ケータイ小説的。――“再ヤンキー化”時代の少女たち

著者 :
  • 原書房
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感想 : 42
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784562041633

感想・レビュー・書評

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  • 日本での中高生向け書籍には、
    漫画とラノベだけではなく、ケータイ小説がある!

    文系やオタクだけじゃなくてギャルやヤンキーも楽しめる文字文化があるってことは、日本は豊かなんだよね。

  • "ケータイ小説"と"ヤンキー文化"。一見して時代的にも文化的にもまったくつながりを持たないように見えるふたつの事柄に、実は意外な共通点が。それは浜崎あゆみと地方文化!?そんな非常に興味深い現代批評本。

    筆者にとっては上記に上げているものはどれも縁遠い存在だったが、まず驚いたのが浜崎あゆみと安室奈美恵というavexを代表するふたりの歌姫の違いについて。90年代に活躍した安室に対し、00年代に活躍した浜崎。熱心に聴いていない自分のようなリスナーにとっては、それはただのバトンタッチ劇のような安直な印象を持っていたが、ギャル文化を作り上げた安室に対し、その登場によって滅びたと思われていたヤンキー文化の人たちに支持されることになった浜崎。それはただの偶然ではなく、浜崎の持つ過去のエピソードや歌詞の作法、そしてファッションに至るまで、必然的なものだった。浜崎のコンサート会場の駐車場には今日も改造車が並んでいるという。

    時を同じくしてポケベル、PHSから携帯電話の登場でイメージキャラクターを務めた浜崎。青春時代に周りは短いスカートのギャル文化の中、ひとり床まで届きそうな長いスカートを通していたというエピソードからもわかる通り、彼女の背景にあるヤンキー文化には、純情や事件性を持つ自分語りを特徴とするポエムがつきものだ。かつての暴走族特攻服の背中にある刺繍や、雑誌『ティーンズロード』などの投稿コーナー、また浜崎あゆみの歌詞にもそれは顕著に見られる。そして地方のヤンキーたちは彼女がイメージキャラクターを務めた携帯電話のサイトに次々とそのポエムを投稿してゆくことになる。それがケータイ小説のはじまりだった。

    ケータイ小説はかつてはリアル系とも呼ばれ、冒頭に「この物語は実話に基づき~」という注意書きがされているか否かで、売り上げが10倍から100倍も違ってくるそうだ。ただし、そこに描かれているレイプや妊娠、恋人との死別といったリアルは、決して読者のリアルとは関係なく、ただ「ありそう」ということ。なぜそんな過激な内容を読者が求めたのかが、本書では説明されていなかったが、おそらく都会に比べ退屈だと思っている地方の読者に受けたのだろう。その証拠にケータイ小説は普通の小説と比べ、東京や大阪などの都会よりも、少し離れた地方の方が圧倒的に売れていたそうだ。

    2008年に出版された本なので、ケータイ小説ブームも過ぎ去った現在、彼女たちが次に何を心の拠り所にしているのかはわからない。それはケータイゲームかもしれないし、はたまた我々が知り得ない新たな文化なのかもしれない。ただひとつ言えるのは、どんなに元々西洋人のふりをしても拭い去れない恥部のような日本人の本来の特質を、とても素直に代筆したものがケータイ小説でありヤンキー文化なのだろう。だから我々は「低俗だ」と言って馬鹿にする方法でしか、向き合わないようにする術を持たない。しかし日本がグラグラしている今だからこそ、Facebookで偉人の美談をシェアしたり、Twitterで誰かのバカ話をリツイートして、その場限りの現実逃避をするのではなく、彼女たちから学ばなければ、いや、かつての自分と目をそむけずに向き合わなければいけない時が来たのかもしれない。自問自答を続ける浜崎あゆみの歌詞のように。迷子の彼女はどうしたって時代の申し子なのである。

  • ケータイ小説の物語は「社会」が障壁にならないってのは納得。ケータイ小説並みにサクサク読める。

  • ケータイ小説からみる現代の少女について考察されているが、個人的にはあまりハマらなかった。

  • DQNについての整理がもう少し欲しいところ。

  • 前半は携帯小説の解説。お説ごもっともなのですが、恋空のような展開の小説は、昔からあったので、納得はできず。
    後半は共感できる内容。「郊外化する若者」「東京に憧れない若者」宮台さんの時代からさんざん言われている内容で目新しい内容は見当たらず。
    ただ、大きな時代の変化なので心に留めておきたいと思った。

  • 第1章で持ち出した浜崎あゆみとケータイ小説との連関はもう少し裏付けが欲しかった。『恋空』では、美嘉の恋人ヒロへの無意識の殺人欲が、自分を愛してくれた男の物語に書き換わっているという指摘(p186)は鋭いと思う。

  • 2011.10.9

  • 言っている事は筋が通っているけど、深みはない。あーそーだねって感じ。

  • 2011/02/24 購入
    2011/03/16 読了

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著者プロフィール

速水健朗 Kenro Hayamizu1973年生まれ。食や政治から都市にジャニーズなど手広く論じる物書き。たまにラジオやテレビにも出演。「団地団」「福島第一原発観光化計画」などでも活動中。著書に『フード左翼とフード右翼 食で分断される日本人』(朝日新書)、『1995年』(ちくま新書)、『都市と消費とディズニーの夢』(角川Oneテーマ21)、『ラーメンと愛国』(講談社現代新書)などがある。

「2014年 『すべてのニュースは賞味期限切れである』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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