- Amazon.co.jp ・本 (180ページ)
- / ISBN・EAN: 9784560092637
感想・レビュー・書評
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表題作と「鼠警察」はまずまず楽しめた。けれど、上の空というか深みにはまれていないというか、全体的に力が弱いように感じた。最後の「クトゥルフ神話」の同世代作家に対する挑発的な物言いにも「でもあなたにひとさまを挑発するだけの何かがあるんでしょうか」という気持ちになってしまい、どうも面白くなかった。残念。
ただわたしはボラーニョの良い読者ではなくて、現時点で『売女の人殺し』しか読んでいない。ボラーニョに対する感受性が高い人には興味深い最後の短編集なのかもしれないし、この作家に対して何か判断めいたことをするのは『野生の探偵たち』を読んでからにしたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「売女の人殺し」がおもしろかった勢いもあって、目次もみずに読み始めたが、ボルヘスにカフカもまた読み直さなきゃイカんと反省。なんちて、ボルヘスは読んだことないんだけど。「野生の探偵たち」もやっぱ再読せにゃならんなあw
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登場人物たちは、特に主人公たちは、いつも動いている。鉄道、乗馬、捜査、浮浪、エレベーター……。言い換えれば、主人公たちは、いつも何かを捨てていく。都会、家、社会的地位、訪問客、金銭、命……
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ボラーニョ初体験なのだがこれは面白い。ラテンアメリカの持つ歴史や文学、業といったものを引き受けながら、それを哄笑にひれ伏させるほどの力強さを持つ強烈なイマジネーション。短編作はラテンの地を想起させる陰影の強い世界でありながら、決してそれだけに留まらせない寓話性も合わせ持る。講演録である二作は死を前にしながらも皮肉を忘れず、言葉は前に進もうと情熱が静かに叫んでいる。カフカを引用した本書のエピグラフは、作者の死を越え読者を導いてくれるだろう。「結局のところ、きっとぼくたちはそれほど多くを失ってはいない。」
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ラテンアメリカの社会情勢が作品に反映されてて、シニカルな印象だけど、登場人物に愛着を感じる。
「文学+病気=病気」「クトゥルフ神話」を読むと、ユーモアのある作家だとわかった。 -
解説で青山南氏に「稀代のイメージの散かし屋」って言われてる、そんなボラーニョ。
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「ボードレールの旅人は明らかに、肉体が悲しいともすべての書物を読んでしまったとも思っていないが、彼は明らかに、エントロピーのトロフィーと宝石である肉体が悲しいことを、悲しみを越えていることを知っている。そして一冊の書物を一度読むことで、あらゆる書物を読むことになると知っている」
ボラーニョがなぜ“かっちょいい”のかわかる一冊。 -
先の『売女の人殺し』がボラーニョ自身と思われる登場人物が出てくる作品が多いのに対し、こちらはそういう感じは薄めです。特に最後の二篇は講演の原稿なので、『売女』とはかなり趣を異にする作品に感じられます。どう異にするかと問われれば、本作のボラーニョは饒舌だと言うことです。こんなにしゃべる人だったっけ(?)という印象を受けます。そして「鼠警察」も風刺が効いていますがちょっぴりユーモラスな感じもあり、こういう作品も書けるんだ、と驚かされました。