雨ふる本屋 (単行本図書)

著者 :
  • 童心社
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本棚登録 : 1526
感想 : 169
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  • Amazon.co.jp ・本 (231ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784494019427

感想・レビュー・書評

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  • 音や景色、色の表現がとても好きでした。

    不思議な世界の、クセ強めな住人たち
    雨はキライですが、梅雨のこの時期に読むと、雨が少し好きになれそうです。

  • 通い始めたブックカフェのブックトークというイベントで教えてもらった児童書。
    一度図書館でぱらぱら捲ってみたことがあった本だったので、これを期にと借りてきました。

    主人公のルウ子は、妹のサラのことが気にくわない。
    頼まれたおやつの買い物の途中で雨がひどくなって駆け込んだ図書館で、ますます強くなる雨脚。もう少し雨がおさまるまで雨宿りをしようと図書館の中を歩いていると、ポケットの中に入れていたカタツムリがころりと飛び出していった。
    妹を驚かせようと捕まえていたカタツムリ。
    悪戯のあとにはちゃんと外へ放してあげるつもりだったのに!このままではここで干からびてしまう!そう思ったルウ子は、カタツムリを捕まえようと追いかけるけれど、カタツムリは滑るように素早く動いて、図書館の奥へ奥へと進んで行く。
    そうしているうちに見たこともない棚に囲まれていたルウ子は、怖くなって引き返すけれど、行けども行けども棚は続き、心が不安に押しつぶされそうになったその時、目に飛び込んできたのは『雨降る本屋』だった。
    ドアを押し開けて入ると、中は雨が降っていた!
    床には草や苔が生えており、棚に本がたくさん収まってはいるけれど、店主は不機嫌だけど本を愛しているドードー鳥のフルホン氏。彼と共に本屋にいたのは舞舞子さんという不思議な雰囲気の女性で、彼女は半分は人間で半分を妖精にあげてしまった妖精使いだった。彼らはルウ子が人間の子供だと知ると、頼みたいことがあると言って今この雨降る本屋が抱えている問題を教えてくれた。
    この本屋さんは、ただの本屋さんではない。
    生き物の忘れてしまったお話の種を、記憶のたっぷりと詰まった雨で本へと育てていき、その本を売っているのだという。
    しかし最近この物語の種がどうやら不作で、上手く本にならない。
    この原因をどうかルウ子に調べて来て欲しいというのだ。
    何故ならこの物語の種が集う『ほっぽり森』は、人間の“夢見る力”でないと行かれないからだった。
    ちょうどやってきた特別な青い小鳥の男の子、ホシ丸君と一緒にルウ子はほっぽり森へと向かうのでした。
    果たしていったいそこで何が起こっているのか。

    描写がとにかく繊細。
    児童文学って、本当に言葉がやさしくい。そしてうつくしい。
    簡単な言葉だけど、単純な文章にはなっていなくて、想像力を増幅させるようなスイッチがめちゃくちゃ押される。
    バクは目を覚ましたのか。幽霊はちゃんと小説が書けているのか。幽霊の書き残してしまった小説はどんなものだったのか。本当は現実でどうなっているのか。
    それにしても“ほっぽり森”の描写、透明な木々や、物語りの種の震える音、大きくなった物語の種を掬い上げる花が浮かび上がる場面と、ため息が出るほどうつくしい文章がたくさんあって、児童書はこれだから!ととっても楽しかった。
    続きも忘れないうちに読みたい。

  • 雨、図書館の奥の異界、巨大な本棚、不思議ないきものが営む本屋、物語の種、不思議な森…設定や小物なんかを見ると好きな世界のはずなんだけどなぁ。
    期待しすぎたか。

    なんだか本好きの子が初めて思いついた「オリジナルストーリー」みたいな話だ。
    たとえばジャンプ好きの子なら、「狐憑きの元人斬りがひょんなことから悪魔と契約して海賊の仲間になってトーナメント形式の大会で闘ったら偉大な父の血に目覚めて鬼の力が開眼!」みたいな。
    「ああいうのを書きたい」が「あんな風に面白い作品を創りたい」ではなく「あの設定を使いたい」になっちゃってるような幼さがある。

    多分私は著者が読んできたのと似たような本で育っていると思う。
    この本の中の「すてきなもの」はみんな、誰かの名作が透けてみえる。
    本で読んだすてきなものだけを材料に作ったようなこのお話は、この本の表現に従えば「カスカスのパン」だ。
    つぎはぎ設定ばかりでオリジナルの物語がない。

    「ような」だらけで比喩が多すぎる文章は、かえってイメージをぼやけさせる。
    たとえば舞々子さんは良い魔女や精霊系の、感じのよい綺麗なお姉さん。
    だけど「山ぶどう色のくちびる」。山ぶどうって唇の色じゃないよ?
    あえて魔女色の唇にしたというよりは、山ぶどうを文字でしか知らないんじゃないかと思ってしまう。
    本物の夜空を見ずに、本の中の夜空描写を書き写したかのような表現は、別の本を連想させるばかりで本物の空を想像させてくれない。
    文章自体もうまくないから、些細な違和感が大量発生して物語がささくれる。磨きが足りない。

    主人公の半端な現実感もよくない。
    「本屋さんでタバコなんて吸っていいんですか」って気づく子なら、まず雨を気にするだろう。
    ルウ子の悩みはものすごくどうでもいいちっぽけなものだ。
    それも「すべてに全力のこどもにとっては重大なこと」じゃなくて、「狭い世界で生きているから些細なことでぐじぐじする」でしかない。
    妹への思いだって、妹を悪く思う自分の罪悪感をもてあましているだけで、妹自体がどうこうってわけじゃない。
    つまんない面倒くさい子だなとしか思えなかった。

    この本の中の、「物語イコール本」という価値観も狭い。
    いい本を選んでくれる妖精の存在は、検索機みたいで萎える。
    ワードのウザイルカが頭に浮かんだ。
    選ぶことこそ本屋・図書館の楽しみなのに。

    すごく下手だとか悪いとかどうしても嫌だとか、そういう部分があるわけじゃない。
    でも雰囲気しかない。
    「薬の魔女」や「まぼろしの薬売り」と似た系統のダメさ。
    あそこまでひどくはないけれど、質のいい児童書じゃない。

    物足りないのは、直前に「雨・本屋を入り口にした異界・人間の子の夢が物語世界を救う」という設定がかぶる(というかルーツであろう)「はてしない物語」を読んでしまったせいもあるかもしれない。
    あんな特上と比べちゃったらどうしたって落ちる。


    表紙の絵は素敵だけど中の絵は普通。
    キャラクターの挿絵をみたら一気に幻想的な雰囲気がそがれてしまった。
    かわいらしい絵には想像の余地がない。
    絵で形を設定されると想像上の美しさが小さくまとまってしまう。
    ドードーのはずのフルホンさんはどうみてもアヒル。(「らんま1/2」のムースを思い出した)

    まったく同じ印象を「月夜のチャトラパトラ」http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4062158647にも持ったから、多分この人はカラーのほうが得意なんだろうな。
    でも白黒の挿絵をちゃんと白黒で書いてあるのは良い。
    最近の本に多い、カラーの絵を白黒印刷したようなのは好きじゃない。

  •  おつかいの帰りに雨に降られ、図書館で雨宿りをするルウ子。母を独占している妹に意地悪しようと捕まえたカタツムリが逃げ出し、それを追いかけるうちにルウ子は不思議な本屋へたどり着く。“忘れられた夢”を本にしている「雨ふる本屋」の店主・ドードー鳥のフルホンと、助手の舞々子に頼まれ、ルウ子は青い鳥の少年・ホシ丸と共に“ほっぽり森”へ向かう。“忘れられた夢”が劣化した原因は何なのか?


     図書館本。
     タイトルや表紙からはファンタジックな雰囲気が伝わってくるのだが、いざ読んでみると、残念ながら物足りない。
     病気がちでわがままを言う幼い妹、妹に付きっきりの母、不満を抱えた姉、という児童書でよく見かける構図と、雨と水に包まれた幻想的な世界での出来事が結び付く必然性が充分でないように感じた。

     必然性は予想通りの展開で明らかにされるのだが、ルウ子の家族との関わりの描写が少なすぎ、お決まりの展開を取って付けたようにしか思えなかった。

     表現力のある文体でありながら、この出来具合は非常にもったいない。おそらく中学年あたりからでも読めるように、との内容や文章量と思われるが、思いきってもっと長い作品を書かれてはいかがかと思う。

  • 低学年から読める本なのであっという間に読了。でも、最近日本語が使えなくなってきているのと、変に回りくどい文章を読んでいるせいかこの文章に癒しを感じる。
    児童図書は最近になって読み始めたけどあっさりしているし日本語も正しく使えるようになるのでどんどん読んでいきたい。
    雨ふる本屋はファンタジーでいい本が完成しないと嘆いている店主を人間の女の子が空想を駆使して冒険する話。

  • ファンタジーだった。
    今月の展示にちょうどいい作品かな、とは思うけど、私には向いてなかったなあ。
    人間に忘れられた物語を集めて、雨を利用して物語を完成させる本屋さん、面白い発想だけど、本が濡そう、とついつい思ってしまうと、もう話に入っていけない。
    ルウ子はまたこの本屋さんへ行くことは出来るのかなぁ。
    雨の季節にピッタリの話だった。

  • すごくおもしろかった。おれも、雨ふる本やに行って、まいまいこさんやホシ丸さんに会ってみたい。でも、できればゆうれいには会いたくないし、森にも行きたくない。(小3)

  • 物語だからこそある、現実にはない世界を楽しめる感覚。

    想像力豊かに本の中の世界に入り込むことが出来ると読書って楽しさ倍増するんだよね。

    小学生にオススメ。

  • 表現や描写の比喩が豊かな作品。
    久しぶりの児童書でしたが
    抵抗なく読めた。

  • 普通の本とはちょっとちがう、雨降る本屋さん。
    フルホンさんと舞々子さん、ホシ丸くんもかわいらしい。本屋でレインコート着て長靴履いてってなかなか珍しいお話だった。
    ルウ子の冒険はまだ続いていくのかな。

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著者プロフィール

1984年、兵庫県生まれ。児童文学作家、日本児童文学者協会員。「雨ふる本屋」シリーズなど児童書のジャンルで活躍する中、2018年に冒険ファンタジー『火狩りの王〈一〉 春ノ火』を刊行、同作は全5作のシリーズとなりのちにアニメ化するなど大きな話題となる。他の著書に「すすめ!図書くらぶ」シリーズ、『魔法の庭へ』『日曜日の王国』など多数。

「2023年 『ネバーブルーの伝説』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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