たった、それだけ

著者 :
  • 双葉社
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本棚登録 : 643
感想 : 121
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575238808

感想・レビュー・書評

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  • +++
    贈賄の罪が明るみに出る前に失踪した男と、その妻、姉、娘、浮気相手。考え抜いたそれぞれの胸の内からこぼれでた“たった、それだけ”のこと。本屋大賞ノミネート作『誰かが足りない』の感動ふたたび。人の弱さを見つめ、強さを信じる、著者の新たなる傑作!
    +++

    それぞれの章で主役を替えて語られる物語。だがそれは、一貫して贈賄の汚名を着て、ある日突然失踪した望月正幸というひとりの男にまつわるものだったのである。望月自身はその姿を現すことはほとんどなく、取り残された周りの人たちのその後が描かれているのだが、いつもそこには色濃く望月の気配が漂っている。そしてラスト。これほど近づいたのにここで終わってしまうのか、ともどかしい気持ちにもなるが、それからのことをあれこれ想ってみるのもまた興味深い。たった、それだけのことが作りだした波紋は意外に遠くまで及ぶものだと思わされる一冊でもある。

  • たったそれだけ、これだけ、ほんのちょっとだけ、そんな出来心で賄賂をしたり、その賄賂を告げ口したり、浮気したり、心が離れたり壊れたりなどなど。ほんの出来心から始まる連作短編集。
    涙って書いてルイちゃん。わたしは好きだな。人名に相応しくなくても好きだな。綺麗。(まぁ確かに負のイメージは強いし、実際夫が勝手にそれで役所に出したら嫌悪するが)
    たった、は命取り。後にも先にもつきまとう。

  • 「たった、それだけ」と思えることで、何かがが大きく変わることがある。
    色んなことが上手くいかなくて。諦めて放り投げて斜に構えて開き直って。仕方ないよ、どうせ私は…と小さくうずくまっている。そんな誰かがそばにいる。そんな誰かに、「どうしたの?」と、「大丈夫だから」とささやいて、ギュッと抱きしめてあげたら、変わるんだ、何かがきっと。そう、変えられるんだ、きっと。
    今までいつも宮下さんの小説にそっと抱きしめられてきたけれど、今度は私が、ぎゅっと抱きしめてよう。うつむいている誰かをギュッと抱きしめよう。
    そんな気持ちになる一冊でした。

  • 難しかった

  • 贈賄の疑いで逃亡した望月正幸。
    その愛人、妻、姉、娘の担任、娘、逃亡後の同僚、の目線から語られる連作。
    それぞれに思う『たった、それだけ』の大切な事。
    愛人にとっては、「どうしたの」のたった、それだけ。
    妻にとっては、生きていてさえくれればいい、それだけ。
    姉にとっては、義妹が正幸にとって必要のある人間だと思っていた、正幸にとってだけ、のたったそれだけ。
    娘の担任にとっては、俺は俺だというたった、それだけ。
    娘にとっては、母は働いて、働いて、父を待つ、たった、それだけ。
    そして正幸本人にとっては、好きな人と好きな映画を観た。短い間だったけど、一緒に暮らした。たった、それだけの記憶だけで、生きていける。たった、それだけ。

    正幸のタブレットにログインするパスワード“Teardrops for me”
    小学生の頃父親に『男が泣くな。みっともない。簡単に涙に逃げるな』と叱られて以来泣くことのなかった正幸。
    娘が産まれて初めて喜びの涙がある事を知る。
    封じ込められた涙、知った喜びの涙、菩薩の様な笑みを浮かべ続ける正幸、それらがどう贈賄に結びついたのか真実は明かされない。
    しかし、娘にルイ(涙)と名付けたこととパスワードが結び付くと何とも言えず胸が詰まる。
    ルイは喜びの涙を教えてくれた。
    私のためのルイ。

    ルイと担任の先生の章と、ルイとトータの章が好きだった。
    ルイと正幸は出会えるのか、希望が持てるラストだった。

  • 望月正幸に関わる人たちの連作。
    いい人のようだが、浮気も一人ではなく何人もでもでは、流され過ぎだろう。贈賄問題も上から罪を被らされている感じではあるが、断りきれない、流されやすい性格が災いしてるんだろうと思った。

    最後の章での、正行が大橋くんに言った言葉。「正直に生きることです。自分に正直でいれば、すべては自分で選んだことだと納得することができます。自分にとことん正直であるなら、後悔しない。〜」重みがある。

    トータのまっすぐさが良かった。介護の世界で頑張り出した大橋くんにエールを送りたい。成長期する中に苦労したルイだがトーイにいい影響を受けて明るくなってきて良かった。皆に幸あれ。

  • 逃げてるつもりが、地球は丸いから実は追いかけてるのかも知れない。トータ、いい奴だな。

    読み終わって何とも言えない後味。
    ルイには幸せになって欲しい。

  • 人の人生ってわかんないなあ、、

  • 望月夫婦に全く共感できず…。
    ルイの幸せを願うばかりです。

  • ルイが幸せになれるといいなぁ。

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著者プロフィール

1967年、福井県生まれ。上智大学文学部哲学科卒業。2004年、第3子妊娠中に書いた初めての小説『静かな雨』が、文學界新人賞佳作に入選。07年、長編小説『スコーレNo.4』がロングセラーに。13年4月から1年間、北海道トムラウシに家族で移住し、その体験を『神さまたちの遊ぶ庭』に綴る。16年、『羊と鋼の森』が本屋大賞を受賞。ほかに『太陽のパスタ、豆のスープ』『誰かが足りない』『つぼみ』など。

「2018年 『とりあえずウミガメのスープを仕込もう。   』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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