祝祭の子

著者 :
  • 双葉社
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本棚登録 : 406
感想 : 34
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  • Amazon.co.jp ・本 (520ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575245530

感想・レビュー・書評

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  • 宗教団体「褻」で生まれ育ち、洗脳された子供たち。団体トップの石黒に命令されて大量殺人を引き起こした彼らは無罪とされたのにも関わらず、世間からは冷たい扱いを受けて生きていた。ある日石黒の死を知らされた彼らに、何者かが襲撃を仕掛けてくる。刺客に対抗するため、彼らは協力して策を練ると同時に、自らの過去にも向き合うことになる。重苦しい読み心地だけれど、スリリングなミステリです。
    恐ろしい事件に「加害者」として関わったとはいえ、当時は子供でしかなかった彼らはたしかに「被害者」なのだと思いますが。しかし世間に受け入れられないという事情も仕方がない気がして。とにかく彼らの境遇が不憫でなりません。特に誰一人殺していないのに責任を負わされるって……それはない。忌避するだけならまだしも、事件にも何の関係もないのに叩く人たちの悪辣さが醜いです。関係のない人の不幸が娯楽だというのはまさしくそうなのかもしれないなあ。
    味方になるのはお互いだけ、それでも完全には信じられず、世間の目と刺客に怯える彼らの先行きが非常に不安でした。未来に希望なんてまるでないと思えるけれど、必死に生き延びようとする彼ら。刺客の目的が何なのか、そしてそもそも刺客の正体が何者なのか。孤立無援で絶体絶命な彼らの運命に寄り添ううち、何としても彼らには生きてほしいし救いがあってほしい、と思えるようになります。つらい読み心地なのだけれど、読む手は止まりませんでした。

  • 本格ミステリーだと勝手に思って読み始めてみたが、スラッシャー映画ぽい展開でがっかりした。宗教に翻弄される子どもたちの心情や内面の細かい機微を期待して読んでいたのに、どちらかというと一人の頭のおかしい女に洗脳されていた感じで、あまり宗教関係ない感じも期待と違う。結局、救いはどこにあったのか。もしくは、一切救いのない展開で強いメッセージ性があったならば、それでも良かったのかもしれないが、帰着点が中途半端な気がした。

  • 熱い。逸木さんの最新作は、身も心も熱くなる活劇小説だった。
    14年前に宗教団体〈褻〉で起きた惨劇。逃げ場もないまま信者たちが一人、また一人と狩られていく。5人の殺人者は10代の少年少女で、団体トップの石黒望に戦闘術を仕込まれていた。そして現在、彼らの命を狙う〈刺客〉が現れた……。
    衝撃の冒頭から終幕まで、休む間もなく描き出される恐怖に圧倒された。彼らに罪はないのか。贖罪の意志はあるのか。犯罪者と犠牲者、狩る者と狩られる者の立場が入れ替わったとき、真実が現れる。

  • すごく面白かった。なぜこんなに評価が低いのかわからない。

  • 02月-11。3.0点。
    かつての宗教団体で育った子供たち。ある事情で「生存者」と呼ばれ、困難な人生。子供たちを「調教」した教団関係者が死亡したとニュースが。。。

    途中、中だるみな感じがあり、読むのに時間かかった。テーマは良いと思うがいまいち感情移入できなかった。

  • 5人の子どもたちを殺人兵器として育てあげ大量虐殺を行った宗教団体。彼らは「生存者」と呼ばれ社会の中で息をひそめて生きてきた。14年後、再び五人は行動を共にすることになる。最初は面白く読んだのだけれど途中から少しテンポが悪くなったような気がする。真相はあまりスッキリしなかった。

  • あらすじを読んで面白そうだなと思って
    読んでみた。
    設定が今の現代にもありそうだなと思って
    リアル感がかなりあったと思う。

    人を殺した人たちが普通の生活を
    送れるはずなんかない…
    彼女たちの苦悩と乗り越えたい気持ちが
    凄く伝わってきた。
    加害者でもあり被害者でもある彼女たちが
    一致団結してからの物語の
    スピード感は最高です。
    話の展開も面白くて文章も読みやすかった。

    最後の終わり方が少し残念だった…

  • いやー,長い作品だった。そのせいか,紙が薄くてページがめくりにくかった。なんとも言えないエンディング。スッキリ解決した感はないし,救われる話でもなければ絶望的でもない。もやもやした感じが残る。
    山中の新興宗教の居住地で14年前に起きた,教団スポンサーが主犯の信者皆殺し事件。信者たちを手に掛けたのは主犯の石黒望と,石黒が教団に捨てられた子供たちに軍事訓練を仕込んで作り上げた殺人機械たち。事件後,石黒は単独で逃走し子供たちは保護され,少年法と石黒の洗脳を理由にお咎めもなく,世間からは生存者と呼ばれるようになった。生存者の子供たちは法的には裁かれなかったが世間からの迫害は厳しく社会からはじき出されるようにして生きてきた。その一人夏目わかばがある夜謎の人物に襲われる。わかばは相当な手練だと認識するが辛くも逃げ切った。実はこれに先立ち石黒が長野の自宅で死んでいたことがわかった。これを皮切りに,生存者5人を何者かが狙っているらしいことが分かってきた。特に事件後に連絡を取ってこなかった5人は自衛のため再集結し,刺客を撃退すべく行動を始める。
    しかし実際,洗脳された幼い子供たちに事件を回避する手段はなかったはずで,それを世間がしつこく糾弾し続けるというのは無理があるように思った。

  • 新興宗教、褻(け)。そこで教育されていた子供たち。彼らの辿る壮絶な道のりとは。
    前半部は緊張感が高まり不穏さが充満していくが、後半部はグダグダとしてしまうだけでミステリとしてははっきり言って退屈(そもそも本書はミステリではないが)。面白そうな題材だけにもう少しどうにかなるのではないかと感じた。

  • 始まりから終わりまでずっと暗い。痛々しい。
    暴力のシーンだけがやたらとリアルで読んでいて気分が悪くなった。

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著者プロフィール

小説家。1980年、東京都生まれ。第36回横溝正史ミステリ大賞を受賞し、2016年に『虹を待つ彼女』(KADOKAWA)でデビュー。2022年には、のちに『五つの季節に探偵は』(KADOKAWA)に収録された「スケーターズ・ワルツ」で第75回日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞した。このほか著作に、『少女は夜を綴らない』(KADOKAWA)、『電気じかけのクジラは歌う』(講談社)などがある。

「2023年 『世界の終わりのためのミステリ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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