哲学者とオオカミ: 愛・死・幸福についてのレッスン

  • 白水社
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  • Amazon.co.jp ・本 (276ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560080566

感想・レビュー・書評

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  • オオカミを語ることで、じつは人間の根源にある卑屈な前提を浮き彫りにしてくれる。人間をふくめたサルのその醜悪な事実はいろいろな現実に見事に符合する。朝日新聞の書評並びに、『NHK週間ブックレビュー』を見て購入した。たんなるオオカミを育てた記録ではない。哲学的に非常におもしろい。

  • ブレニンとの生活のエピソードは読者にとって、この上なく魅力的だ。なにしろ、オオカミを飼った経験のある人なんて、そうそういない。
    だが、本書はただの動物とのふれあい物語ではない。本書のもうひとつの魅力は、オオカミにみた野生と哲学の対話だ。
    このオオカミの飼い主はたまたま哲学者だったから。
    愛とは?死とは?人間の幸福とは?オオカミを通して導きだされたこれらについての深い思索には感動しさえした。

    愛、死、幸福、これらは全て、人間そのものの本質に深くかかわっている。
    人間の本質とは何か?それは「邪悪さ」であると著者はいう。
    我々サルは、社会生活を送るなかで相手の意図や状況を読み、それを利用し欺き、たくらみ、相手の弱みにつけ込むことで自らの利益を得ようとしてきた。その「邪悪さ」がために知恵を絞り、知性を発達させてきたのだという。そして、この「邪悪さ」ゆえに道徳心を生み出したのだと。
    『知性誕生』では人間と動物を隔てるものは理性だとされた。そして理性は合理化される。ここではそれは「道徳心」という言葉に置き換えられるが、同じものを指していると思う。
    かように科学と哲学は遠いようで実は近しい。

    http://spenth.blog111.fc2.com/blog-entry-96.html

  • 哲学の入門書としても読みやすい本でした。狼のブレニンとの関係がとても素敵。ブレニンを講義につれていくことを許す大学も素敵。生と死、幸福、感情について考えさせられました。

  • 読む価値あり。人間とオオカミの価値観、感覚の違い。皆が当たり前にもっている価値観への問いかけ。あとオオカミのブレニン可愛い。

  • 人間と動物についての見方の新たな発見ができる本。ペットを飼っている方には特に興味深い内容だと思います。

  • オオカミについて。
    かなり順番待ちしたけど読みきれなかった。残念。

  • サルである人類とオオカミの生き方の違い。生と死を考える。

  • 2010/11/18

  • なんといってもこのオオカミのブレニンが魅力的。そして「サル的人間」や「邪悪」に対する考察もおもしろい。ブレニンは癌になって安楽死するのだけど、その人工的な死に対する考察もお願いしたかったな。最近、使い古されて偽善的な「正義」という言葉に疲れてきたわたしは、ブレニンの本能的で作為のない行動にホッとさせられました。甘ったるい副題にだまされずに、一読おすすめです。

  • (2010.07.18読了)(2010.07.07借入)
    物書きが主体的に動物を飼うと時には多くの人を感動させる作品を生み出すことがある。たとえば、「ノラや」「ハラスのいた日々」等です。他にもあるかもしれないがまだ読んでいません。
    訳者あとがきに「本書は、大学で哲学を教える気鋭の学者が一匹の仔オオカミと出会い、共に暮らし、その死を看取るまでをつづったユニークな読み物である。」と紹介しています。さらに「本書は人間についての本でもある。文明社会に入り込んだオオカミの姿を通して見えてくる、人間の真実について、哲学的に論じた本とも呼ぶことが出来ようか。」ともいっています。
    オオカミの子供を買い取った著者は、そのアラスカ産のオオカミにブレニンという名を与えます。ブレニンを部屋にひとりにして置いておくと、部屋の家具やカーテンや敷物をめちゃくちゃにしてしまうので、「ブレニンを決して一人にしないと誓った著者は、ブレニンを大学の講義にも、ラグビーの試合、パーティー、旅行にも連れて行く、そして著者の職場替えにより、舞台はアメリカからアイルランド、イギリス、そしてフランスへと変わってゆく。その時々のさまざまなエピソードを紹介ながら、ブレニンが癌による死を迎えるまでを描くのが本書の一方の柱だとすれば、もう一方の柱は、ブレニンとの共同生活から見えてくる、人間という存在の根本的な問題―人生とは何か、愛、死、幸福、文明とは何か、と言ったことについての考察である。」(272頁)

    ●ブレニンとの第一のルール(31頁)
    どんな状況下でもブレニンを決して一人で家に残してはならない、ということだ。このルールを破ると、家にも家財道具にも恐ろしい結果をもたらした。
    ●動物の訓練(32頁)
    オオカミを訓練することはできない、という人がいる。これは全く間違った見方だ。実際にはあらゆる動物はかなりよく訓練できる。ただし、正しい方法を知っていればの話で、これこそが難しい点だ。
    ●犬とオオカミのどちらが頭がいいか(37頁)
    犬とオオカミの知能は異なる。なぜなら、知能は異なった環境によってつくられ、異なった必要性や要求に対応しているからだ。オオカミは問題解決の課題で犬より優れ、犬は訓練的な課題でオオカミより優れている。
    ●ブレニンが起こしてくれた(52頁)
    毎朝、目覚めて最初に目に入るのはブレニンの姿だった。ブレニンが私を起こしたからだ。夜が明けると、ざらざらした舌が私の顔をなめ、肉の匂いがする息が吹きかかり、大きな姿が薄明りに浮かび上がる。
    (うちの猫も、朝なかなか起きないと、耳元にやってきて、みゃあみゃあ鳴いて起こす。)
    ●男の感情(172頁)
    ブレニンに去勢手術を受けさせてはいなかった。可哀そうでどうしてもできなかった。これは、男性特有の感情である。その一方で、雌犬に避妊手術を受けさせるのは平気だ。
    ●死の直前は元気に(199頁)
    犬も人間もしばしば、死ぬ直前の数時間に回復したように見えることがある。ほんの二、三時間だけ元気になるように見えるのだが、これは死のうとしていることの兆候でしかない。
    ●人生の意味は(253頁)
    人生の意味が目的にあると考えるなら、私たちはその目的が決して達成されないようにと願わなければならない。人生の意味が目的にあるなら、意味を持ち続けるために必要な人生の条件は、目的達成に失敗することにある。

    ☆関連書籍(既読)
    「ノラや」内田百閒著、中公文庫、1980.03.10
    「ハラスのいた日々」中野孝次著、文春文庫、1990.04.10
    (2010年7月20日・記)

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著者プロフィール

1962年ウェールズ生まれ。哲学者。著書に「哲学者とオオカミ」など。

「2013年 『哲学者が走る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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