チリ夜想曲 (ボラーニョ・コレクション)

  • 白水社
4.21
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (170ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560092699

作品紹介・あらすじ

饒舌に隠された沈黙の謎
 死の床で神父の脳裏に去来する青春の日々、文学の師との出会い、動乱の祖国チリ、軍政下の記憶……作家の死の3年前に刊行された、後期を代表する中篇小説。
 語り手はチリ人の神父セバスティアン・ウルティア=ラクロワ。カトリックの一派オプス・デイに属し、詩人で文芸評論家でもある神父は、信仰心に篤く、心穏やかな日々を送っていた。ある日、突然「老いた若者」がやってきて、サンティアゴの家のドアをノックするまでは……
 「老いた若者」はウルティア=ラクロワにしか見えない存在らしく、かつての神父の「沈黙」を盛んに責め立て、罵倒する。ウルティア=ラクロワは自らの言葉にも、沈黙にも責任があると応じ、残された力を振り絞って必死の弁明を試みる。
 熱に浮かされた神父の、ときに幻覚も入り交じる独白を通じて、祖国チリが辿った苦難の歴史が浮かび上がる。実在した文芸評論家に想を得た人物フェアウェル、ノーベル賞詩人パブロ・ネルーダらが登場、クーデターを率いた独裁者ピノチェト将軍と対面する戦慄の場面もあり、二度と戻ることのなかった祖国チリに寄せる作家のアンビバレントな思いが読者の胸に突き刺さる。

感想・レビュー・書評

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  • 死の淵にある神父がこれまでの人生を回想をする物語。
    詩を思わせる言葉の連なり、記憶の断片が次々と現れては絡みあう。最後は、チリの動乱を描きながら文学論にも及ぶ。
    初めて読むボラーニョ作品。
    消化できたのかは分からないが、チリの歴史や政治の細切れの知識をつなぎ合わせただけでも、何とも壮大で饒舌な作品と思う。

  • チリの小説家、ボラーニョは最高傑作と言われてる「2666」が分厚すぎて買うとき毎回ためらうので未読なんですが、ボラーニョ・コレクション(いったい誰が揃えているのか友達になりたい)のトリを飾るのが本作です。チリの著名人物と文学作品の洪水の中、ボラーニョ自身が思いをはせる祖国への思いが主人公に投影されています。チリ史を知っていれば10倍くらい面白くなるずですが、10分の1でもここまで見せてくれます。読者の知識レベル度外視で細かいディテールを容赦なく付いてくるこの感じは嫌いじゃないです。今年最大の問題昨映画「アンダー・ザ・シルバーレイク」に通じるものがここにはあります。

  • 初めてのボラーニョ。虫眼鏡で覗き込むように些細な物事は不意に拡大され、かと思えば通り過ぎるものは通り過ぎたまま進んでいく。
    曲がりくねりながら進んでいくストーリーの、道端に出てくるふとした描写に、きらりと感じ入るものが多々あった。
    不思議な立体感のある作品。
    チリの歴史を勉強してもう一度読みたい。

  • 4.27/63
    『 祖国チリに捧ぐ、詩人‐神父のモノローグ

    死の床で神父の脳裏に去来する青春の日々、文学の師との出会い、動乱の祖国チリ、軍政下の記憶……後期を代表する戦慄の中篇小説。解説=小野正嗣

    死の床で神父の脳裏に去来する青春の日々、文学の師との出会い、動乱の祖国チリ、軍政下の記憶……作家の死の三年前に刊行された、後期を代表する中篇小説。
    語り手はチリ人の神父セバスティアン・ウルティア=ラクロワ。カトリックの一派オプス・デイに属し、詩人で文芸評論家でもある神父は、信仰心に篤く、心穏やかな日々を送っていた。ある日、突然「老いた若者」がやってきて、サンティアゴの家のドアをノックするまでは…… 
    「老いた若者」はウルティア=ラクロワにしか見えない存在らしく、かつての神父の「沈黙」を盛んに責め立て、罵倒する。ウルティア=ラクロワは自らの言葉にも、沈黙にも責任があると応じ、残された力を振り絞って必死の弁明を試みる。
    熱に浮かされた神父の、ときに幻覚も入り交じる独白を通じて、祖国チリが辿った苦難の歴史が浮かび上がる。実在した文芸評論家に想を得た人物フェアウェル、ノーベル賞詩人パブロ・ネルーダらが登場、クーデターを率いた独裁者ピノチェト将軍と対面する戦慄の場面もあり、二度と戻ることのなかった祖国チリに寄せる作家のアンビバレントな思いが読者の胸に突き刺さる。』(「白水社」サイトより▽)
    https://www.hakusuisha.co.jp/book/b308976.html


    原書名:『Nocturno de Chile』(英語版:『By Night in Chile』)
    著者:ロベルト・ボラーニョ (Roberto Bolaño)
    訳者:野谷 文昭
    出版社 ‏: ‎白水社
    単行本 ‏: ‎170ページ

  • 社会、政治の動きに対する沈黙、そしてそれに対する告発。
    振り返って我が祖国日本はどうなのだろう。
    文学に限らず、映画、音楽、アニメetcはどうなのだろう。不器用でも語り下手でも少しずつ語り出している作品もあれば、まるで沈黙しているかのような作品もある。
    1973年と違うのはネットの存在により一般の人々も情報や意見、思想を発信できる点だろうか。

  • 小説全体が改行の一切ないモノローグ。最初は読みにくいと思うものの、さすがボラーニョ、読み進むうち語り口の上手さにぐいぐい引きこまれる。テーマは重い。今回で完結したコレクション中でも一二を争う傑作。

  • 書籍についてこういった公開の場に書くと、身近なところからクレームが入るので、読後記は控えさせていただきます。

    http://www.rockfield.net/wordpress/?p=10324

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著者プロフィール

1953年、チリのサンティアゴに生まれる。1968年、一家でメキシコに移住。1973年、チリに一時帰国し、ピノチェトによる軍事クーデターに遭遇したとされる。翌74年、メキシコへ戻る。その後、エルサルバドル、フランス、スペインなどを放浪。77年以降、およそ四半世紀にわたってスペインに居を定める。1984年に小説家としてデビュー。1997年に刊行された第一短篇集『通話』でサンティアゴ市文学賞を受賞。1996年、『アメリカ大陸のナチ文学』を刊行。1997年に刊行された第一短篇集『通話』でサンティアゴ市文学賞を受賞。その後、長篇『野生の探偵たち』、短篇集『売女の人殺し』(いずれも白水社刊)など、精力的に作品を発表するが、2003年、50歳の若さで死去。2004年、遺作『2666』が刊行され、バルセロナ市賞、サランボー賞などを受賞。ボラーニョ文学の集大成として高い評価を受け、10 以上の言語に翻訳された。本書は2000年に刊行された後期の中篇小説である。

「2017年 『チリ夜想曲』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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