われ巣鴨に出頭せず: 近衛文麿と天皇

著者 :
  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (435ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532165635

感想・レビュー・書評

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  • この著作を読むかぎり、木戸幸一内大臣は相当の策士、曲者であるように描かれているし、G2の対敵諜報部課長でありマルクス主義者ハーバート・ノーマンと木戸の実弟の娘と結婚した都留重人で合作した「戦争責任に関する覚書」が近衛文麿を貶めたとし、ノーマンの後ろにはスターリンの存在があったと結論付けている。 それにしても、昔の政治家たちは堂々と妾を囲っていたのですね。

  • 近衛文麿の伝記。
    なぜ近衛文麿は出頭せず、自害の道を選んだのかをゴールに、
    その生い立ちから丁寧に綴る。
    時折横道にそれるような内容や、ソ連の陰謀説を織り交ぜてくるため、
    全てを鵜呑みにはできないが、
    全体的にわかりやすく、引き込まれる内容であった。
    近衛文麿の太平洋戦争に対する卓越した見通しや、
    それ故に奔走した開戦前の諸工作、
    またその後の受難などは大変に悲劇的であり、面白い。
    ソ連、ひいては共産化に非常な危惧を抱いていた点が興味深かった。
    日中戦争で果たした役割についてはもう少し詳しく勉強したい。

  •  「近衛文麿」という政治家は、日中関係において「蒋介石の国民政府を相手とせず」という誤った政治判断を行った「失敗した政治家」と記憶している。 
     「昭和天皇独白録」などを読むと、昭和天皇の評価もあまり高くなかったようであるから、もっと詳細な履歴を知ってみようと本書を手にとってみたが、読中に思わず「これは」とつぶやいてしまった。
     まるで週刊雑誌のように「女性関係」や「家族・母親との関係」が実に執拗に取り上げられる。
     それでも当時の時代状況も詳細に描かれているから読み続けたが、「歴史的考察」というよりもまるで「歴史読み物」のような断定的文体のように思える。
     400㌻以上の本書の半分も進んだところ、「上海事変」の項目で「盧溝橋事件をでっち上げ、近衛内閣の不拡大方針と蒋介石の慎重論を手玉にとって戦火を拡大し両者を戦わせたのは、誰あろうスターリン指揮下のコミンテルンだったとすれば、神をも欺くもの」とある。
     先人と違った歴史の解釈をするならば、新しい資料発掘か、さもなくば相当な資料検討と重層的な考察を必要とする。
     それなしに、一般的な認識を断定的にひっくり返すことは、歴史書ではなく「政治プロパガンダ」書と言われても仕方がない。
     読書半ばで本書を読む気を全く失ってしまった。本書はまったく残念な書であると思う。

  • 酷い本。読んでる最中は、文芸春秋から出ていないことを疑問に思ってたんだが、最後は日経で出ていることを納得。これ日経が腐るほど出している、『人物松下幸之助』みたいな本だ。日本の出版界は“評伝”なるジャンルを出すのは止めたほうがいいよ。いや、経営者に関してはじゃんじゃん出しても良いけどさ、自分は読まないだけで。ただこの本が日経から出ている現状にはいろいろ考えさせられたね。<br>

    信用できない主観に溢れた語り口の文体、一次資料の引用の適当さ。近衛文麿についてどうこう言う以前に、著述のスタイルに問題がある本。最後の引用文献に、一次資料より右寄りの本が並んでいるのが凄い。

    <br>あんまり罵倒しててもしかたないので、若干内容に触れる。近衛の再評価を目的に書かれた本のようで、大戦前と大戦中に和平の可能性を探ったことと、彼の柔和な人柄に焦点を当てることでその目的を達しようとしている。実際、この本では、彼の人柄を語るために一次資料が多く引用されている。和平志向と人格によって評価されなければならないのなら、チェンバレンにも高い評価が必要だろう。どうも著者は、戦後、近衛に対して手のひらを翻した大衆と、歴史的な評価を混同した上で憤っているようで、読んでいて違和感を感じたことしきりだった。<br>さて、近衛文麿という人に対して、マイナスイメージ、あるいは低評価が下されている最大要因は、彼が戦後にとった態度からだと思われる。大戦に対して「軍部とマルキストの陰謀である」との奇怪な論で責任回避を行ったことや、無配慮な天皇退位論、議会制民主主義の新憲法の制定を目指しながら裁判を拒否して自殺した、などがその代表。この著書において彼の自決は、天皇への累を及ぼさない為、と描かれているが、思惑はどうあれ、彼の自決は結果としてそれこそ多くの累を及ぼすことになったのである。粟屋憲太郎が近著で指摘しているように、広田弘毅の死刑判決の遠因にもなったわけだし。

  • これまで掴みかねていた近衛公の輪郭が見えた。

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著者プロフィール

工藤美代子(くどう・みよこ)
昭和25(1950)年東京生まれ。ノンフィクション作家。旧チェコスロヴァキア・カレル大学を経て、同48年からカナダに移住し、バンクーバーのコロンビア・カレッジ卒業。『工藤写真館の昭和』で第13回講談社ノンフィクション賞受賞。そのほか『国母の気品 貞明皇后の生涯』『香淳皇后と激動の昭和』『美智子皇后の真実』『美智子さま その勁き声』など著書多数。

「2021年 『女性皇族の結婚とは何か』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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