なぜ共働きも専業もしんどいのか 主婦がいないと回らない構造 (PHP新書)

著者 :
  • PHP研究所
3.45
  • (9)
  • (28)
  • (28)
  • (5)
  • (4)
本棚登録 : 453
感想 : 39
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569843124

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 今の日本は、構造面と人々の慣習面(マインド面)から子育てしながら働き続けることの難易度が高くなっているとよく理解できた。これからの自分と家族がどう舵取りをしていくか沢山のヒントを得ることができた。

  • ・サラリーマンの働き方には妻の支えが不可欠。長時間勤務、全国転勤
    ・パート主婦は家計補助としか見なされず低賃金
    ・家事が高度化している。家電も増えたが家事に費やす時間はそこまで大きく減っていない、求める水準がどんどん高くなっているから
    ・一汁三菜は元々もてなし料理
    ・ワンオペの辛さは自分で時間をコントロールできないこと。専業で家事育児を担うのは精神的肉体的に大変
    ・母親が保育を担うことで国が予算をかけたり考えなくて良いしくみにされてきた
    ・小一の壁も大きい
    ・夫婦それぞれが、収入を得る役割、家族をケアする役割を分担したり交換したりしながらその時々の役割に適した働き方を選択し続けていくあり方を目指すことが、長い目で家計を安定させる
    ・転勤の仕組みを見直すべき
    ・週3〜4の働き方もあり


    全体的にそうだよなーと思う内容。全体的に内容について驚きは少なかったがやはり専業のしんどさはもっと理解されるべきと思う。
    個人的に家事で求めるクオリティを高すぎることは首を絞めるなと思う。ここまでのクオリティを求めてきたのは歴史的にも無いし共働きの状況にマッチしてない。ここまで高いクオリティの家事を求めたら本来外注すれば大変なこと。そこそこでよしとすることは大事と感じた

  • 今の日本、家庭、職場の課題をとてもわかりやすく学べた。学校も保育園幼稚園もそう。なぜ乗り越えるのがこんなに辛いのか。何かを犠牲にしなければ立ち向かえないのか。すべて程々に、好きなように流れて生きていたい…。
    主婦前提の社会システム、おかしいともっと声を上げるべきだと思った。今後自分もそういった溝を埋めるために力を尽くしていきたい。

  • 専業主婦経験者の著者、とても納得するところもあった。複雑なことがこの一冊に盛りだくさん。そして生きづらい世の中だなと感じました。どちらを選んでも後悔するだろうしどうやっていくのか考えなくてはいけない。

  • 専業主婦に依存する社会に問題提起する本。本書は日本社会がいかに主婦のタダ働きに支えられてきたかを説明する。会社都合を優先させる転勤の仕組みや、学校での保護者の働きなど、共働きの世帯にとって非合理的。私自身、妊娠した途端に「里帰り出産はするの?」「お母さんは手伝いに来てくれるの?」と聞かれる毎日に辟易した。誰も「旦那さんは育休取るの?」とは聞かない。私の両親は現役で仕事をしているのに、なぜ子育てが始まる前から“専業主婦であるはずの祖母”の活躍を周囲から期待されるのか…日本の現状にがっかりする。

  • シンガポール在住で二児の母である著者が、日本の社会を分析する

    第一部 なぜ共働きも専業もしんどいのか
    1 共働きがしんどい
    ・専業主婦を志向する20代女性が増えている
     → 共働き家庭で育った子どもが、親の背中を見て「こうなりたい!」と思える環境でない
    ・親世代は祖母(元専業)という頼れる存在がいたが、現在では頼れる仕組みがない
    ・男性が主夫になったところで周囲の理解は得づらい
    男性用トイレにおむつ替え台がなかったり
    ・夫婦フルタイムはしんどい
     →キャリア競争から降りるか、離職につながってしまう
     保育園のお迎えで早上がりすることの罪悪感
    ・子どもとの時間が足りない、十全な育児ができていないのではないか、という自信のなさ

    2 専業主婦がしんどい
    ・夫の転勤に付き合うしかない
    休職制度がなければ仕事を辞めざるをえない、帯同先で孤立してしまう
    ・夫や社会に引け目を感じてしまい、お金を使いづらくなったり、家事のプレッシャーが強まる
    ・「自分で選んだんでしょ」といった自己責任論や、「専業になれるなんていいですね」という嫌味
    ・専業を経て再就職したり、柔軟に働く人が増えることで、専業とワーキングマザーという対立軸がなくなるのではないだろうか

    3 しんどさを生み出す循環構造
    ・1950年代半ばの高度経済成長期、都市部への人口流入とともに「サラリーマン」が激増
     →それまでの農業や自営業では家族ぐるみで働いていた
    ・核家族で団地に住み、専業主婦が支えることを前提とした仕組み
    会社が家族ごと丸抱えするような福利厚生、給与体系
    ・男性中心の雇用と女性雇用のあり方が相互補完関係になっており、一種の均衡を形成していた
    →ワークライフバランスを重視する企業が現れても競争に負けてしまう
    →家庭における性別分業にもつながった
    ・高度成長時に合理的と選択された結果に今も依存している(経路依存)
    →ひとたび選択されてしまうと、相互補完的な制度の集まりのセットとなり、部分的な変更が難しくなる
    →男女の賃金格差が「合理的」となってしまい、再生産される悪循環(劣等均衡)


    第二部 主婦がいないと回らない構造
    第一章 主婦に依存する日本の社会
    1 転職に踏み切れない、早く帰れない男性
    ・住宅ローンなどの仕組みもあり、辞めにくい
    ・転職を妻に反対される
    ・妻が働こうにも、保育園が確保できない

    2 主婦を生み出す転勤の仕組み
    ・日本のサラリーマンは「時間、場所、職務が無限定」
    転勤を断れない、メンバーシップ型雇用
    →判例では徐々に転勤を断れるように変わってはいる
    ・夫に帯同するため仕事を辞める妻
    夫の単身赴任によるワンオペ育児を避けるため、帯同休職or退職
    →配偶者帯同休職制度があっても、夫の滞在期間が延びれば辞めざるをえない
    ・帯同した妻の就業を、夫の会社が認めないことが多い
    →妻が夫をサポートすべき、という観念が根底にある?

    3 「パート主婦」はなぜ値切られるのか
    ・日本では高学歴主婦が多い傾向
    →学歴に見合う就業機会がない
    ・高処遇の仕事は拘束性が強く、パートは時間の融通は聞くが低賃金であり経歴を評価されない
    ・103万の壁

    第二章 専業でないとこなせない?日本の家事
    1 高度化する家事
    ・「片付いていない」と言いながら、ホテルのようなもてなしを頑張る専業ママ友
    →親世代からの水準の引継ぎ、インスタ映え
    ・家電が発明されても家事時間が減らない現象は、家事時間のパラドックスとして万国共通
    →時間が減ったのは裁縫くらいで、あとは技術の発達によって家事の水準自体が上がってしまう
    ・家事代行サービスの利用も進まない
    →他人を家に入れることへの抵抗、サボっていると近所の人に思われそう

    2 一汁三菜「おふくろの味」は幻想だらけ
    ・日本の食文化のレベルは高い、給食やキャラ弁など
    アメリカのランチはビスケットやポテトだけ?
    ・1960年代以降の女性が料理をしていない傾向
    →その母親世代は雑誌やテレビを通して料理を学んだため、教えられておらず、娘にも教えていない(あえて強要しなかった?)から
    ・一汁三菜は実はもてなし料理

    3 主婦のアイデンティティと自己納得
    ・井戸端会議はネットワーク、入れなかった場合は致命的
    ・離職によって家事が生きがいに
    認知的不協和
    「男女平等であるべき」と思っていた人が専業主婦になると
    ①認知自体の修正(性別役割分担のほうが合理的だな)
    ②現実を認識に合わせる(やっぱり働きに出たい!)
    のどちらかを選ぶことになる
    →①のパターンが多い?
    ・夫に嫌われたら終わり
    夫のカネで生活、フラストレーションを飲み込むようになる
    自分がここに住んでいられるたった一つの理由「夫の愛を確保できていること」
    ・団塊世代の主婦
    夫に家事をやらせず、靴下のありかもわからないようにしておく
    →私がいないとダメだと思わせる、依存させるという生存戦略

    第三章 子育て後進国・日本の実態
    1 ワンオペ育児に苦戦する母親
    ・仕事と育児の両立中、仕事をやめようと思ったことがある女性は55.5%
    →理由としては「子どもに向き合えない」が多い
    ・専業主婦は逆に負担が重かったり、時間を持て余している
    →子どもの体力を使わせ、時間を費やすために習い事へ通わせる
    →それを見た共働き家庭も、焦って習い事へ行かせる

    2 祖父母頼みは成り立つか
    ・教育方針の違いと世代間ギャップ
    →実の親子である母娘関係も例外ではない
    母に助けてもらっているのは事実なので、不満を言い辛い

    3 置き去りにされる「保育の質」への不安
    ・3歳までは母の手で育てる(三歳児神話)は神話にすぎない
    →世界的にはむしろ、就学前教育への公的投資に注目
    ・日本は「量」の確保で躓いていて、「質」の議論が二の次
    保育園はほったらかし、幼稚園は専業向け?

    4 立ちはだかる「小一の壁」
    ・それまでとは別の問題が出てくるが、周囲は「だいぶ楽になったでしょう」
    放課後の居場所問題、いじめ、「紙ベース」の学校連絡、PTAなど

    第3部 変わる社会の兆し
    1 変わる夫婦
    ・専業主夫になればいい、と役割を入れ替えるだけでは解決しない
    男性も女性ももっと流動的に仕事を変えられるように

    2 変わる働き方
    ・フルとパートの間、週3~4日の働き方
    ・ギグ(単発の仕事)エコノミー
    →保険制度の見直し、価格保証などフリーランスの保護が必要

    3 変わる人事制度
    ・ジョブ型(勤務地や職務を明示化)や手挙げ制、転勤の見直し、リモートワーク
    ・キャリアの階段を緩やかに
    欧米ではキャリアを追求するエリートのみが長時間労働をしているが、日本は「皆階段を上る」
    →キャリアを追求すればケアは難しいというのは世界共通なのでは

    4 変わる家事
    ・家事代行の市場規模や多様化が進んでいる
    Ctoのマッチングなど、利用者増の鍵は「対等感」
    →お願いすることで、家事は有償であり、れっきとした仕事だということに気付く

    5 変わるべき保育・学校
    ・利用者同士が子どもを預かったり送迎したりするサービス(アズママ)
    →ファミサポやシルバー人材は世代間ギャップ

    6 変わる世界の中で
    ・日本企業はダイバーシティといって主に「女性活躍」を進めてきた
    →これからは女性という「属性」ではなく、「個をどう生かすか」に視点が移っている
    多様性はコミュニケーションコストがかかるが、革新的なアイデアが出やすい

  • タイトルに無いけど子育ての話でちょっと的外れか

全39件中 31 - 39件を表示

著者プロフィール

ジャーナリスト、東京大学大学院博士課程

「2019年 『なぜ共働きも専業もしんどいのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

中野円佳の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×