サン=テグジュペリの宇宙: 星の王子さまとともに消えた詩人 (PHP新書 27)

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  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569556765

作品紹介・あらすじ

世界の大ベストセラー『星の王子さま』をはじめとする魅力的な作品群を残し、四十四歳の若さでこの世を去ったサン=テグジュペリ。彼の実生活における成功と挫折、思想や人間観は、どのような形で作品に現れ、その深い孤独はいかにして『星の王子さま』へと昇華されていったか。本書では、もう一人の"星空詩人"宮沢賢治との類似性を挙げながら、サン=テグジュペリの生涯と物語世界の魅力を余すことなく語り尽くす。

感想・レビュー・書評

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  • 冒頭の絵を、数字の13を横倒しに…という解釈が新鮮でした。
    じっくり読んでみたい本です。

  • 宮沢賢治の研究家でもある著者によるサン=テグジュペリ私論。

    サン=テグジュペリが置かれた状況から、彼が作品を通して何を伝えたかったのか、どういった心境か著作したのか、その背景にある彼の理想・思想とは・・・といったことを著者なりの解釈で語った一冊。

    自身の解釈を遠慮なく披露しているので、読む人によって合う合わないはある一冊だと思う。
    著者の解釈自体はある一読者の感想として適度な距離をもって読むのがいいとして、サン=テグジュペリの私生活や当時の社会状況を知ることは、サン=テグジュペリの作品を読みとくにあたって大変参考になると思う。

    自分なりの読みをしていくための足がかりというかキッカケにはなる本。

  • 「星の王子さま」で有名な作家サン=テグジュペリの作品解説と、著者の解釈を書いた本です。
    これは私の個人的な感想ですが、私は著者の解釈にはあまり同意できませんでした。それから、本の構成もあまり好きにはなれず終始違和感を感じながら読み終えました。宮沢賢治との比較も面白いんですが、いかにも「おれは宮沢賢治の専門家なんじゃい!」といった感じの印象を受ける書き方ですこし鼻につきました。
    この著者の宮沢賢治の本も読むつもりでしたが、やめときます。

  • もう一度サンテグジュペリの本を読んでみようと思います。こうして考えると、彼が書いた本には何が隠されていたのだろうか、昔はわからなかったことがまた新しく見えてくるような気がします。

  • とりあえず引用。


    昔、全ての生命は一つの有機体から分かれ、育ってきました。宇宙を漂う一つの隕石。たまたま地球に落ちてきた一つの隕石。その石に含まれていた有機物が、全地球の生命の源なのです。
    その源に戻りたい。
    全ての生命と優しく一体化したい。


    人間の意義とは自然の中で自分に与えられた役割を日々少しずつ進化させることであり、
    一人の人間とは長い歴史の中でほんの一区間を背負って生きているにすぎないということ。
    現実的ではないかもしれないけれど。
    テグ=ジュペリの視点っていうのは常に星空の中にあって、
    世界を大きな流れとかで見ているという内容でした。
    それにしてもこのテグ=ジュペリの考えはいろいろとデリケートすぎるんですけどね。
    ひとつ間違えるだけで大きな極論にもなりかねないですし。

    おまけに、サン=テグジュペリの生きた時代は彼の母国フランスの戦乱の時代。
    自身の綺麗な思想から外れる現実を目の前にして、彼は、
    『汚濁の現実世界を脱出して、想念の世界の中で理想を組み立てつづけてゆく』か、
    それとも、『現実と真っ向から向き合い、体当たりして、生涯を締めくくる』か、
    人生の選択を迫られます。

    『星の王子さま』で王子さまは「ぼく」にヒツジの絵を書いてくれと求めます。
    しかし、「そんなよぼよぼでなくもっと元気なのがいい」などと、気に入らないといいます。
    そして最後に、「ヒツジの入った箱」の絵を見て、「こういうヒツジが欲しかったんだ!」と喜びます。
    ムッとしたぼくが書いた箱だけの絵です。ヒツジはいません。
    「心の中で作られたものが実際目に見える実在のものになる」、という思想。
    悲しく不安になるくらい、繊細なテグ=ジュペリの世界観が、
    彼の作品の引用から丁寧に説明されていました。

    繊細ということで。
    『人間の土地』からの引用です。


    砂漠の眠りから覚めたとき、
    ぼくは自分が、大きくて深く透明な水盆に覆いかぶさられているのを感じた。
    夜空が、一瞬、そのように思えた。
    ぼくの身体は、砂漠の頂に、あお向けに寝ているはずなのに、
    その空の水盆を覗き込んでいるのだった。
    ぼくは、鋭い目まいに襲われていた。
    この底知れない水盆の深さの中に、自分が墜落してしまうと思ったのだ。
    途中には、あわてて捕まる木の枝、木の根一つ張り出しているわけではなかった。
    遮るものは何もなかった。


    基本的にテグ=ジュペリの内容ってすごく寂しい。
    なんていうか、デリケートというか儚いというか。

    あと、最後に。紹介されていた綺麗なテグ=ジュペリの風景から。
    『南方郵便機』からの紹介だそうです。


    水のように澄んだ空が星を漬し
    星を現像していた
    しばらくすると夜が来た


    主語は空です。
    夕暮れ前の澄んだ綺麗な空と、漆黒の闇。
    テグ=ジュペリの世界はとても切なく寂しいです。
    彼は『死は、それが正しき秩序の中で進行するとき、きわめて優しいものだ』と残しました。
    苦しくなるほどの綺麗で繊細な理想がそこにはあると思います。

  • この著者の解説もまるで詩のよう

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