はらぺこ<美味>時代小説傑作選 (PHP文芸文庫)

  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569902487

作品紹介・あらすじ

旬の女性時代作家たちが豪華共演! みたらし団子、猪鍋、菜の花飯……江戸のうまいもの×人情を味わえる短編が揃ったアンソロジー。

感想・レビュー・書評

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  • 出汁は土佐の鰹節、昆布は松前、醤油は銚子の亀長、大根は練馬の産、大納言はたんば、砂糖は琉球の黒、青海苔は浅草、、、
    乾物屋の娘お壱与は、不器量で鈍重で、おまけにやっと嫁いださきから「大食い」のため離縁されるという始末であった。唯一の特技「大食い」という特技を活かして、弟のため賞金稼ぎをしていたが、お壱与の食べ方は“食べ物を粗末にする“食べ方ではなく、ひとくちひとくち、産地を言い当てるほどに味わう。
      朝井まかて『福袋』

    「小豆の一番おいしいところはさ、皮の近くなんだ。鮭だって、皮のところごうまいだろ。それと同じだよ。そのおいしいところを、上手に使っているのが粒あんだ」
     中島久枝『びっくり水』

    「あの猪鍋が美味しかったのも当然でございますね。あれは食べてはならぬものだったのですから」
     河豚と同じで、危ないものは上手いのだ
      『猪鍋』近藤史恵

    長年女中として武家の料理を取り仕切り、辞したあと、還暦近くなって、一代決心をして、お団子とお茶だけのお店を開いたさゆ。お代は少し高いが、心を込めて蒸したお団子とひとりひとりに合わせたお茶のおもてなしが評判を呼ぶ。
      『桜ほろほろ』五十嵐佳子

     菜の花の黄色は眩しく、その茎のお浸しはほろ苦い。まるでどうにもならない初恋のよう。
      『糸吉の恋』宮部みゆき

    見栄えが悪くても癖があっても噛めば噛むほど味のある女。毒“と“美味“が裏腹の人生。そしてそれは“食“と同じ。美味しい、江戸時代小説のアンソロジー。

  • 第一線で活躍中の女性作家による"美味"をテーマにした、時代小説アンソロジー。

    《はらぺこ 》朝井まかて 「福袋」所収
    《びっくり水 》中島久枝 書き下ろし
    《猪鍋 》近藤史恵 「寒ツバキゆれる 猿若町捕物帳」
    所収
    《桜ほろほろ》五十嵐佳子 書き下ろし
    《糸吉の恋》宮部みゆき 「〈完本〉初ものがたり」
    所収

    2篇の書き下ろし以外の3篇は過去に読んでいた。

  •  今回もどの作品も面白かったです。

     その中でもミステリ作家でもある近藤史恵さんの『猪鍋』が気に入っています。こちらはシリーズものだそうなので、次に本屋さんへ行ったときに探してみようかなと思っています(´∀`*)ウフフ
     南町奉行所定町廻り同心の玉島千蔭。それなりにいい年なのに、女性の影など全くない人物で、己が見合いした相手が父親の後妻収まる始末。
     その後妻・お駒がめでたく懐妊。だが、悪阻が酷く、ほとんど食べることが出来なくなってしまった。困った千蔭は知り合いの役者である水木巴之丞に相談。彼が紹介してくれたのは、『乃の字屋』という猪等の肉を食べさせる店だった。
     ですが、お駒も家族も全員、料理に満足して、お駒の悪阻もよくなってくるのですが……。
     その翌日、『乃の字屋』で刃傷沙汰が起り、そして食中毒が起ってしまうのです。
     そのわけは……。

     ミステリと美味って相性がいいなぁと思いながら読んでました。そして千蔭の新たな見合い相手が面白い人物で(笑) 楽しく読ませていただきました。

     五十嵐佳子さんは初読みの方でしたが、この方の『桜ほろほろ』も素敵な作品でした。大店の薬種問屋の娘だったさゆは旗本の池田家の奥方に仕えて、五十五歳の時に退いて実家へ戻るのですが、大事にしてくれるけれども、毎日が退屈。
     そんな彼女は旧友に出会ったことで茶屋『蒲公英』をやることに。値段も安くて、美味しいお団子もつくという店は繫盛するのですが、ある時、彼女は漆器屋の『光風堂』のおかみ・きよと出会うのであるが、口うるさい姑と夫に死なれた切なさを抱えたきよにさゆが差し出したものは……。
     この話を読んで、人には誰にもこうした料理が一品でもあるよねとしみじみ。
     そして白玉粉でつくるお団子のおいしそうなこと! 作ればいいんですけどね、手間のかかる料理は今はつくりたくなーい!
     だれか食べさせてくれないかぁとか、思いながら本を閉じたのでした。

     ごちそうさまでした、どの作品も大変おいしゅうございました(*^^*)

  • 2022年10月PHP文芸文庫刊。時代小説傑作選シリーズ11作目。朝井まかて:福袋、書き下ろし中島久枝:びっくり水、近藤史恵:猪鍋、書き下ろし五十嵐佳子:桜ほろほろ、宮部みゆき:糸吉の恋、の5つの美味しい食べものの連作短編。朝井さんの福袋が、楽しい。近藤さんは本編を読まないと…に走るのは必至。今回も書き下ろし2編というのは豪華。

  • 時代小説のアンソロジー
    どの話しも読みやすかった

    糸吉の恋 宮部みゆきさん
    町の色、雰囲気、ほどよいお節介が伝わってくる
    描写はさすが
    宮部みゆきさん作品のファンにはたまらない
    人物も出てきてにんまりした

  • 寝る前に一つずつ読みました。
    どのお話も引き込まれ、日中の仕事のゴタゴタを忘れさせてくれました。

  • 江戸の食生活を知りたくて読んでみたけど
    そんなことはあまり書いてなくて
    言葉の違いとか
    意味とか理解するのに時間がかかった。
    上方訛りならまだしも
    江戸の役職とか、
    分かりにくくて
    詰まった。

  • 【収録作品】「福袋」(朝井まかて)/「びっくり水」(中島久枝)/「猪鍋」(近藤史恵)/「桜ほろほろ」(五十嵐佳子)/「糸吉の恋」(宮部みゆき)

    「福袋」は『福袋』、「猪鍋」は『寒椿ゆれる 猿若町捕物帳』、「糸吉の恋」は『〈完本〉初ものがたり』からの一篇。「びっくり水」と「桜ほろほろ」は書き下ろし。
    新旧取り混ぜたアンソロジー。旧作品は久々に読んで懐かしかった。

  • 何となくそそられて手に取りましたが、時代小説アンソロジー、シリーズになっているんですね。いろんな作家さんのぎゅっと詰まった心づくしが味わえて満腹になれました。

    まかてさんの「福袋」だけどこかで読んだ記憶がありましたが、その他は初見。五十嵐佳子さんの「桜ほろほろ」が沁みる。近藤史恵さんの「猪鍋」もユニークな家族構成で好き。

  • 桜ほろほろ…五十嵐佳子
    初めて読んだ作家さんだと思う。良かったです。他の本を探して読んで見ようかな。
    猪鍋…近藤史恵
    糸吉の恋…宮部みゆき
    どちらも面白かった。ちょっとミステリーっぽいところが好きです。

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著者プロフィール

1960年東京都生まれ。87年『我らが隣人の犯罪』で、「オール讀物推理小説新人賞」を受賞し、デビュー。92年『龍は眠る』で「日本推理作家協会賞」、『本所深川ふしぎ草紙』で「吉川英治文学新人賞」を受賞。93年『火車』で「山本周五郎賞」、99年『理由』で「直木賞」を受賞する。その他著書に、『おそろし』『あんじゅう』『泣き童子』『三鬼』『あやかし草紙』『黒武御神火御殿』「三島屋」シリーズ等がある。

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