戦争の変遷

  • 原書房
3.83
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (420ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784562047307

作品紹介・あらすじ

クラウゼヴィッツ以来、もっともラディカルな『戦争論』。これからの戦争の在り方と本質を看破し現代の戦略思想に大きな影響を与えた名著、ついに邦訳。

感想・レビュー・書評

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  • 新しい武器が採用されればか習う、戦争はどのように戦うべきか、いやそれどころか戦争とはどういうものかについて伝統的な考え方を無効にする恐れがある。これで「卑劣な」武器にっ分類される武器がたいてい科学技術が急速に進歩した次期に出現した理由がわかる。適切な例として古代ギリシャの射出器(投石武器、紀元前400年ごろにシチリアで発明された)があるし、もちろん小火器もそうだ。もっと現代に近づいたところでは、1850年頃から1914年にかけての時期がそうである。職業軍人で構成する軍隊の季語が小さく、従来型の戦争との関わり合いが小さかったアメリカは別として、軍事技術の発展は衝撃と驚きを持って受け止められた。1820年代、クラウゼビッツは戦争を左右する主要な要因の中に軍事技術を入れてなかったし、軍事技術が大きく発展するという予想もしていなかった。産業革命が広がり、戦争に影響を及ぼすようになるのに伴い、新しい装置が次々に登場した。後装式銃のあとからライフル銃、さらに連発銃、無煙火薬を使って一分間に弾丸600発を連続発射する機関銃と続いた。鉄道や電信は元来、戦争のために開発されたものではなかったが、戦争への有用性はすぐに認識された。電信、蒸気船、潜水艦、気球、ダイナマイト、鉄条網などは中でも重要な発明だった。

  • 戦争は国家の「利益」を求めた行為ではない、それ自体が人類の営みなのだ--。これからの戦争の在り方と本質を看破し、現代の戦略思想に大きな影響を与えた名著。

  • 今夜の3時。身の危険はないけど、読んでて興奮した。

    戦争は、人間活動の中で最も混乱し混乱させられる活動。冷静な判断なんてできない。
    戦争は、ルールがあってルールがないもの。だって、反故にされるもの。
    戦争は、所有権を争うもので、外交以外の手段。これは昔の話。
    戦争は、国家対国家で行われるもの。だが、近年はゲリラやテロリスト対国家という構図ができている。
    戦争は、死ぬことが目的の一つである。相手を殺すということは、報復をふくめ自ら死ぬことを覚悟した時にできるもの。
    戦争の目的は、利益ではなく、宗教的政治的な背景があり、守るもののために戦うことが多い。そりゃそうかも。目先の利益が目的だと、熱も冷めるよなー。また、個人の考えではなく国から与えられた目的のために戦争をすることも然り。
    戦争を行うにあたり、国が充分な兵力を持たず国を守れないと知ると、国の土台が崩れる。

    戦闘における障害は、不確実性、摩擦、硬直化。

    核兵器は、割安って文章が衝撃。

  • クラウゼヴィッツが戦争論を書いた頃に比べ、戦争はずいぶん様変わりしている。その変遷も興味深いが、現在の戦争やこれから起こりうる戦争の形態についての考察も面白い。
    戦争はしないさせない巻き込まれないってのが一番いい。

  • クラウゼビッツを読んだ人が次に読む本ですね。お薦め

  • クラウゼヴィッツの唱える「戦略」は、将来戦の主形態と思われる低強度紛争には合致しない、との説。

    クレフェルトは感情的で、書いてあることを素直に信じがたい。

    弱い部隊と闘い続けている強い部隊は、弱者と闘うことそれじたいが兵士たちと卑しめているという事実を、いかに厚遇しようとも埋め合わせることはできない、というのが印象的。

  • 2013年のヤバイ本ナンバーワンはこれで決まり(まだ6ヶ月以上残ってるけど)。要約すると
    1)人類の歴史は戦争の歴史。
    2)社会システムも経済的活動も戦争をするためにある。
    3)今普通に考えられている戦争の枠組みは17世紀以降に確立されたもので歴史的な使命を終えつつある。
    4)しかし、17世紀以降に確立されたいわゆる「近代的」戦争が役割を終えたからといって戦争がなくなるわけはない。したがって、ここ最近大きな戦争がないから世界が平和になった、もっと平和になるなんて考えるのは馬鹿者のすることだ。
    5)なぜなら人類は戦争をするためにこの世に生まれたのだから。
    6)戦争をやめると戦争よりもっと悪い病気にかかるよ。だって繰り返すけど人類は戦争をするために生まれてきたんだから!! 大事なことだから二度言いました。

    というような主張が当代一の専門家によって、資料を引きながら語られるという本でした。冷戦終了直後にこんな本を書いたクレフェルトは偉い。

  • 二十年も前に新しい時代の在り方を、クラウゼヴィッツ批判の形で予見した名著。
    核兵器が登場し、強国間の通常戦争は生起しなくなった。世界の紛争は低強度紛争と呼べるものである。にもかかわらず各国は時代にそぐわない通常戦力を保持している。
    クラウゼヴィッツが述べた国家、国民、軍隊による三位一体戦争は、ウェストファリア条約以降を念頭にいれている。しかし、それ以前と第二次大戦以降では三位一体戦争は当てはまらず、三位一体戦争は”戦争”ではなくあらゆる戦争形態の一つに過ぎない。
    戦争という特殊な状況下でも人は昔から制限を設けてきた。現在も国際法等がある。戦争は無制限な力の行使ではない。
    戦争が政治の延長であるという主張もウェストファリア条約以降核が出現するまでの世界にあてはまる。宗教や生存が戦争の目的であったことは多々あるし、戦争とはそれ自体が目的となりうる。
    新しい時代の戦争は国家対国家ではなくなり、現在の通常戦力は恐竜のように使えなくなり滅びゆく運命にある。国境は無意味となり、中世までそうであったように戦士は略奪等の個人的利益を満たし戦争の軍事的有用性と経済性が結びつくかもしれない。
    内容を簡単にまとめると上記のようにかなりラディカルなんだけど、歴史ってゆうか時の流れを客観的に見て将来もかなり正確に予見してるように感じた。

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著者プロフィール

ロンドン大学経済政治学大学院で博士号を取得後、1971年からイスラエルのヘブライ大学歴史学部教授。防衛省防衛研究所及びアメリカ海軍大学を含む欧米の多くの大学や研究機関で講義や講演を行っている。軍事史及び戦略研究に関する22冊の著書及び多数の論文がある。邦訳書に『補給戦』、『戦争の変遷』、『戦争文化論』がある。

「2014年 『エア・パワーの時代』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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