ウェストファリア体制 天才グロティウスに学ぶ「人殺し」と平和の法 (PHP新書)

著者 :
  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569845524

作品紹介・あらすじ

いまこそ人類は17世紀の思想に立ち返れ! 日本人を取り巻く「野蛮な東アジア」のなかで戦争と平和の均衡をどう保ち、生き延びるか。

感想・レビュー・書評

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  • <目次>
    はじめに 日本人の全人類に対する罪
    第1章偉大な天才グロティウス、その悲劇の生涯
    第2章なぜ宗教戦争は悲惨な殺し合いになるのか
    第3章なぜ戦争と平和の方は必要とされたのか
    第4章ウエストファリア体制の現実
    第5章日本人の世界史的使命
    おわりに
    関連年表

    フーゴー・グロティウス(1583-1645)
    オランダあたり(当時国の概念なし)出身
    提唱したウエストファリア体制
    ①心では何を考えてもいい
    ②人を殺してはいけない
    ③お互いの存在を認めあう

  • ちょっと乱暴で偏った意見ではあるが、割引いて読んだとしても、自分が知らなかった新しい視点で、欧米の歴史を知る事が出来た。

  • 『#ウェストファリア体制』

    ほぼ日書評 Day435

    著者の「天皇本」はこれまでにも紹介して来たが、「世界史」系は初めて読んだ。

    'ウィルソン=キチガイ' など、例によって極論も多いが、無味乾燥な暗記科目とされる「歴史」という教科をこんなふうに教えたら、何百倍も興味が湧くのにな…と考えさせられる。

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  • ウェストファリア体制の意味が良くわかる。ちょっと乱暴だけど分かりやすい語り口で説明がなされている。

    グロティウスがやりたかったことは、殺人が当然だった世界、すなわち、異教徒や異宗派は人でないから殺して良いという世界から、暴力の独占主体を国家(王様)にして、貴族や教会から暴力を取り上げて、その同格の国家間での必要悪としての戦争というものを発明したというのが倉山先生の説明するウェストファリア体制。

    その一員たるには、自ら身を守る力が必要であり、力で対抗できない近代の非欧州圏には適用のないものだったが、大日本帝国がそれをグローバルなものにしたのにも関わらず、自らの滅亡によって弱肉強食の世界を生み出してしまった責任があると喝破。

    国連憲章によって戦争が違法化されたが、それによって管理された戦いというのが無くなり、紛争やテロという名の前近代に逆行しており日本も必要な備え、すなわち軍備が急務と指摘。 

    また、民族自決というウッドロー・ウィルソンの考え方は人類に悲劇をもたらした呪いというのもなるほどなと。

    ウィルソン狂人論について、筆者は書いているようなので、それも読んでみたい。また、田中明彦先生の新しい中世という20年前に読んだ本も、ウェストファリアから脱して国家以外が力を持ちつつあるという話だったが、趣旨は同じだと思う。これも読み返してみたい。

    中々に考えさせられる本だった。

  • 心の中で何を思ってもいい
    人は殺してはいけない
    お互いの存在を認め合う

    そんな当たり前が当たり前でなかった欧州の獣の時代に、文明的な戦争を説いたグロティウス。

    犯罪者と敵は違う。つまり、戦争は犯罪ではない。

    欧州の法だったウェストファリア体制を本当の国際法体制にした、日本。

    日本の罪は、国際連盟を抜け、先の大戦で殲滅されることで、再び獣を世界中に解き放ってしまったこと。

    倉山先生の本は、ちょっとあれって思うところもあるが、唸らされる。

    どーすんだ、本当。


  • 30年戦争と以降の歴史解説が大雑把でわかりやすいし、当時の背景がつかみやすいのでこれ読んでからハプスブルク家ものを読んでもいいかも。

    フロイトやデカルトも絡めつつ現代に向うのがおもしろいし、読みたい本ができるのもいい。

  • ◆「ウェストファリア体制」は日本語
    現代世界のルールの源となっているウェストファリア体制について、深く学ぶことができます。
    日本では当たり前に通じることが、ヨーロッパでは中々通じないことが良く分かります。

    □天才グロティウス
    『戦争と平和の法』の内容を通じて、国際法の概念を解説してくれています。
    戦争そのものは否定していないところがポイントだと思いました。

    本書を通じて、国際社会の根底にある問題を深く学ぶことができました。
    何回も読んでみて、日本には何が足りないか、考える機会にします。

  • 今回も面白かったしスゴく勉強になった。
    グロティウスやリシュリューのことがよくわかり、どうして国際法が確立していったのかがとても細かくて分かりやすく書かれていた。『敵とは利害が異なった者』で犯罪者とは違うと書かれていたことが、本当にそうだと思った。

  • 私は世界史の授業を高校二年生で受けましたので今から40年ほど前になります。高校二年になると受験科目を決めていて、理系を志望していた私は世界史は範疇に入っていませんでしたので、別の科目の勉強をしていました。とはいうものの歴史好きの私は、先生の授業の耳だけは機能していたのかもしれません。

    中でも印象に残ったのは、ドイツのハイパーインフレの時の倍率を、ゼロをいくつも書いて示したことと、この本のタイトルである「ウェストファリア条約」のことでした。先生は確か、この条約により世界が変わった、もしくは近代になった重要な条約であると説明されていました。

    それ以来、頭の隅に残っていた私は、今まで何冊も楽しく読ませていただいている倉山氏のこの本を見つけた時には思わず本屋さんのレジに並んでいました。分厚い新書で情報満載、令和2年の2月初めから、在宅勤務の始まる二月末にかけて、通勤電車で楽しみながら読みました。

    以下は気になったポイントです。

    ・ネーデルランデンはドイツ地方にありながら、スペイン・ハプスブルク家の所領であった、北部が独立をめざし、単数形で「ネーデルラント」を名乗った。1588年に事実上独立し、1648年ウェストファリア条約が締結されたときに正式に独立する、オランダ連邦講和国である。南部は所領としてそのまま残り、1815年にオランダに併合、そしてベルギーとして独立するのは1831年である(p28)

    ・本家オーストリア・ハプスブルク家が皇帝を世襲していたが、羽振りは分家のスペイン・ハプスブルク家のほうが、新大陸に植民地をもち、ポルトガルも併合して羽振りが良かった(p30)

    ・欧州で戦争が日常なのは、宗教問題で争っているから、これにカネが絡むので命がけの殺し合いになる。1517年、マルチンルターが宗教改革を始めてローマ教皇に喧嘩をうる、そしてルターと支持者たちは、カトリックに対してプロテスタント(抗議するもの)と名乗るようになる(p31)

    ・カトリックを信仰したのは、スペイン・ポルトガル・フランス・ベルギー・ルクセンブルク・イタリア・ドイツ南部・オーストリア・ポーランド・エストニア、プロテスタントは、スウェーデン・ノルウェー・デンマーク・スロバキア・チェコ・ドイツ北部・スイス・オランダ(p32)

    ・ルターはバチカンに対して預定説を突き付けたが、途中からあまり言わなくなった、それを批判したのが、ジャン・カルヴァンであり、これがプロテスタントにおける、ルター派・カルヴァン派の違い(p40)

    ・当時の外交官は、現代の野球やサッカー選手と似ている、国籍に関係なくチームに所属する、外交官と軍人は国籍に関係ない職業であった、外交官になれるのは軍人のなかの優秀な人のみ(p51)

    ・ユダヤ教は民族宗教(ユダヤ教を信じる人だけがユダヤ人であり、そうでない人はユダヤ人でない)であったが、イエスが改革して人類宗教にしてしまった。「すべての人間を愛しなさい」が教えであり、近代以前では、愛せない・仲良くできない人間は人間ではない、ということになる(p61)

    ・東ローマ帝国は別名「ギリシア帝国」と呼ばれる、首都をコンスタンティノープルに移してローマ教会の影響力を排除した、皇帝自身がキリスト教世界の首長であると宣言し、これがギリシア正教会(東方正教会)の始まりである、ローマのほうでは教皇が皇帝よりも威張っていた、皇帝は後に「神聖ローマ皇帝」と呼ばれるようになる。(p66)

    ・宗教改革の先駆けは、イングランドのオックスフォード大学神学教授、ジョン・ウィクリフである。彼は1376年頃から、ローマカトリック教会のやり方を批判し、ラテン語で書かれていた聖書の英語訳もやった、彼の死後30年を経て、1414年にバチカンから異端とされる、異端認定してから13年後に彼の墓が暴かれ遺体が火あぶりにされた(p66)

    ・ウィクリフ、フスに続いてローマカトリックに講義したのが、ドイツのマルチンルターである、これ以降、抵抗する人たちはプロテスタントと呼ばれた(p68)

    ・カトリックは、金で解決できると考える悪徳宗教だが穏健である、一方のプロテスタントは「人間に自由意志はない」と考える宗教原理主義者である(p70)

    ・カルヴァン派はスイスに始まり、金持ちのオランダにも広がり、そのままアメリカ大陸に渡り、合衆国をつくってしまった。これらの国々は金融大国という特徴がある。世俗で金儲けして成功したのは、神に救われた証拠と考える(p77)

    ・カトリックでは労働はアダムが神様からリンゴを盗んだ罰である、なのでラテンのカトリックの国(フランス、イタリア、スペイン等)に勤勉を美徳とする文化はない(p78)

    ・神聖ローマ皇帝の傭兵隊長ヴァレンシュタインが凄かったのは、掠奪と進撃速度の問題を画期的なやり方(徴税)で解決した、徴税して給料として配るので掠奪はするな、とした(p100)

    ・ロシアは最初から大国ではない、30年戦争当時は、ポーランドやスウェーデンのほうが大国であった(p102)

    ・最精鋭部隊を決戦局面まで温存するのが戦いの定跡である、ストッパーを最終回まで温存するようなもの、戦争ではこうした兵力のことを戦略予備という。戦場で勝てるかどうかは、戦略予備の使い方にかかっているといっても過言ではない(p111)

    ・ラテン語は貴族の言語で帰属間では共通語であるが、普段自分たちが話す言語を使用したい人がいて、スウェーデンをはじめとするプロテスタントはドイツ語、フランス等のカトリックは、ラテン語・フランス語・イタリア語であった、1919年ヴェルサイユ会議で英語にとってかわられるまで、フランス語が主流となっていく(p114)

    ・ウェストファリア条約の要諦は、宗教的寛容である、要するに負けたカトリックのハプスブルク帝国に「異端認定して殺すのはやめよう」ということ。さらに領民が君主と異なる宗教を選んでよい、という信仰の自由を認めた、これが世俗主義であり政教分離である。以前の考え方は、自分と違うことを考えているかもしれない者は、殺さなければならない、が常識であった(p118,120)

    ・ウェストファリア体制が主権国家体制であると強調されるのは、国家に教皇や皇帝のような上位の存在がいなくなり、それぞれの国が対等であるとの建前が成立するから(p122)

    ・政教分離とは、政治と教団の分離である。世俗権力のほうが教会戦力よりも上になっていく過程が近代国家ができる過程である、早い国はイングランドで1689年権利の章典、遅い国はフランスで、第三共和政で1905年に政教分離法が公布された。日本は聖徳太子で解決している、ローマ教皇がおとなしくなるのは、1929年のバチカン市国の建国でもって、公式にウェストファリア体制を受け入れた、つまり自分たちも他の国と同格とした(p125)

    ・日本の戦国時代には宗教勢力の争いはあった、延暦寺・法華宗・石山本願寺は三つ巴で殺し合いをした、欧州の30年戦争等と比べたら少ない。日本には天皇という調停者がいたので(p162)

    ・グロティウスはどういう理由で戦争を始めるかを説明し、目的を明確にせよと主張した。目的が明確であれば、その目的が達せられた時点で「戦争」をやめられるが目的のない戦争は「戦争」ではない(p167)

    ・トルコが攻めてきたら欧州は結束するのが常である、ハンガリーをトルコから奪い返して1699年にカルロヴィッツ条約を結んで戦いが終わる、これ以降有色人種が白人に勝ったのは三百年(日露戦争まで)ない、欧州のルールが世界の法になっていく端緒である、イギリスからロシアまでのキリスト教国の法律であり、欧州以外の異教徒・有色人種には適用されない(p190,197)

    ・総力戦の萌芽はアメリカの南北戦争である、リンカーンが奴隷解放を公約に大統領に当選したのに、南部諸州がアメリカ連合国を結成して連邦離脱して戦ったのが南北戦争である。アメリカ合衆国(北部)は、アメリカ連合国を抹殺した(p206)

    ・1905年のポーツマス条約は、キリスト教国以外の国が「ウェストファリア体制」を対等に受け入れた瞬間であった、日本は1911年の不平等条約撤廃で対等となり、1919年のヴェルサイユ会議で正式に大国として認知される、その結果1907年から大英帝国以下列国が日本と大使を交換(大使館を設置)した(p213,214)

    ・ウェストファリア体制とは、1)心の中では何を考えて良い、2)人を殺してはならない、3)お互いの存在をみとめあおう(p280)

      2020年4月12日作成  

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著者プロフィール

憲政史家

「2023年 『これからの時代に生き残るための経済学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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