ユニヴァーサル野球協会 (白水Uブックス)

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  • Amazon.co.jp ・本 (370ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560071892

感想・レビュー・書評

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  • 主人公がプレイする自作の野球ゲームはかなり緻密で、一種、偏執的ですらある。職業が会計士というのもその偏執さのイメージに合っているように思う。
    しかし、この野球ゲームに没頭するあまり、主人公はどんどん転落することになる。その様子は滑稽さもあるが、切なさも付きまとう。
    つい『ネトゲ廃人』なんて単語を思い出してしまうが、原書の刊行は1968年。人間の依存心は今も昔も変わらないようで……。

  • 初老の会計士が、仕事に支障を来すほど、自分で作った野球ゲームに熱中しています。単なる野球ゲームではありますが、ユニヴァーサル野球協会と名付けられたリーグには全8チーム、監督、コーチから登録選手まで各チーム数十人の名前がきっちり決まっています。個々の選手には名前は言うに及ばず、生年月日やその他の身体的特徴まで細かくディテールが設定されていて、主人公はそんな野球リーグ全体のオーナーという立場で毎晩机上でゲームを行なっては、データの記録に余念がありません。ゲーム中、しばしば主人公は架空のリーグの中に迷い込み、生身の選手とのやりとりも交わされます。もちろんそれは主人公の妄想に過ぎないのですが、その会話や行動が実にリアル、主人公は半ばどころか、ほとんど妄想世界の住人になってしまっていると行ってもよいくらいです。それにしても、そんな妄想の世界に入り浸っている初老の男。心配してくれる同僚の忠告も聞き入れず、ますます妄想の野球リーグにのめり込んで行ってしまいます。この孤独、なんだかとても共感できます。

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著者プロフィール

1932年生まれ。トマス・ピンチョン、ジョン・バース、ドナルド・バーセルミらと並び称される、アメリカのポストモダン文学を代表する小説家。邦訳に、『ようこそ、映画館へ』(越川芳明訳、作品社)、『ノワール』(上岡伸雄訳、作品社)、『ユニヴァーサル野球協会』(越川芳明訳、白水Uブックス)、『老ピノッキオ、ヴェネツィアに帰る』(斎藤兆史・上岡伸雄訳、作品社)、『ジェラルドのパーティ』(越川芳明訳、講談社)、『女中(メイド)の臀(おいど)』(佐藤良明訳、思潮社)、「グランドホテル夜の旅」、「グランドホテル・ペニーアーケード」(柴田元幸編訳『紙の空から』所収、晶文社)、「ベビーシッター」(柳下毅一郎訳、若島正編『狼の一族』所収、早川書房)などがある。



「2017年 『ゴーストタウン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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