死者たちの回廊: よみがえる死の舞踏 (平凡社ライブラリー こ 2-1)

著者 :
  • 平凡社
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本棚登録 : 44
感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582760828

作品紹介・あらすじ

うち続く戦乱、猖獗する黒死病、終末と新生の予感…。特異な死のイメージの起源と伝播を尋ねる旅は、黄昏の中世ヨーロッパとのはるかな時を隔てた対話、瑞々しい感性と大きな構想力を具えた歴史紀行の佳作。

感想・レビュー・書評

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  •  いきなり極私的なことを書きつけて申し訳ないが、個人的には修士論文の際、とてもお世話になった本。ボードレールの詩篇「死の舞踏」、「無能な修道僧」を読み解くための基礎知識を与えてくれた。
     ペストが蔓延した西欧中世に突如現れた「踊る骸骨=死の舞踏」の起源をめぐって書かれている本書が、ところで何故これほど人を落ち着かせてくれるのか。「腐乱した屍か、あるいは骸骨に近い状態の死者が、生きている者の手をとり、また肩に手をかけ、不気味な笑いを浮かべて墓地へといざなう姿を描いた」死の舞踏の、モラル・メッセージはこう言われる、「いかなる身分、職業であろうと、また老若男女を問わず、生きとし生ける者はすべて死を前にしては平等であり、遅かれ早かれ死にゆく運命にあることを物語っているのである」。この死を前にした緩やかな虚無感に苛まれることが安らぎの源なのではないだろうか。
     まずはDance macabreで検索して、その骨々ロックに酔いしれろ!?

  • 欧州中世史の資料として、当時の人々の死との付き合い方について何か発見があるかと思い読み始めた。表紙にも本文内にも骸骨がいっぱいでなかなか面白そうであった。

    医学が未発達だった当時は病気になることそのものが死を意味する。未知の世界は今よりきっと身近なものだったに違いない。詩や絵を通して理解しようとしていたのだろう。
    紀元4世紀頃のアレクサンドリアの聖マカリウス伝説によると、天国と地獄のいずれがより住みやすいのか、視察できたという。
    コンデの『三人の死者と三人の生者の賦』を基にした『三人の死者と三人の生者』はフランスに、ペトラルカの『凱旋』を基にした『死の勝利』はイタリアに、と地域による特徴がかなりはっきりしている。

    『死の舞踏』の図像の最も古い作例(1424年)があった聖イノサン墓地は市場となりレ・アールとなった。今となっては跡形もなく、そう考えると現在ショッピング・モールとなっているパリ市で一番粗雑な地域となってしまった姿が虚しい。

    この間ピサに行ってきたのにカンポ・サントのフレスゴ画を見逃していたのがショック。斜塔より見る価値があったはず。

    もう少し軽く読めると思ったのだが、著者の「死の舞踏」研究があまりに深すぎるせいか、だんだんついていけなくなる気がした。

  •  「死の舞踏」という美術のジャンルを初めて知った。

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著者プロフィール

國學院大學文学部教授/ネーデルラント美術史

「2021年 『天国と地獄、あるいは至福と奈落』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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