- Amazon.co.jp ・本 (443ページ)
- / ISBN・EAN: 9784562051823
作品紹介・あらすじ
戦場の死とひきかえの莫大なマネーうごめく「シャドウ・ワールド」のすべて!
ワシントン・ポスト紙も絶賛、「調査し尽くした完璧な一冊!」
感想・レビュー・書評
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「武器ビジネス」書評 秘密主義の闇、かき分ける執念|好書好日
https://book.asahi.com/article/11599546
武器ビジネス 下 - 原書房
http://www.harashobo.co.jp/smp/book/b369068.html詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
開発目標16:平和と公正をすべての人に
摂南大学図書館OPACへ⇒
https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB99781573 -
週刊文春2015.8.27号 野村進 評
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下巻は、アメリカと、アフリカの諸国における武器ビジネスを中心に書かれている。
アメリカについては、ニュースなどで知っている出来事も多く、上巻よりは読みやすかったのだけど、それでもやっぱり大変に時間がかかってしまった。
本来なら反則なのだろうけど、この本を端的にまとめた「訳者あとがき」から抜粋して内容紹介に代える。
“本書は「死の商人」の元祖ともいうべき伝説の武器商人バジル・ザハロフの生涯を皮切りに、ふたつの方向から交互に、武器ビジネスの腐敗した世界をあきらかにしていく。
ひとつは世界各国に武器を売り込む大兵器製造企業と、その契約獲得をめぐる巨額の贈賄工作の数々である。(中略)
そして、もうひとつは、武器の合法取引と非合法取引が重なりあう不明瞭な領域で暗躍する武器ディーラーの世界である。”
定価があってないような武器ビジネスの世界では、契約を重ねるたびに価格は2倍3倍と跳ね上がり(原価がそんなに跳ね上がるわけがない)、性能は現状維持や、しばし低下していたりするらしい。
黙っていても高利益が約束されているのだから、品質には意味がない
だから、誤射、誤爆、暴発、墜落なんてことが多発する。
10年回に100回近くの戦闘機の墜落があったドイツで、民間機は何回墜落したのだろう?
全部が全部そうではないにしろ、戦闘機の性能が民間機以下だなんて、考えてもみなかった。
“自分の金を使うのなら、そんなふうにはぜったいにしないだろうが、使っているのは他人の金だし、我々は武器を使う人間にはならないだろうから―だからわれわれは他人の命を危険にさらしているんだ。”
武器商人や国家の上層部の人たちは安全な場所で巨額の富を得て、命を危険にさらされている人たちが、さらに武器の代金を税金で支払うのだ。
それは日本でも同じこと。
この巻ではロッキード事件についても少しだけ言及している。
日本では重大事件扱いだったが、世界的にはささやかな事件だったことがわかる。そして、決して例外的な事件ではなかったことも。
“日本は金と政治の関係を無視できない国だった。金こそ政治だったからである。日本の汚職は、バジル・ザハロフが発見して利用したように、つねに武器会社との取引と密接に結びついていた。しかし、取引の性格と、仲介者の影響力は、日本人がいう「黒幕」の陰に隠されていた。”
びっくりしたのが次の一文。
“1990年代までアメリカは海外での贈収賄を禁じた唯一の国だった。”
そして今ではアメリカも禁じてはいないということですね。
そりゃあ経済のグローバル化も進むわけだ。
世界最大の武器輸出国アメリカは、結局オバマ大統領の時でさえ、軍事費が縮小されることはなかったのだ。
こんなに儲かる武器ビジネスは、一度やったらやめられないらしい。
“たとえ勇敢な検察官が兵器会社あるいは武器ディーラーを捜査して、起訴に持ちこもうとしても、問題はかならず、ほとんどか完全に情報開示されないまま和解になり、腐敗行為が認められることもめったにない。そして、捜査官、内部告発者、あるいは検察官は、出世の望みが大幅に減ったことを、いや応なく知るのである。”
出世の望みだけならまだしも、不審死を遂げた人々が何人もいるのだ。
怖いのは、武器を持っているのは向こうで、こちらは丸腰ということだ。
そして向こうは物質的な武器だけではなく、国家や大企業などの権力や金を味方に、ほぼやりたいことができるということ。
そして、武器が欲しいと思う人たちは、後を絶たないということ。
読めば読むほど胸が悪くなり、絶望感だけが押し寄せてくる。
人類は、どこに向かっているのだろうか。 -
BAEによるサウジアラビア王家ほかへの凄まじい贈賄工作、ロッキードによるあきれるばかりの欠陥軍用機開発と強引な売り込み。そこで動く金は何百億、それも単位はドルだから天文学的な額で実感できない。生産者と消費者とをつなぐ武器商人たちの暗躍ぶりたるや目に余るものがあるが、そこでの不正には企業のみならず政治家も軍人もロビイストも関わっていて、取締る側なんぞあまりに微力である。日本での原発問題にせよ、例え現在は民間事業であろうとも国策として端を発し、国庫が大きく関わり続けている悪行を正すのはは困難だ。
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ラムズフェルドの計画は軍産勢力が国家のパワーバランスとその支出優先順位をどれほど傷つける問おであるかがわかるだけでなく、アメリカの現場戦略をいかにゆがめるかのケーススタディえあると示唆した。ラムズフェルドの変革の構想は、実際にはハイテク兵器のうつろな音と猛威で仕掛けられる、古い考え方の勝ち目のない泥臭い戦争をる繰り出した。