで見たサブプライム破綻のドキュメンタリー(http://bit.ly/19Dfxwt)で金融工学ってエゲつないなと思っていたのだが、その「エゲつない」と思えるところの正しい認識を教えてもらったという感じ。(しかし、このNスペをみてなかったら内容把握できたかどうかは怪しい。わかりやすい図解映像を事前に見ていたおかげでこの本の内容を理解できたかもしれない。)
    「エゲつなかった」のは「道具(金融工学)」ではなく、「人間」だったという話ね。あの住宅ローンバブルの中で、ちゃんとリクスを理解できて破綻していない金融機関もあったわけで。
    そして、第2次対戦の戦勝国と敗戦国の、バブルと停滞のテレコ感がなるほどなぁ…、でしたねぇ。(日本とドイツ、ほんとそっくりなのね!?)そして、この次はどうなるのか。
    とりあえず、「ものづくり日本」に固執しすぎるのはヤバいというのはわかった。

  • *70年代
    ヒト・モノは変わらないがカネ・情報は変わった

    71年、ニクソンショック→ブレトン・ウッズ体制崩壊
     ∵敗戦国の成長
    74年、オイルショック
     しかし、原油と金の同時上昇により、原因はドル価値下落にある
     西ドイツと日本が早期に対応できたのは通貨高

    70年代の西ドイツと日本の躍進
     1.戦後復興に伴い重工業を一から組成できた
     2.人口成長率
     3.社会制度(労使関係・大型直接金融)

    また、コンピュータが一般化したことで、
    全体主義に矛盾が生じる

    *80年代
    サッチャーとレーガンの新自由主義=民営化・規制緩和

    背景的な思想:
    市場を代替する資源配分メカニズムは存在しない
     (中央集権型社会主義は経済計算が不可能)
    ※不完全な例:公共財、外部経済、情報非対称性、バブルなど

    (老人が居座ったこともあり)ソ連生産性低下
    (抵抗されないと思われ)東諸国独立
    89年、ベルリンの壁崩壊。91年、ソ連崩壊。

    市場経済は分権的なので、文化保全もわりとうまくいく

    *90年代(IT金融)
    80年代の変化が90年代に影響。
    とりわけ、ITと金融革命の影響が著しい。

    ・IT革命
    通信自由化・一般化
    ・金融革命
    1)住宅ローン
     パススルー→モーゲッジ(償還順位順)→94年、利上げにより破綻
     しかし、ボラティリティの抑制という点で革命的
     とはいえ、市場リスクに対して対抗不能
     この時、モーゲッジのうち最上位はスーパーシニア、
     複数の証券をまとめたシンセティックCDO
    2)オプション
     80年代、ブラック・ショールズモデルの完成
     ITベンチャー(ストック・オプション)や、商社にとってプラス
    3)CDS
     損失の補填。資金の提供とリスクの負担の分離が可能に
     これにより自己資本の積立が不要に
     価格変動は不可避であることもあり、非常にこれは重要

    イギリス:マーチャント・バンク
    アメリカ:投資銀行
    両者とも証券業務(取次を行うだけの日系金融とは異なる)
    87年のサッチャー金融ビックバンにより、
    ロスチャイルド以外のマーチャント・バンクは消える
    (∵人の取次(斡旋)は得意だったが、新しいファイナンス理論の活用が苦手だった

    しかし、日本の金融は、大企業の資金需要の停滞により、変化
    (直接金融の台頭、高度経済成長期の終了)
    運用難が生じ、不動産バブルとアメリカのバブルを引き起こす
     →後者、イールドカーブのフラット化

    にも関わらず、住宅投資は進まず、直接金融化(証券業務?)も進まず、
    鎖国化し続けている

    *90年代(アメリカイギリス)
    アメリカ:脱工業化→高度なサービス(金融IT)の台頭
    注:対人サービスは生産性が低いが、これは技術を活用した高いサービス

    IT賃金は新興国水準に収束したが、金融は高いまま
    イギリスも含め、脱工業化する

    21世紀型グローバリゼーション
    ・資本(直接投資の受け入れ)
    ・労働力(移民の受け入れ)
    直接投資+IT+教育=アイルランド

    世界的金融緩和もプラスに働いたが、
    金融業の収益の差は、リスクの差でもあることに注意

    日本は、脱工業化+21世紀型グローバリゼーションに失敗した

    *00年代
    日本は、外需と円安で復活した(本質的構造改革ではない)

    住宅バブル発生@アメリカ(バブルだと意識されていた)
    サブプライムローン(返済条件ゆるい→急激に厳しくなる)の台頭

    キャッシュアウト・リファイナンス
    住宅を売って新しい住宅を買っていた(住宅価格は上がっていた)
    金利引き上げでも止まらず

    JPモルガン・チェースはCDOのリスク回避を行ったが、
    残りの金融機関は無視した(リスク管理を軽視した)
    結果、08年バブル崩壊+リーマン・ショック

    06年夏頃からモーゲッジ価格下落、債務不履行、
    これを証券化したMBSの価値下落→証券会社・投資銀行破綻

    日本は、円キャリー取引(円をドル化して証券化)終了で円高
    外需落ち込みにより不況

    一般に、製造業中心国は平均値より低く、金融危機の影響も強く受けた
    金融部門が成長できた理由は、
    1.中国工業化→世界の工場
    2.金融部門の大きな雇用吸収力
    3.IT×ファイナンス理論発展で金融サービスの進展
    4.資本関係の国際化
    しかし、これは世界的なマクロ経済の歪みで支えられていた
    (中国・日本の黒字)

    国内総生産+輸入=国内支出+輸出より、
    支出減っても、輸入減るなら(生産には)問題ない

    いま、アメリカではITとバイオテクノロジーが注目されている
    水平分業が進む→望ましい国際分業へ
    (巨大市場が存在するとはいえ、一人あたりGDP低く、同じものを持って行っても成功しないことに注意)

    *これからの日本
    日本停滞の原因
    1.冷戦終結と中国工業化
    2.金融とITの革新(に対応できていないこと)
    3.21世紀型グローバリゼーション(に対応できていないこと)
      (これは、年功序列的組織構造下で、
       過去の成功者が決定権を握っている→現状維持至上主義)

    これに対処すべく、
    1.古いものの生き残りに支援を与えないこと
      (変化へのインセンティブを消滅させる)
    2.21世紀型グローバリゼーションの実現
      (変革を引き起こすには、刺激、特に外からのものが必要)
      (日本のいい所を見直す ではダメ)
    3.専門分野での教育→付加価値の高い物の生産
      (例えば、社会人の勉強を支援しないし、MBA保有者への賃金も低い)

    勤勉さと外国に学ぶ率直さを、もう一度呼び戻すべき

  • 少し古いが70年代からリーマンショック後までの経済を広く浅く総復習するにはちょうどいい。

    それぞれの話の根拠には大抵数字を引用されているため事実は信頼できる一方で、記載されていない背景や前提を考慮せず、主張がやや歪められている箇所がある印象は否めない。

    但し、金融立国への方向転換を示唆するなどテクニカルな話だけでなく、日本人(日本社会)の閉塞感の脱却がブレークスルーとも帰結する彼の熱意に共感したい。

  • 戦後世界経済の流れについてマクロ視点でのわかりやすい解説。今起こっていることをよく理解できた。

  • 全ての日本人必読。これから日本が進むべき道を考えるための良書。

  • 1970年代のニクソンショック以降の世界経済の流れを解説し、将来の展望が描かれた本

    歴史の流れ・背景などがとてもよく分かった。読むのに結構パワーいるけど、おすすめ。

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著者プロフィール

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業。64年大蔵省入省。72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て2017年9月より早稲田大学ビジネスファイナンス研究センター顧問。専攻はファイナンス理論、日本経済論。ベストセラー多数。Twitterアカウント:@yukionoguchi10

「2023年 『「超」整理手帳 スケジュール・シート スタンダード2024』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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