バンドゥーラ: ”ジャングルの誇り”とよばれたゾウ (児童図書館・絵本の部屋)

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  • Amazon.co.jp ・本 (83ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784566080812

作品紹介・あらすじ

ミャンマーでは昔から、ゾウと人とが協力して林業を営んできました。貿易会社の社員としてミャンマーに赴いたイギリス人のウィリアムズは、そこでゾウ使いやゾウと一緒に仕事をすることになり、やがて、とびきり頭がよくて勇敢なゾウ、バンドゥーラに出会います。ウィリアムズとバンドゥーラは、かたい信頼の絆で結ばれ、その後、戦火をのがれてジャングルを超える困難な旅を共に成し遂げることになります。作者のグリルは、最年少(25歳)でケイト・グリーナウェイ賞を受賞した画家。実際にミャンマーに取材して執筆にのぞんだ、力のこもった絵本です。今も不安な政情が続くミャンマーの人たちや動物たちへの思いがこもった作品です。

感想・レビュー・書評

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  • ○大きなサイズのノンフィクション絵本
    ○ミャンマーのゾウとゾウ使い、ゾウたちの働き方、日本軍とゾウ部隊、イギリスとミャンマー
    ○アジアゾウの現在、また今の世界情勢と日本軍に侵攻された当時のミャンマーについて、深く考えさせられた
    ○絵の美しさ
    ○ウィリアムズの著作を読みたい。邦訳が出ないかな~(チラッ)


    ◎まえがき
     ミャンマーの歴史と背景
     物語はイギリス植民地時代

    ◎はじめに
     ミャンマー
     ・乾期、暑季、雨期
     ・1990~2010の間に森林の20%が焼失
     ・バイオーム
     ・90%の人が仏教徒
     ゾウ
     ・釈迦になぞらえられている
     ・経済とゾウ
     ・長鼻類(プロボシデア)
      マルミミゾウ、サバンナゾウ、アジアゾウ
      足の裏から骨伝導で音を聞く
      アジアゾウの背中は丸い
      アジアゾウの暮らしと歴史
     
    ・出会い
     イギリスの青年ウィリアムズ
     1920ミャンマーで仕事につく
     70頭のゾウを任される
     昼間はチーク伐採、夜はゾウの勉強
     1920~1940、六千頭のゾウがミャンマーで働いていた
     ←重労働だが、動物園のゾウよりも長生き

    ・ゾウ使い
     6歳から訓練…ペジェイ
      親から子、孫へと技術が受け継がれていく
     一日六時間労働、年間50万キロの木材を運ぶ
      夜明け、ジャングルにゾウを迎えにいく
      6時、作業キャンプ
      仕事終わりには水浴びをさせて洗う
      手作りのカローク(木製の鈴)
      35種類の命令

    ・ジャングルから港へ
     トラックが入れない奥地もゾウは通ることが出来る
     樹齢25年以上の木を伐採し、3年間乾燥させる
     ゾウが材木を運ぶ
     雨期にイカダを組み、川下へ運ぶ
     製材所で整え、各国へ輸出
     
    ・野生ゾウの訓練
     ケーダリング…ウィリアムズには残酷に思えた

    ・ゾウ使いポトケ
     トラに襲われたゾウの母子
     助かった子ゾウにミャンマーの英雄バンドゥーラと名付ける
     賢く育つ

    ・ゾウの学校
     野生ゾウを訓練するより、キャンプで生まれた子ゾウを育てながら訓練する方がいい
     暴力ではなく愛情でゾウを訓練する学校
     ウィリアムズが経営、ポトケが校長先生
     人とゾウの結びつきが強まる

    ・ゾウの病院
     正式な獣医ではないが、ウィリアムズが学び担当した
     …バンドゥーラを1年がかりで治療
     ゾウの信頼を得る

    ・バンドゥーラに命を救われる
     1927マラリアに罹患し意識を失ったウィリアムズをバンドゥーラと二人の使用人が何日もかけてジャングルを抜け、病院に連れて行く

    ・第二次世界大戦
     vs 日本軍
     イギリス軍第136ゲリラ部隊に、46頭のゾウとゾウ使いが入隊
     ゾウ部隊…橋の建設、道の開拓、物資の輸送
     日本軍側の地域のゾウを取りもどす
     …1600頭のゾウ
     1944年ゾウ部隊をインド・アッサム州に避難させる
     …ゾウ使いの家族、避難民の妊婦と老人を先に出発させる
     …残りの女性と子ども64人、ゾウ53頭、ゾウ使い90人、カレン人兵隊40人、イギリス人将校4人をウィリアムズが引率する
     ←190キロに渡る未開のジャングルと険しい山脈

    ・絶壁の階段
     立ちはだかる一面の絶壁
     …ゾウが歩ける道を岸壁に作ろう
      バンドゥーラを先頭に岸壁に這うような道を歩く

    ・到着
     出発してから3週間の道のり

    ・自由を夢見て
     ゾウの環境を良くするために努力してきたウィリアムズとポトケ
     今こそゾウを自由にしてやりたい
     「野生のゾウの群れは、使役ゾウが仲間入りしても、少しも敵意を示さない。こうした行動を見るたびに、ゾウの偉大さを思う」

    ・果てしない労働
     ゾウ部隊
     …インド軍とイギリス軍に終戦数か月前まで、工事や運搬の仕事を行う
     …戦後、ウィリアムズはゾウ部隊をミャンマーに連れ帰り、橋を作り、輸送を助けた
     …1944年チンドウィン川に352メートルのベイリー橋を数日でかける

    ・別れ
     エレファント・ビル…故郷イギリスの英雄
     バンドゥーラが行方不明になる
     …キバを切り取られた亡骸が見つかる

    ・バンドゥーラが遺したもの
     「わたしは、ほかの生き物の優位に立つ“ヒト”としてではなく、ほかの生き物たちといっしょに暮らすことが幸せだった。自然は、動物とか、植物という言葉で区別出来ない。植物も動物も、生命を知り、愛を感じ、安全と危険をかぎ分ける。大変残念なことに、人間はその能力を失ってしまった。わたしはミャンマーのジャングルで、このことに気付いた」

    ◎おわりに
     ウィリアムズとポトケの考えた訓練法は現在のゾウの飼育に大きな影響を与えている
     働くゾウのほとんどが大切に扱われ、労働時間は短くなっている
     ミャンマーはどのアジアの地域よりゾウの専門家が多い
     2018年、ゾウの保護に関する行動計画を定める
     ゾウの危機の原因は人間
     ←密猟だけでなく、生息地の破壊
     1990年代はじめ10万頭以上、2021年4万頭
     ←未曾有の絶滅危機

    ◎あとがき
     人間との共生とおだやかに自由に暮らすゾウの未来を考える

  • 知らなかったことがたくさん。
    世界が落ち着いたら
    いつの日かミャンマーのゾウさんに会いに行ってみたい。

  •  少々変わった絵本だ。イギリス人のウィリアムズが仕事でミャンマーへやって来た。ゾウと彼らを使って仕事をするゾウ使いにすっかり心を奪われてしまうのだ。ある日経験豊富なゾウ使いポトケから、バンドゥーラという名のゾウの話を聞く。立派なオスゾウに育ったバンドゥーラとウィリアムズは心を通わせ、一緒に仕事をこなしてゆく。ゾウのための学校や病院も作り、彼らのために環境を整えてゆく。
     そして第二次世界大戦が始まる。日本軍がミャンマーに進軍してゆく。ウィリアムズはゾウ部隊を安全なインドへ避難させるという困難な命令を受ける。

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著者プロフィール

イギリスの絵本作家。『シャクルトンの大漂流』で、2015年、史上最年少(25歳)でケイト・グリーナウェイ賞を受賞。つづく『カランポーのオオカミ王』で、2017年度ボローニャ・ラガッツィ賞最優秀賞を受賞。「エレファント・ビル」と呼ばれたイギリス人の本を読んで、ミャンマーのゾウとゾウ使いの世界に魅せられ、現地での取材を経て本作を執筆した。

「2022年 『バンドゥーラ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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