ユーロ破綻そしてドイツだけが残った

著者 :
  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (275ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532261788

作品紹介・あらすじ

平和と経済統合の理想から出発したユーロは、当初からの構造矛盾を克服できず、南欧諸国の経済危機を拡大させている。この経済・金融危機は全世界を震撼させる大恐慌へと発展する勢いだ。独仏伊など欧州各国の利害対立や、国際機関の行動、深まる危機の様相を明快に解説。

感想・レビュー・書評

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  • 前回のユーロ危機(ギリシャ危機)の直後に買ったままで放置していたが、またぞろ「ギリシャ危機」が再発したので、慌てて読み出したが、専門用語がバンバン出てくるし、新書にしては内容もかなり専門的。それなりの専門知識がないと、途中放棄したくなるので、それを覚悟で読んで下さい。例えば、ESM、ECB、BVG、CDU、EFSF、SPM、GIIPS、LTRO、SMP等々皆さんどれだけ答えられますか?
    歯応えは十分過ぎて、刃毀れする程の感じで、読み応えのある本だと思いますが、新書ならもう少し易しく書いて欲しかったと思います。

    内容は要するに、ユーロについては、
    ①「最適通貨圏の条件」を満たしていない地域に「共通通貨」が導入されたこと。
    ②「政治」もしくは「財政」の統合を実現しないままで「通貨」と「金融」の統合を実現したこと。

    それは第2次大戦後の欧州の夢が、現実を追い越して走り出した事に起因しているのかも知れない。
    彼らは政治的な意思を集結させ、一歩一歩改革を実現していった。こうして成功がさらなる成功を呼ぶプロセスが生まれた。そしてそのことをジョージ・ソロスが「欧州の統合拡大と、現在起こっているその崩壊とはともに一種のバブルだった」と指摘しているのには驚いた。まさに金融バブルの発生と全く同じプロセスだった。

    現実には欧州中央銀行のドラギ総裁の奮闘で、辛うじて危機は逃れたが、当時の著者は、「ユーロ持続」と「ユーロ崩壊」のどちらの可能性が高いかと言えば、「崩壊」のシナリオがより現実的と言う。(2012年の時点。現在は撤回???)

    問題国に対しては、不況の最中にドイツ主導の極度の緊縮財政を強行し、増々不況が深刻化し、財政状態もさほど改善することもなく、国民の不満が一点に集中する。何に集中するかと言えば、それは「ドイツ帝国」だと結ぶ。

  • 2012年出版。問いかけの後にすぐに回答を明示してくれない書き口も合わさって、EUの前提知識ゼロで読むにはやや難解。

    金融と通貨について少しずつ理解が進んできたつもりであったが、
    改めてユーロについて問われると、何もわかっていなかったのだと気付かされる。
    そもそも、国ごとの経済力の差を為替や金利で埋めていたとすれば、
    経済状況が異なる国々が単一通貨で共通の金融政策をとるときに、どのような調整が必要となるのか。

    例えばある国で財政危機となり通貨の信用が失われれば、そこからの資本流出は加速する。
    特にユーロ圏内であれば、共通通貨特有の流動性により、安全性の差がわずかであっても高い箇所に一極集中することとなる。
    ギリシャが危ういとなれば、次に危ういスペイン・イタリアをすっ飛ばしてドイツに集まるということだ。
    そんな事態の回避のため、EU加盟国で参加国家の財政危機が訪れた時、常に他の国が手を差し伸べなければならないようでは、
    ドイツの一人損になってしまうが、何もしないでは、資本と一緒に膨大な移民が押し寄せる事態となる。
    では、財政危機となった当事国の取りうる手段はなんだろうか。

    本書では、不況のさなかに増税を行ったフーバーと、減税を行ったケネディの両者とも間違いではなかったとする。
    ケネディの政策は、減税による需要と供給の活性化により雇用改善を行い、その結果としての市場活性化による税収増加で財政再建を狙うということであり、
    フーバーの政策は、金本位制の中でドルの信用を維持するため、まず増税による財政の健全化を行うことで資本逃避を防ぎ、その結果としての安定した市場にて雇用改善を狙う。

    これと現在のユーロの状況を見比べると、ギリシャもスペインも不況時に緊縮的な財政政策を採用したが、
    これは国家として市場の信頼を回復するためであり、財政均衡を目指さなければさらなる資本逃避に見舞われるためであるとわかる。

    ここまでが本書の半分程度であり、結局のところ、そもそもユーロはどのような設計であったのか、
    2021年現在、観光業が大きな収入源であったギリシャがコロナ禍でも何故破綻しないでいられるのか、
    本書のみから推察することは不可能だ。
    事例と理論の両輪を学ぶことで学習効率が上がるとすれば、
    本書での勉強も遠回りでなかったはずだと信じ、ユーロ設立当初の理論から学び直すこととしたい。

  • 元々、欧州内で経済格差があったのにもかかわらず、地域統合と共通通貨導入を決め、財政政策は各国バラバラなのに金融政策は単一というアンバランスな仕組みを作ってしまったのが、ユーロ危機を招いた原因であるという。

    本来、EUは善意と信頼に基づく地域統合と経済統合を目指していたわけ。共通通貨導入(ユーロ)によってモノ・カネ・人が自由に行き来し、経済を活性化させると考えられた。
    でも、経済力の違う国同士が統合すると、経済力が弱い国の経常収支や財政に悪影響を与える。例えば、本来ならば貿易によって生じる赤字や黒字は為替レートの調整がきき、各々の通貨価値は均される。が、共通通貨を導入し単一の金融政策を採用していると、為替レートの調整が効かず、ユーロ内の国々の経常収支の悪化や格差が生じる。となると、EUとしての経済政策の統一行動がとりにくく利害対立が深刻化してしまう。
    著者は、EUについては非常に悲観的な見方をしている。ユーロ分裂か。ドイツなどの経済に力がある国だけ集まってユーロから離脱するか。
    このままだと確かに楽観的な未来は描きにくいんだよね・・。

  • 【書誌情報+内容紹介】
    『ユーロ破綻 そしてドイツだけが残った』
    日経プレミアシリーズ
    著者:竹森俊平
    定価:本体890円+税
    発売日:2012年10月11日
    ISBN:978-4-532-26178-8
    版型:並製/新書判
    頁数:280

     平和と経済統合の理想から出発したユーロは、当初から抱えていた経済矛盾を今回の危機で拡大する結果になり、欧州統合の夢は破れた。対立する各国の利害と混乱する政治的思惑、リーダー国ドイツの苦悩などを解説。
    https://www.nikkeibook.com/item-detail/26178

    【簡易目次】
    題辞 [003]
    プロローグ 004
    目次 [032-040]

    第1章 大恐慌の神話 041
    第2章 危機は今回もアメリカから欧州へ 089
    第3章 危機は周辺から始まる 107
    第4章 インフレに群がるマネー 129
    第5章 ギリシャ債務不履行の政治経済学 145
    第6章 苦悩するリーダー国ドイツ 165
    第7章 危機拡大の構造 193
    第8章 ユーロ分裂のシナリオ 233
    参考文献 274-275


    著者・監修者プロフィール
    竹森 俊平(たけもり しゅんぺい)
    慶應義塾大学経済学部教授。1956年東京生まれ。81年慶應義塾大学経済学部卒業。86年同大学院経済学研究科修了。同年同大学経済学部助手。86年7月米国ロチェスタ一大学に留学、89年同大学経済学博士号取得。
    <主な著書>『経済論戦は甦る』『資本主義は嫌いですか』『ユーロ破綻 そしてドイツだけが残った』など。

  • 2013.01.05 池田信夫氏のブログで見つける。

  • 経済学の専門家によるユーロ危機に関する本。ユーロの現状について詳しく述べ、将来を予想している。ドイツのように経済的に強い国とギリシアのように弱い国とが同じ通貨を使うことの不具合がよくわかった。このままでは、ドイツが一人勝ちになり、富の分配が進まなければユーロは成り立たないことを理解した。
    「経済のダイナミズムが失われていない中国では、日本と違い、金融緩和はインフレと住宅価格の上昇につながる」p21
    「経済的国際競争力の格差は為替レートの変化、つまり国際競争力に劣る国の為替レート減価によって調整することができる。ところが各国が同一の通貨を使用するなら、そのような調整は不可能となり、最も優れた国が市場を席巻する事態は避け難くなる。現実に、ユーロ圏の現状を見るとドイツの独り勝ちに終わる見通しがますます強くなっている」p102
    「本来ならユーロに加盟する17カ国について異なった政策金利が適用されるべきなのだが、共通通貨を使用しているために、17カ国に対して単一の政策金利しか選択することができない。そのため国別に見ると過剰な低金利や、過剰な高金利が選ばれてしまうのである」p141
    「同一通貨を持つ地域間では、インフレ率の高い国に資本が流入する」p182
    「財政が持続不可能な状態にある主権国家は、さらなる緊縮財政政策を実施するか、さもなければデフォルトもしくは債務リスケジューリングをするかの選択に追い込まれる」p242

  • レビュー省略

  • 脱力感有り。

  • 興味深く読了。
    昨日の『住んでみたドイツ』に続いて、ドイツ続きで今度は「共通通貨ユーロの危機とドイツ」というテーマ。
    ユーロ危機の背景とそのメカニズム、そして今後の展望について筆者の見解も交え、新書サイズにしてはなかなかゴリっとした分析や解説も抑え、力作と思う。
    その分、それほどサラッとは読めないが、難解でもなく、私としては大変に興味深く読んだし、参考になった(気がする)。
    それにしても、事実上「脱退」が出来ないユーロをヨーロッパは支え続けることが出来るのか?注視しない訳にはいきません。

  • 国際金融入門としても良書。

    ユーロ危機とは何だったのか、まだその危機が去っていないどころか、ユーロ圏の限界までがロジカルに述べられている。

    必読。

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著者プロフィール

慶應義塾大学経済学部教授
1956年東京生まれ。81年慶応義塾大学経済学部卒業。86年同大学院経済学研究科修了。同年同大学経済学部助手。86年7月米国ロチェスター大学に留学、89年同大学経済学博士号取得。2019年より、経済財政諮問会議民間議員

「2020年 『WEAK LINK』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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