エネルギー産業2030への戦略 Utility3.0を実装する
- 日本経済新聞出版 (2021年11月20日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
- / ISBN・EAN: 9784532324384
作品紹介・あらすじ
エネルギーが変われば、日本のどこが、どう変わるのか? 今後10年の日本の勝ち筋、負け筋が見えてくる。誰もが知っておきたい「エネルギー」の最新動向『エネルギー産業の2050年 ユーティリティ3.0へのゲームチェンジ』に待望の続編!
霞ヶ関から関連業界まで各方面に反響を呼び、エネルギーフォーラム賞なども受賞した前作から4年。その続編となる本作では
これからの10年に焦点をあて、2020年代に分散型エネルギー社会を実現する上での具体的な方策を提示する。コロナ禍による社会変化や、デフォルト化した2050年温室効果ガス実質ゼロ目標についての試算を提示し、日本の新たなエネルギーのあり方の政策提言も含むほか、太陽光発電、水素エネルギーの最新動向、国内外の具体的なエネルギー関連ビジネス事例や重要キーワードを盛り込んだ。すべての人に関わりがある脱炭素社会とエネルギーのあり方について、具体的に「なに」が、「どう変わるのか」、「なにができるのか」、「どこに真のビジネスチャンスがあるのか」、などをイメージしやすくなる一冊。
感想・レビュー・書評
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私にとっては内容が難しかったので、すこし時間をあけて2度目を読もうと思います!
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地球温暖化の進展を何とか食い止めるためにも、エネルギー消費のカーボンニュートラル化は重要である。
この本では、エネルギー政策や技術の動向を踏まえながら、直近の2030年に向けて最優先の取組みが何であるかを整理するとともに、さらにその先も見据えた政策やビジネスモデルの提案が書かれており、参考になった。
カーボンニュートラルの取組みにおいてまず大切なのは、エネルギー需要を可能な限り電化することである。エネルギーの利用には、熱源、動力、通信など様々なものがあるが、これらについて電力で賄うことができるものは可能な限り電化していくことが重要である。例えば、動力についても自動車のEV化は、化石燃料からの転換を図るために大きな前提条件となる。
その上で、再生可能エネルギーによる電気の共有を推し進め、地域内でのエネルギー需給のバランスや国内で発電された電気をできるだけ電気のまま使うというエネルギー供給システムを作っていくことで、エネルギー消費の脱炭素化を進めていく。
このようなエネルギー転換のためには、発電および送配電の大幅な改革が必要である。この点について、本書では日本の電力自由化は発電・卸売と小売りの両方を自由化する「送電線解放モデル」であったが、この方式は発電事業者の購買力を低下させる結果となり、結果として安定供給を支える供給力を構築することに繋がらなかったと指摘している。
また、2050年のカーボンニュートラルに向けて、電力需要の増加ペースに不確実性があること、電源ミックスを実現するための技術の多くがまだ開発途上であること、そして再生エネルギーは火力発電などと比べて固定費比率が高いという性質があることの3点により、民間企業による電源投資は依然として難しい判断であると指摘している。
以上のような状況から、筆者は日本の電力システムとして、小売部門をサービスの差別化を競う競争部門とする一方で、発電・卸売部門はすべての小売事業者のための共通インフラと位置づけるような制度改革が必要であると提言している。
この制度において、小売部門は価格競争ではなく、エネルギー利用における顧客体験(UX)や価格変動に対するリスクヘッジといったサービスを競う制度として構想されている。そして、発電・卸売部門は、必要な発電容量と送配電ネットワークを整備・維持するためのコストから算出された単価をベースにした電源入札制度を構築する。
日本のエネルギー供給に関する状況に則した制度設計を考えていくことが重要であるということが、よく分かる提言であると感じた。
本書では、エネルギーの供給側だけではなく、需要側も含めた一体的な取組みも提言されている。中でも、都市ガス会社のエネルギー供給範囲を単位とする「都市ガス経済圏」でエネルギーのバランシングを考えていくという提言は、興味深かった。
エネルギーの利用の源となる経済活動の大半は、地域社会として一体性のある圏域をベースとして行なわれる。そして、この圏域は山が境界となって形成される地域が単位になっていることが多い。都市ガスも、山を越えて供給管を敷設することは困難であることから、同様の地域を供給単位としていることが多いという。
このような経済活動の一体性がある地域において、エネルギーの地産地消の取組みを進めていくことは、それぞれの地域特性に合わせた取組みを進めるのに適していると言える。例えば地方郊外圏では再生エネルギーの発電ポテンシャルが経済活動の規模とバランスしており、それらの地域では再生エネルギーの活用を進めることで地域のカーボンニュートラル化が達成できる可能性がある。
一方で、大都市圏や重工業が集積している地域においては、電力需要と再生エネルギーのポテンシャルの間には大きなギャップがある。このような地域においては、産業セクターの脱炭素化に地域社会の住民も協力をしていくような取組みが必要となる。産業セクターの地域に対する雇用や税収面での貢献を、脱炭素の取組みへの投資に繋げていく取組みである。
電力供給に関する制度設計から、新たな取り組みを進めていくための地域社会の仕組みまで、幅広い領域に対して提言がされており、示唆に富む本であると感じた。 -
筆者の伝えたいことが分かりづらかった。
CNに向けた戦略が書かれているが、日本をどうしたいのかというビジョンが不明確だったので途中で迷子になった。 -
東京電力の人が書いている。
社会課題としてエネルギー問題を位置づけ、「地域内での需給バランス」「電気の利用促進(電化)」「水素利用」を説く。
電気料金はUX化される。
電化のための制度課題として、「省エネ法の問題点:1979年制定で対象が化石燃料にフォーカスされているため、需要家が系統から買うとまるっと火力平均係数が課されるので化石燃料を使い続ける→電化が進まない。」「高度化法の問題点:小売電気事業者に2030年46%減の数値での再エネ化の高すぎるハードルのため、パーセントを守るために他エネルギー(化石)を売るインセンティブになる。」を挙げている。
kWh市場における供給ステークホルダ不足での価格スパイク発生も問題。 -
カーボンニュートラルが推進されるに連れて国内電力需要も増加していくが、現状国内においては政策の不透明さから新規投資どころか経年電源の廃止が進んでいる。需要に対応するためには、国内エネルギー源の多様化による供給リスクの分散や人口集積を前提としない地方へのインフラ創生等を実施する必要がある。
エネルギー産業界には、国内国外との価格競争/高まる需要と両立し難い課題が生まれている。補助金や地方自治体によるインフラ誘致など政府による援助を推し進め、国内インフラ企業/エネルギー企業が海外との競争力を保てるよう取り組んで欲しい。 -
社会全体がカーボンニュートラルというキーワードに注目し、企業は何をすべきを模索している。しかし、実際に日本がどう変わっていくか、変わるべきかは欧米の判断や世界情勢が目まぐるしく変わる中では、不透明だ。
欧州の原子力容認。LNGを経てからアンモニアや水素に移行するモデル、ウクライナ問題による影響はどうなるか。この本は、もはや古い。古いが、基礎的な勉強にはなる。グレー水素、ブルー水素、グリーン水素。こうした基本から学べる。
太陽光、洋上風力、原子力。EV車を蓄電に活用するインフラ整備。キーワードだけ並べた所で学びにはならないが、しかし、このキーワードに繋がる理屈や周辺知識の裾野が、読後に少しは広がっている。その意味では有益な読書であった。 -
東2法経図・6F開架:540.9A/Ta67e//K
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どうしてこうなった日本_2050
輝かしき日本_2050
1 エネルギーと日本の社会課題
気候変動問題―ゼロカーボン時代のエネルギー需給構造
人口減少―人口集積なしの持続可能な社会インフラ
国土強靭化―分散型インフラ技術によるレジリエンス向上
2 エネルギー産業のパラダイムシフト
エネルギー産業は、どのように自己変革するのか
定額化し消滅していく電気料金
価値が反転する電力量
広域化と分散化の同時進行
3 UXコーディネーターの実践
求められるアプローチーEnergy with X
UXコーディネーターの実践
どうやって新産業を生み出すか
4 世界の脱炭素化を牽引する日本企業
日本企業の勝ち筋はどこにあるのか
電化領域における覇者たち
電源の脱炭素化領域における日本企業の機会
次なる覇者を育むための条件
5 パラダイムシフトを実現する政策とは
6 ゼロカーボン社会へのマスト条件
7 地域社会とエネルギー産業
地域社会におけるエネルギーー資源の偏在から遍在へ
エネルギーインフラから見た「地域社会」
ゼロカーボンシティ実現の手引き