『坊っちゃん』の時代 (双葉文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (261ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575712292

感想・レビュー・書評

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  • 坊ちゃんの時代 全5冊を読了
    この本を知ったのは鶴見俊輔と、この本の作者の一人で
    もある関川夏央の対談を読んだことだった
    さらに、今では孤独のグルメが代表作の一つになった
    谷口ジローが、最近亡くなられたということもあり
    手に取ったのがきっかけだった

    一巻、二巻が漱石、森鴎外と続くので、明治時代の
    文豪を描いた作品と思い、三巻目の石川啄木を読むと
    どこか違和感がある。その違和感は4巻での大逆事件で
    明らかとなる(大逆事件は天皇暗殺を企てた事件だが
    私は恥ずかしながら初めて知った)この作品は単に明治の
    文豪を描いたのではない。次の時代への転換に移る、その
    瞬間を描こうとしているのだ
    4巻を読み終わったときには、かなりの衝撃が走る
    鶴見俊輔がまさに日露戦争がひとつの転機だ、と語ったが
    まさにそうなのだろう。
    最終巻では漱石の闘病生活がメインで、正直地味だ
    しかし、そこに明らかに存在する死の存在は、明治が
    やがて死にいく姿が書かれている

    この本は、まさに傑作だ
    そして石川啄木は本当に情けない奴だ(笑)

  • ここで取り上げられた漱石の『坊っちゃん』をはじめとする日本文学の作品群が生み出された明治時代から大正時代にかけては、日本社会自体が「瓦解」(=明治維新)を機に西欧文明を強力に取り入れていった時代であり、その中で人々は国家としての方向性や人間のあるべき姿を日々考えていた。

    日本文学は、それぞれ視点の違いはあるものの、こうした模索を続けていた人々にとって一つの拠り所となるものであり、考え方を育てる踏み石となるものであった。

    本書によれば、漱石は、そうした文学者の中でも、英国留学の経験も踏まえ、そのまま西欧文明を導入することについて「張り子の虎」と称し、大いなる危機感を持っていた。また、『坊っちゃん』では、合理的で独善的なふるまいではなく、日本の歴史の中で培われてきたある種の優しさ、人々の間のつながりを大切にすることが「清」という女性の姿を通じて表現されている。

  • 「われわれの悩みの大半はすでに明治人は味わっている」

  • 漱石に親しみがわいた。
    坊ちゃん、また読みたくなった。
    あんな邂逅があったりしたんだろうか。
    あってほしい。

  • 久々に再読。緻密な絵と明治の著名人が次々出てくる感じが山田風太郎を彷彿とさせる。この絶妙にクドい感じの加齢臭まで臭ってきそうな劇画タッチがたまりません。好きだ!一応漱石が主人公だけど明治群像劇といった趣き。これがバブル期に発表されていた漫画とは驚き。わたせせいぞう先生が描いたらこんな濃い漫画にはならなかったであろう(バブルと言ったらわたせせいぞうを思い浮かべてしまうのであった。ちょっと見てみたい気もするが)。坂の上の雲のドラマがお好きな方にも薦めたい。

  • どこまで事実で、どこからがフィクションなんだろう。全部が本当ということもないのだろうけど、年月日まで記されるエピソードが全くの嘘とも思えない。そんなことが気になって、なかなか作者が伝えたいことに思いをめぐらすことができませんでした。

  • つくづくすごい時代があったのだなと思い知らされる。夏目漱石はちゃんと読んだことがないが、これを読めば誰でも彼とその作品に興味を持たざるを得ないだろう。

  • 嵐のように移り変わる明治期と、そこで新しい時代を切り開くべく苦闘する文人たち。それらを夏目漱石が「坊っちゃん」を構想し描き上げるまでに重ね合わせる。これだけ時代の空気を鮮烈に切り取った作品はそうそうない。関川夏央と谷口ジローのコンビだから実現できた名作中の名作。

  • 明治末期の文豪達を描いた5部作。
    作者は、明治維新から三十数年を経た明治末期の時代を“国の考えと人民の考えが乖離してきた時代”ととらえいて、物語の登場人物がみな明治維新のことを「瓦解」と呼び、口々に今の自分の境遇を嘆いているのがとても印象的。なんだか戦後60年を経た現代日本の閉塞感と同じものを感じるけれど、明治維新後、その恩恵を受けたのは当時でもごく一部で、大部分の人々は不満や不安を抱えていたのだろうなということがよく分かる。

  • 勉強になりました。

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著者プロフィール

1949年、新潟県生まれ。上智大学外国語学部中退。
1985年『海峡を越えたホームラン』で講談社ノンフィクション賞、1998年『「坊ちゃん」の時代』(共著)で手塚治虫文化賞、2001年『二葉亭四迷の明治四十一年』など明治以来の日本人の思想と行動原理を掘り下げた業績により司馬遼太郎賞、2003年『昭和が明るかった頃』で講談社エッセイ賞受賞。『ソウルの練習問題』『「ただの人」の人生』『中年シングル生活』『白樺たちの大正』『おじさんはなぜ時代小説が好きか』『汽車旅放浪記』『家族の昭和』『「解説」する文学』など著書多数。

「2015年 『子規、最後の八年』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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