- Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
- / ISBN・EAN: 9784566024496
作品紹介・あらすじ
十歳にも満たない戦災孤児アーサーは、汽船に乗せられ、たったひとりでオーストラリアに送られた。そこで、待ち受けていたのは…。過酷な現実を生きる中にも、ちりばめられる愛や幸せ。巨匠モーパーゴが描く、父娘二代にわたる感動の物語。
感想・レビュー・書評
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唐突に年齢も明らかではない少年が登場し、まとめて船に乗せられ遠い国に送られるところから話が始まります。幼さや辛い出来事によって記憶が曖昧なまま、祖国から流出させられたアーサーにとっては、自身の記憶の端緒は「登場」としか捉えられないのでしょう。
これが児童移民で国同士の政策として行われていたなんて知らなかった。壮絶な体験と暖かな日々、親子二代に渡る大河小説のようでした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
この本は、第1部と第2部に分かれて主人公が違います。
第1部は綺麗な表紙に反して、重くて過酷な物語が続いて、何度か読むのをやめようかと思ってしまいました。
でも嫌な気持ちにモヤモヤしながらも目が離せないまま、明るさを取り戻した先で第2部が始まって、そこからはスピード感もあり最後気持ちよく読み終えることが出来ました。
あとこれは是非、訳者あとがきも読んでほしいです。物語の時代背景や、アーサーがどういう境遇に立たされていたのかも解説してくれているので、そこまで読んでやっとどういう物語だったのが胸に落ちました。
こんな事実があったことに、とてもびっくりしました。 -
今年の高校生向け課題図書
イギリスからオーストラリアへ児童の移民政策があったんだね
知らないことばかりで訳者の後書きがとても参考になった
過酷な状況で生き抜いたアーサー
死後、奇跡が
大海をヨットキティ一号で一人航海する娘の様子がすごい
《 広い海 アホウドリだけ 見守って 》 -
知らなかった児童移民政策。
どの時代でも、弱いものが虐げられる。
久々のモーパーゴさんの作品に、ドキドキしながら読了。ハッピーエンドが現実の当事者の方々にも訪れていてほしい。
人との出会いってすごく、大事。 -
161017読了。
どこかで紹介されているのをみて図書館で借りました。
戦争孤児の男の子がオーストラリアに移民させられ、さまざまな境遇の中で生きていく話と、彼の亡きあと、娘が彼の生き別れの姉を探すために航海をする話。
イギリス・オーストラリア両政府によって行われた“児童移民”が実在のものとは思わず、少し驚きました。
彼の人生が語られる中で何人かの死別がありますが、なんというか、あまり悲観的でない、この物語には底無しの絶望はありませんでした。
ドイツ児童文学だったら、読者もたっぷり不幸を味わうのに、なんて思ったりして(笑)
その悲観的でない感じが、私には薄味に思えてしまったのかも。 -
オーストラリア関連じゃなかったら読んでいなかったかも
前半は、戦争関連もあって、とにかくしんどい
物語のスピードも後半の流れが早くてあれ?って感じだし
しかし、読んでみて良かったと思えます
フィクション?分からなくなるほどのリアル感
もし本当にアリーがいたら、リアルタイムで応援したかったかも -
青少年読書感想文コンクール高等学校の部の課題図書。
『児童移民』
聞きなれない言葉です。
第二次世界大戦後、戦災孤児が増えて経済的な負担が増大してしまったイギリスと、アジア系移民を排除するために白人の移民を増やす必要があったオーストラリアの間で、実際に行われていた政策です。
第一部は6~7歳の頃、姉のキティから引き離されてオーストラリアに送られたアーサー・ホブハウスが主人公。
45歳を超えてようやく家族を持つまでの間、彼は運命の波に翻弄されるように、職を転々とします。
10~20歳くらいまでのほんのひと時幸せだったこともありますが、彼の人生は苦難と苦痛の連続です。
何よりもつらいのは、自分が何者であるのかの確信を持てないこと。
年を経るごとに、姉は本当にいたのだろうか。自分の想像の産物なのではないかと自分を疑います。
そして、姉が「幸運の鍵」と言って渡してくれた鍵も、本当は何ものでもないただの鍵なのではないかと。
でも、自分に過去があるとしたら、それが唯一の手がかりになるのです。
いつか、イギリスへわたって姉のキティを探すこと。
それがアーサーの生きる支えでした。
第二部はアーサーの娘アリーが、たった一人で亡き父(アーサー)手づくりのヨットを操って、イギリスまで伯母のキティを探しに行く話。
第二部については、児童文学ということで子どもの共感を得やすい人物を持ってきたのでしょう。
個人的にはアーサーの物語に絞ってもらいたかったところですが。
アリーはたった一人でオーストラリアからイギリスへ後悔しますが、メールのやり取りやGPSなどで常に世界とつながっています。
ここら辺に子どもたちはリアリティを感じるのかもしれませんね。
“最近の世の中は、大半がベトナム戦争を知らない世代になってしまった。そこから学ぶことができずにいるうちに、戦争は歴史的事実になって、すぐに忘れ去られてしまう。だからこそ次々に戦争が起きてきたのだし、今でも常に戦争が起きている。だが、実際に戦場で戦った人間は、決して戦争を忘れない。”
“戦場の日々のことは記憶に残っている。あざやかすぎるほどに生々しく残っている。しかし、思い返したくはない。文字につづりたくもない。それでも、あのベトナム戦争が起きなかったふりをしてやり過ごすことなどできやしない。戦争の最中にあそこにいなかったかのようになど、戦争に加わっていなかったふりなどできない。ほこりに思っているからではなく、その逆だ。”
第二次世界大戦のある意味被害者だったアーサーは、魚の命を奪うのが嫌で漁船を降りることにしたアーサーは、それでも海が好きで水兵になり、ベトナム戦争へ行くことになります。
戦争で、人間の命を奪うことに加担してしまったのです。
歴史小説としても、反戦小説としても、成長の物語としても、冒険の物語としても読むことができます。
高校生向きにしては読みやすすぎる気がしますが、あとがきも含めて、読む価値のある本だと思います。 -
心が折れたとき、それを立て直すきっかけや、時間は人それぞれ。
中には折れたまま、立ち直れない人もいる。
誰かが必要なんだ。
自分だけではどうしようもなくなった時、誰かがいてくれることがきっかけになる。
でも、その誰かが、またいなくなったら。
今度はどうやってその折れた心を立て直せばいいんだろう。
新しい出会いが、またあるのかしら。
それまで、耐えることはできるのかしら。
大切な人に囲まれて、最期を迎えることができるかしら。