本の読み方 スロー・リーディングの実践 (PHP新書)

著者 :
  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569654300

作品紹介・あらすじ

本を速く読みたい!-それは忙しい現代人の切実な願いである。だが、速読は本当に効果があるのか?10冊の本を闇雲に読むよりも、1冊を丹念に読んだほうが、人生にとってはるかに有益である-著者は、情報が氾濫する時代だからこそ、スロー・リーディングを提唱する。夏目漱石『こころ』や三島由紀夫『金閣寺』から自作の『葬送』まで、古今の名作を題材に、本の活きた知識を体得する実践的な手法の数々を紹介。

感想・レビュー・書評

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  • ・量の読書より質の読書
    ・深く読む
    ・自分にとって本当に大切な本を、5、10年後に読み返すことで、自分の成長を実感する。

  • 本はどのような読み方をしても良い。
    ただせっかくなら、楽しく深みのある読書をしたい。その手助けとなるスローリーディングの良さや方法が詰め込まれた本でした。
    小説ってどうやって深く読むのだろう?と思っていたので大変興味深かったです。

    実際に本の一部を読み自分で考える実践的な章があり、それが新鮮で面白く、読書は終わった時にこそ意味を持ってくるという意味がよく分かりました。
    そして、自分が小説を読む時に、きちんと読んでいるようで実はまだまだ深く考えられていないことを実感しました。またスローリーディングは難しく、コツがいる。。深く読めるよう、これからも本を読んでいきたいです。

  • 桃山学院大学附属図書館蔵書検索OPACへ↓
    https://indus.andrew.ac.jp/opac/volume/641337

  • 小説が読みたくなる

  • 3.7点

    速読を否定しつつスローリーディングの魅力を語る

    序盤はその数だけこなす読書に意味がある?という耳が痛い話から始まり、速読は小説以外で読み飛ばしてざっくり理解はできるかも?、
    その後はスローリーディングの魅力が続いていく。

    スローリーディングが必要なことは誰しも分かってはいるが、文の表面上以上を読み取ることにスタミナが入り、且つ終わりが決めづらいことから広まらないのだろう。
    冊数をたくさん読むと読んだ感が出るし。

  • 本書の主旨は、「闇雲に活字を追うだけの貧しい読書から、味わい、考え、深く感じる豊かな読書へ」です。

    たんに読むことから離れ、ちょっとした工夫次第で読書は何倍にも楽しくなる。その基本がスロー・リーディングの実践である。決して速読を行うのではなく、読み直すこと、構造の全体を視野に入れて読むこと。それによって、速読コンプレックスから解放されて、スロー・リーディングができるようになる。

    気になった点は以下です。

    ・一冊の本を、価値あるものにするかどうかは、読み方次第である。
    ・スロー・リーディングは、得をする読書、損をしないための読書と言い換えてもいいかもしれない。
    ・何より、楽しい読書にするためには、書き手の仕掛けや工夫を見落とさないことである。
    ・「量」の読書から「質」の読書へ、網羅型の読書から、選択的な読書へと発想を転換してゆかねばならない。
    ・読者は、読み終わったときにこそ本当に始まる。自分なりに考え、感じた事をどう生活に生かしていくのかが、読書という体験がそこで意味をもってくる。
    ・私たちが、読書を含めて、日常生活に使用している一時記憶の容量は、かなり小さいことが知られている。

    ・小説は、速読可能か。それは、小説には様々なノイズがあるから、むずかしい。
    ・人は誰もがすぐに「おかしい」と気がつくようなことを、そんなにも長い時間、考え続けられないものだ。「おかしい」と感じるのは、読者として、自分の理解力が足りないからではあるまいか。そう疑ってみて、ではどこが理解できていないのだろうと改めて本を読み返す

    ・私たちには、限られた時間で、手っ取りばやく片付けらえたものは、内容的に粗雑なのではないかという疑いが常にある。

    ・速読の恐ろしさは、全体として、70%は理解したといても、その曖昧な30%の部分に決定的な間違いが入っている可能性がある。
    ・第一、理解曖昧な箇所が、正確にすぐにわかるとも限らない。読み返すとこには、結局文脈にそって、スロー・リーディングをするしかないのである。
    ・文章のうまい、へたの違いは、助詞、助動詞の使い方にかかっている。文章がうまくなりたいと思う人は、スロー・リーディングしながら、特に好きな作家の助詞や助動詞の使い方に注意することをお勧めする。

    ・知識を深めるためには、面倒くさがらずに、辞書を引く習慣を身につけよう
    ・作品の一語一句のレベルから作品全体に至るまで、「こう読んでもらいたい」という「作者の意図」が必ずある。
    ・大切なのは、わからない箇所があったら、立ち止まって、「どうして?」と考えてみることだ。
    ・ある作家のある一つの作品の背後には、さらに途方もなく広大な言葉の世界が広がっている。引用をだどって別の作家の作品を読み続けていき、また戻ってその作品を読み返すと、最初に読んだときよりも、はるかによく、その内容がわかるようになっている。
    ・一冊の本を隅から隅まで味わい尽くすためには、ひたすら、黙読すべし。
    ・スロー・リーディングをするときも、気になる箇所に線を引いたり、印をつけたりする習慣をつけておくと、内容の理解が一段と深まる。
    ・内容を頭の中で整理し、理解を定着させるためには、論理構造を視覚的にイメージするというのも、一つの手段である。
    ・読書には時期がある。本とジャストミートするためには、時を待たなければならないことがしばしばある。
    ・本は「再読」することに価値がある。読むたびに、新しい発見をし、新しい自分を発見する。そうした付き合いができれば、本は人生のかけがいのない一部となるだろう。

    目次は次の通り


    本はどう読めばいいのか?
     周囲に流されない、自分らしい読書を

    第1部 量から質への転換を スロー・リーディング 基礎編
     スロー・リーディングとは何か?
     「量」の読書から「質」の読書へ
     仕事・試験・面接にも役立つ
     速読家の知識は単なる脂肪である
     コミュニケーションとしての読書
     速読本は、「自己啓発本」だった
     なぜ小説は速読できないのか
     モンテスキューとぶどう酒
     「速い仕事」はどこか信用できない
     新聞もスロー・リーディング

    第2部 魅力的な「誤読」のすすめ スローリーティング テクニック編
     「理解率70%」の罠
     助詞、助動詞に注意する
     「辞書癖」をつける
     作者の意図は必ずある
     創造的な誤読
     「なぜ」という疑問を持つ
     前のページに戻って確認する
     より「先に」ではなく、より「奥に」
     「遅読」こそ「知読」
     声に出して読まない
     書き写しは効率が悪い
     人に説明することを前提に読む
     複数の本を比較する
     傍線と印の読書
     「我が身」に置き換えてみる
     再読にこそ価値がある

    第3部 古今のテクストを読む スロー・リーティング 実践編
     夏目漱石 「こころ」
     森鴎外 「高瀬舟」
     カフカ 「橋」
     三島由紀夫 「金閣寺」
     川端康成 「伊豆の踊子」
     金原ひとみ 「蛇にピアス」
     平野啓一郎 「葬送」
     フーコー 「性の歴史Ⅰ知への意志」

    おわりに

  • 【感想】
    本を数十倍のスピードで読む「速読術」の指南書がたくさん溢れかえっている。一語ずつ精読するのではなくブロック単位で読む、本全体の構造をざっと把握する、映像のように文章を焼き付け、一度読んだ部分は決して振り返らない……。
    私も速読術を試したことはあるが、正直上手くいかずに止めた。そもそも時間を惜しむように読書をしておらず、むしろ「読書のためにたっぷり時間を使いたい」タイプだ。

    本書の筆者である平野氏も、こうしたコスパ重視の読書を嫌う。「速読なんて意味が無い」「世に出回っている速読本のほとんどが、自己啓発書のような見せかけだけの本だ」と断じ、代わりに5年後、10年後まで残るような「スロー・リーディング」の実践を説いている。

    速読vs遅読というテーマの根本には、「質と量のどちらが重要か?」といった問いがある。
    この問いは簡単に白黒つけられるものではない。例えばスポーツの練習であれば、目標を明確にして効果的な方法を実践することで、効率よく上達することができる。しかし、バットを握ったこともない初心者は「効率的」という段階にすら立てないため、「基礎練をとにかくこなせ」という練習を取り入れるのもおかしくない。読書も同じで、スピードに徹するあまり適当に読み飛ばしてしまうのは論外だが、少なくとも「色んな本を速いペースでたくさん読みなさい」というのは、方法としては正しいだろう。
    要はバランスなのだが、本書はどちらに重きを置いているか。これは本文中で明確に「読書を楽しむための方法論」とうたっている。つまり、知識をインプットする目的ではなく、書き手の心理に立ち、内容を精査しながら表現を味わい尽くす目的である。

    結局のところ、読書という作業をどう人生に結びつけるかによって、本の読み方は変わってくる。
    当たり前だが、読んだ内容が頭に残らなければ意味が無い。また、頭に残った情報を自分の血肉にしなければ意味がない。速読もスロー・リーディングも、どちらもこのスタンスに立っている。使い方が違うだけだ。速読では「文章の大部分は無駄書きなのだから、エッセンスだけを抽出して読むべし」とし、スロー・リーディングでは、「テクストの裏にある筆者の意図を解き明かすぐらい慎重に読むべし」としている。
    どちらが良いかは、あなたの日々の過ごし方次第だ。しかし、長い人生を考えれば、やはりゆっくりと味わいながら読むほうが、結果的に得をするのは間違いないだろう。

    ――――――――――――――――――――――――――――――――
    【まとめ】
    1 速読は何も残らない
    一冊の本を、価値あるものにするかどうかは、読み方次第である。一冊の本にできるだけ時間をかけ、ゆっくり読むことを「スロー・リーディング」と呼ぶ。

    速読のあとに残るのは、単に読んだという事実だけだ。スロー・リーディングとは、それゆえ、得をする読書、損をしないための読書と言い換えてもいいかもしれない。

    読書を今よりも楽しいものにしたいと思うなら、書き手の仕掛けや工夫を見落とさないというところから始める必要がある。
    私たちは、情報の恒常的な過剰供給社会の中で、本当に読書を楽しむために、「量」の読書から「質」の読書へ、網羅型の読書から、選択的な読書へと発想を転換してゆかなければならない。

    速読とは、「明日のための読書」である。翌日の会議のために速読術で大量の資料を読みこなし、今日の話題のために、慌ただしい朝の時間に新聞をざっと斜め読みする。それに対して、スロー・リーディングは、「5年後、10年後のための読書」である。


    2 誤読を恐れるな
    「誤読」にも、単に言葉の意味を勘違いしているだとか、論理を把握できていないといった「貧しい誤読」と、スロー・リーディングを通じて、熟考した末、「作者の意図」以上に興味深い内容を探り当てる「豊かな誤読」との二種類がある。

    本を読む喜びの一つは、他者と出会うことである。自分と異なる意見に耳を傾け、自分の考えをより柔軟にする。そのためには、一方で自由な「誤読」を楽しみつつ、他方で「作者の意図」を考えるという作業を、同時に行わなければならない。これは、スロー・リーディングの極意とも言えるだろう。

    誤読要素(どうして作者はこういうふうに書いたのだろう)に当たったときに大切なのは、立ち止まって、「どうして?」と考えてみることだ。作者は一体、何を言おうとしているのだろうか?そしてその主張は、どんなところから来ているのだろうか?それを探るのは、常に、奥へ奥へと言葉の森を分け入っていくイメージである。
    1冊の本をじっくりと時間をかけて読めば、実は、10冊分、20冊分の本を読んだのと同じ手応えが得られる。実際に、その本が生まれるには、10冊、20冊分の本の存在が欠かせなかったからであり、私たちは、スロリーディングを通じて、それらの存在へと開かれることとなるのである。

    自分にとって本当に大切な本を、5年後、10年後、折に触れて読み返してみよう。その印象の変化を通じて、私たちは自分自身の成長のあとを実感するだろう。


    3 読むときの方法論
    ・人に話すことを想定して読む。
    ・テクストに対して、常に「なぜ」と考えてみる
    ・違和感に注目する
    ・書かれた時代背景や5W1Hを考える。
    ・形容詞・形容動詞、副詞等は、それ自体というよりも、なぜ他の修飾語ではダメだったのかを考えてみる。そのときは、対義語を考えてみるとよい。
    ・逆説の接続詞に着目する。
    ・筆者の主張にマークをつける。
    ・「こう書いたほうがいいんじゃないか」と、作者に意見してみる。
    ・嫌になったら休憩を取る
    ・誤読を恐れない。自分なりの解釈を思い切り楽しむ。
    ・小説の読み方に正解はない。作者の意図を理解しようとするアプローチ、自分なりの解釈を試みようとするアプローチ、つねにこの二本立てで本を読む。

  • あえて時代の逆を行くようなタイトルに惹かれて読みました。筆者は「モンテスキューほどの第一級の知性の持ち主が、二十年もかけて考えたことを、どうして私たちが、一時間や二時間の飛ばし読みで理解できるだろうか?それは、極上のボルドーをイッキ飲みするような、恥ずかしい、下品なことじゃないだろうか?」と述べています。速く読まなければいけないと思い込んでいたところがあったので、言葉の使い方や物語をゆっくり味わって読むのもいいなと思いました。

  • 図書館で借りて読んだが、買って読み直したい

  • 読了。数回読み直している。

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著者プロフィール

作家

「2017年 『現代作家アーカイヴ1』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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