スペインの家:三つの物語 (白水Uブックス)

  • 白水社
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (124ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560072448

作品紹介・あらすじ

幼い頃から馴染んだ土地への“失われない”愛と惜別の思いが滲む短篇と、本邦初訳のノーベル文学賞受賞記念講演「彼とその従者」を収録!

感想・レビュー・書評

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  • エスペランサの部屋: J・M・クッツェーの新作 The Pole について
    https://esperanzasroom.blogspot.com/2022/09/jm-pole.html?m=1

    U244 スペインの家 - 白水社
    https://www.hakusuisha.co.jp/smp/book/b614296.html

  • 表紙はクッツェーの文字(J.M.Coetzee)でできたクッツェーの顔。カッコいい。
    三つの短編が入っている。
    開いたら、余白の多いこと!これで1500円、白水社uブックスだから安さは期待してないけど、これで1500円は高いんじゃないか、さすがに、と思った。
    しかし読み終わったら、1500円は妥当な値段であると納得した。
    小説は、はじめの2つはそんなにすごいとは思わなかったのだが、最後の「彼とその従者」はとても良かった。この作品はノーベル文学賞講演だそうで、これ、耳で聴いても面白いとは思うが、やっぱり読んで、読み返して反芻してこそ味わえる作品なので、本になって良かったと思う。
    できればもとの本のように布張りハードカバーで箔押ししてある小振りな本として手にいれたかった気もするが、そうしたら倍以上の値段になるだろうし、それが売れるかというと、現実的ではないかなと思う。
    そしてお値段納得の最大の理由は、訳者くぼたさんの解説が素晴らしいということ。
    三つともすごく難しい話ではないのだが、くぼたさんの解説でより深い部分が理解できた。そんなにすごいとは思わなかったはじめの2つに対しても、改めて読み直す気持ちになった。これは、自力では不可能だった。素晴らしい外国文学は、素晴らしい翻訳者いてこそ。本当にありがたい。

    今年出る新作も楽しみ。
    いい本だった。

  • スペイン語で書かれているらしい、15年もアメリカで暮らしたのに? 昔に有った麦畑、アパルトヘイトで住んでいた場所も確かに追いやられ人たちもいる。 それは致し方無い、彼の文章はすべてのどうしようも無い事を 嘲笑う様に軽やか。彼は南アフリカで生まれたのだ。

  • 短編だけど、著者の背景がわからないと、哲学的で難しい。スペインの家は、古い別荘に対する思いが伝わってきた。
    ニートフェルローレンは南アの歴史を思い起こさせた。
    草も生えない丸いスペースは、先祖代々穀物の収穫に使われていた。
    悲しい歴史。

  • クッツェーの短編集。3つの短編を収録。文章が端正で無駄がなくて心地良い。相変わらず上手いなあと思う。
    スペインの家、家を恋人に見立ててカタルーニャ地方への移住を語る。訳者のくぼたさんによれば、クッツェー自身のオーストラリア移住と重ね合わされているよう。
    ニートフェルローレン、古き良き南アフリカの農村が失われてしまったという思いが強く出ている作品。もちろん直接的ではないのだけれど、その思いは隠しきれない。南アフリカは世界で最も治安の悪い国になってしまっていて、作者の悲しみも頷ける。
    彼とその従者、ノーベル賞受賞記念公演。3つの中では最も詩的でわかりにくい。デフォーもしくはロビンソン・クルーソーに重ねて自分自身の体験を投影している。無人島を経て国に帰ることによる違和感、イギリスに移住したときの差別体験がベースになっている様子。二艘の船で船出したところで終わるので前向きな小説なのかもしれない

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著者プロフィール

1940年、ケープタウン生まれ。ケープタウン大学で文学と数学の学位を取得して渡英、65年に奨学金を得てテキサス大学オースティン校へ、ベケットの文体研究で博士号取得。68年からニューヨーク州立大学で教壇に立つが、永住ビザがおりず、71年に南アフリカに帰国。以後ケープタウン大学を拠点に米国の大学でも教えながら執筆。初の小説『ダスクランズ』を皮切りに、南アフリカや、ヨーロッパと植民地の歴史を遡及し、意表をつく、寓意性に富む作品を発表して南アのCNA賞、仏のフェミナ賞ほか、世界の文学賞を多数受賞。83年『マイケル・K』、99年『恥辱』で英国のブッカー賞を史上初のダブル受賞。03年にノーベル文学賞受賞。02年から南オーストラリアのアデレード郊外に住み、14年から「南の文学」を提唱し、南部アフリカ、オーストラリア、ラテンアメリカ諸国をつなぐ新たな文学活動を展開する。
著書『サマータイム、青年時代、少年時代——辺境からの三つの〈自伝〉』、『スペインの家——三つの物語』、『少年時代の写真』、『鉄の時代』、『モラルの話』、『夷狄を待ちながら』、『イエスの幼子時代』、『イエスの学校時代』など。

「2023年 『ポーランドの人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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