きらきら眼鏡

著者 :
  • 双葉社
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  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575239270

感想・レビュー・書評

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  • 「海ってのは、すごいんだよ。だって海は、川から流れてくる水を拒んだりしないよね。海は、いつだってすべてを受け入れてくれるの。黙って静かに受け入れて、いつのまにか自分の一部にしちゃう。人間も同じでね、いまの状況をいったんすべて受け入れて、自分のものにしちゃえばいいの。で、それから自分がどうするかを考えることが大事なんだよ。」(146 ページ)

    広々としてて、きれいで、やさしくて - そんな自分の名前の由来を本当の意味で発揮できるようになるまでの青年の物語り。

    ---

    美しいことも、悲しいことも。どんな状況でも、その時に得られた感情を、ひとつひとつ丁寧に味わってみる。
    だって、人生の価値を決めるのは、その人に起こった事象ではなくて、その人が抱いた感情だから。
    「この人の世界のすみっこに存在していたい」
    そんな風に想ってもらえるような人になりたくなる。

  • 着けようと思えば誰でも着けられる眼鏡。
    でも着けるのがむずかしい眼鏡。

    わたしも着けたい。
    きらきら眼鏡。

  • 生きること,死ぬこと,人と人が出会うことを深く暖かく見守っているような物語.悲しいこと,不安なこともきらきら眼鏡をかけて,素敵に明るく人生を受け入れる.啓蒙本ではないけれど,そういう効果もあり.

  • 地元が舞台で映画化されると知り読みました。
    明海(あけみ)という名前がきっかけで学生時代にいじめにあった青年が社会人になり、そのトラウマに苦しみながらも正直に向き合い、徐々に克服していく、そんな姿に共感しました。
    登場人物誰もが相手を思いやり交わされる言葉!
    途中気持ちが重くなりましたが読後は私もきらきら眼鏡をかけたい、ブーメラン効果を信じたいと思ってしまいました。

    今までの作品と繋がる所でほっとしたり…そんな所も楽しみました。

  • 登場人物が全員あり得ないほどの善人、出来過ぎの会話とそれを補うための説明の多さ、冗長なストーリー展開、欠点を上げれば数多くあります。
    でも良いです。著者の思いが伝わってくる、森沢さんらしい優しくちょっと悲しいけれど前向きな話でした。

    しばらく前から図書館の「今度読みたい本」リストに挙げてたもの。先日読んだ『キラキラ共和国』つながりで読んでみようという気になりました。「キラキラ」と「きらきら」。よく似た意味で使われています。

    辛い状況下でも、身近な小さな幸せを丁寧に味わい、感謝し、喜ぶあかねさん。そんなあかねさんも良いけれど、先輩・弥生さんに会ってみたいな。

    読了後に知ったのですが映画化されるようですね。森沢作品はどこかビジュアルで映像化向きですから。
    今年9月の公開予定です。

  • きらきら眼鏡という題名だけれど、誰もめがねなんてかけてないじゃないか!とつっこみつつ、読み進め162ページ目に遂にめがね登場!それからはたくさんでてきます。
    いやぁ、森沢さんは本物のクライマックスを作る天才ですよ。

  • 【あらすじ】
    愛猫を亡くし、喪失感にうちひしがれていた立花明海は、西船橋の古書店で普段は読まない自己啓発系の本を買う。すると、中に元の持ち主の名刺が栞代わりに挟んであり、明海が最も心を動かされたフレーズにはすでに傍線が引かれていた。気になった明海は意を決して名刺の「大滝あかね」に連絡をとる。会うと、あかねは明るい年上の女性で、日常の物事を幸福感たっぷりに捉えている“幸せの天才”だった。明海には、今まさに恋愛関係に発展しそうな会社の同僚・松原弥生がいたが、あかねの存在が徐々に大きくなっていく。だが…あかねには恋人がいた。彼は病に伏し、余命宣告を受けているという―。

    【感想】
    明海が愛猫を亡くし、生気を失ったようになっている時に、運命的に出会ったあかねとは、本当にこのタイミングで出会ってくれてよかったと思った。それは、無意識に、明海があかねの明るさ、そしてきらきら眼鏡のことまで教えてくれて、それに救われ、反対に、あかねはあかねで明海の存在に救われていた。明海は、会社の上司の弥生から好意を寄せられていたけれど、どんどんあかねに夢中になっていく自分がいた。あかねには余命宣告を受けている彼がいるというのに。でも、それでもわたしは良いんじゃないかと思った。いろんな恋がある。でも、人を好きになることって、誰にも、自分にも止められない。だから、結ばれるとかどうとかじゃなく、明海にもあかねにも弥生にも、幸せになって欲しいと思った。そして、つらいときにこそ、きらきら眼鏡をかけて、世界をきらきらさせて欲しいと思った。

  • 子供の頃にいじめに合って人との接し方にトラウマがあったり、
    愛猫を亡くし喪失感や悲壮感に打ちひしがれていた明海。
    そんな明海は自分でも自覚していた人とは
    少し違う性格だと思っていましたが、
    同僚の女性や年上の女性との出会いなどでそれが長所にもなっていき、
    徐々に自分に自信がついていくところが見えてとても良かったです。
    それにしても明海は年上の女性から好まれるので女性キラー?
    なのかなとも思いましたが、読み進めていくうちに
    明海の良さに引き込まれていました。


    この作品の中にも素敵な言葉が沢山ありました。
    中でも印象的なのは
    弥生さんの言葉
    人間の中には、自動的に立ち直れるようなプログラムがある気がするっていうか。
    時間が経つと、いろんあことが薄れていくでしょ?
    よかった記憶も、つらかった記憶も。
    だから、自動的に立ち直りながら、少しずつでも前に進むしかないんだなって。

    明海の言葉
    人生の価値を決めるのは、その人に起こった事象ではなく、
    その人は抱いた感情なのだ。

    ゴンママの言葉
    人生を花束でいうなら、
    「幸運」は派手なバラで、
    「不幸」は地味なかすみ草なのよ。
    両方を合わせた花束は、
    いっそう「幸福」のバラが引き立って、
    とても愛すべき存在になるんだから

    明海は裕二に会うまではライバルと想像していましたが、
    二人が対面した印象はそれとは逆のイメージとなり
    その後の関係も男同士の程良い距離感が絶妙でした。
    裕二が本の間に挟んだあかね宛てに書いたメッセージが素敵で、
    涙をそそられますが、それに対して明海がコーラーのペットボトルに
    書いた文字も潔くて清々しい言葉でぐっときました。
    この作品の中での登場人物がみんな人として素敵な人ばかりで、
    こんな人の中にいたら居心地が良いのはもちろんですが、
    人間的にも成長させられそうな気がしました。


    辛い時にきらきら眼鏡で目の前の風景を見てみると、
    いつもとは違う風景が見れて嫌なことも少しは良い方向として
    見えると思い、私も時にはこの眼鏡をかけてみようかと思いました。

    そしてこの作品の初めにあった「自分の人生を愛せないと嘆くなら、
    愛せるように自分が生きるしかない。他に何ができる?」
    という栞の言葉。
    まだ自分の人生を全て愛せるほど納得のいく生き方を
    していないように思うのでこの言葉を目標にしてみたいです。

    キリコの昭和堂、ゴンママ、岬の喫茶店、風鈴の音などの森沢さんの作品の一部分があちこちに散りばめられていてこれが見つけられるのが嬉しかったです。

    500頁近い厚い本でしたが、それを感じることがなくとても読みやすく会話が生き生きとしていて目の前に情景がすぐに浮かぶので頁をめくるが止まらず一気に読めました。

    西船橋を舞台にしたラブストーリですが、
    苦渋の決断、人生の生き方などが織り交ぜられているので切ないラブストーリーです。
    人生で躓いた時にそっと背中を押してくれる言葉が
    沢山詰まっていて心も温まる作品です。

    森沢さんの作品を何冊か読んでいますが、
    この作品も後で何回でも読みたくなる一冊になりました。

  • 文教大学図書館の所蔵情報はこちらです: 
    https://opac.bunkyo.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=859634&test=t

  • いい、実にいい人ばかりだった。
    明海くんは余程年上キラーと見える。
    なんか母性本能くすぐるのかねぇ。

    そして30歳のあかねちゃんはかなりずるかった、
    と思わずにいられないなぁ。

    いえ、いい人なんだよ、いい人なんだけどね。

    彼らの本当の状況を知っていても
    明海君のお姉さんは、
    同じことを思っただろうか、、と。

    弥生さんは
    「君は一人で大丈夫」って言われちゃうタイプで、
    なんか切ない。

    きらきら眼鏡をかけて読めば、
    とても素敵なお話だった。

    森沢さん作品のいろんな人が出てきて嬉しかった。
    映画化なんですね、
    「岬カフェ」のシーンもあるのかなぁ。

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著者プロフィール

1969年千葉県生まれ、早稲田大学卒業。2007年『海を抱いたビー玉』で小説家デビュー。『虹の岬の喫茶店』『夏美のホタル』『癒し屋キリコの約束』『きらきら眼鏡』『大事なことほど小声でささやく』等、映像化された作品多数。他の著書に『ヒカルの卵』『エミリの小さな包丁』『おいしくて泣くとき』『ぷくぷく』『本が紡いだ五つの奇跡』等がある。

「2023年 『ロールキャベツ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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