- Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
- / ISBN・EAN: 9784582766776
感想・レビュー・書評
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読みやすかった。大学一年生にはこの本を必修にしてほしい。今でも読む価値は十分にある。タイトルはタイトルとして、テーマは時勢により古くなるものではない。しかし展望については岩井先生少し甘かったのでは(というか歴史は繰り返されると言ってもグローバル経済と日本政府クソすぎない?)と思う。あるいは大企業正社員男子みたいなクラスを主に想定しているのかなぁ、そんなこともないはずだけど。面白く勉強にはなったけど自分の展望にどう役立てるかはちょっと…時間ができばまとめてから感想を書きたい。
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小林秀雄賞
著者:岩井克人(1947-、渋谷区、経済学) -
そもそも会社とはどのように誕生したのか、法人とは法律的にどのようなものであるのか、ありうるのかを考察し、これからの日本の会社と資本主義の形について考えます。
各章、感動しましたが(ふわっとしたイメージに形が与えられる感じです)、特に第四章の「法人論争と日本型資本主義」に衝撃を受けました。世間で当たり前のように運用されている「法人」という概念が、現代においても「名目的なものであるか」「実在するのか」という形而上学的な議論の争点になっているのが驚きでした。法人のあり方について多様な解釈があるからこそ、日本的な会社、米国的な会社がどちらも存在しうるのだ(どっちが正しいということはなく)ということが理解できます。 -
【目次】
目次 [005-014]
平凡社ライブラリー版へのあまえがき(二〇〇九年八月一二日 岩井克人) [015-021]
はじめに [022-031]
第一章 なぜいま、日本の会社はリストラをするのか 033
「リストラ」と「クビ切り」 033
日本経済の「失われた一○+α年」 034
バブルの崩壊と景気の低迷 036
リストラの三つの構造的要因 043
グローバル化 045
IT革命 049
戦後日本の金融の仕組み 054
金融革命 056
バブルが起こった本当の理由 059
金融革命とリストラとの逆説的な関係 063
日本経済の特徴は、会社のあり方にある 065
第二章 会社という不思議な存在 069
ヒトとモノ 069
企業と会社 072
法人とは何か 077
株式とは何か 080
日本語の株式について 083
株式会社の基本構造 085
法人の存在理由 088
法人の歴史的起源 093
株式会社の公共性 097
第三章 会社の仕組み 101
株主の有限責任制 101
企業の経営者 104
会社の経営者 106
信任について 111
コーポレート・ガバナンスと信任義務 114
株式オプションとアメリカ型コーポレート・ガバナンス 120
エンロン事件とアメリカ型コーポレート・ガバナンスの破綻 123
コーポレート・ガバナンスの実際(一)株主代表訴訟 128
コーポレート・ガバナンスの実際(二)取締役会と監査役 130
コーポレート・ガバナンスの実際(三)株式市場・メインバンク・従業員・官庁 134
会社の種類 138
従業員は、会社の外部の存在である 140
第四章 法人論争と日本型資本主義 143
日本の会社の特殊性と普遍性 143
法人名目説と法人実在説 146
会社を純粋にモノにする方法 151
会社乗っ取りの仕組承 155
持ち株会社 161
ピラミッド型支配構造と財閥 164
会社を純粋にヒトにする方法 169
株式の持ち合いと日本型会社システム 175
第五章 日本型資本主義とサラリーマン 179
会社を背負って立つ日本のサラリーマン 179
組織特殊的な人的資産について 182
組織特殊的な人的投資をする日本のサラリーマン 187
古典的企業と「ホールド・アップ」問題 189
ヒトとしての会社が「ホールド・アップ問題」を解決する 193
サラリーマンの「会社人間」としての貢献度 194
所有と経営の分離のベネフィットとコスト 197
第六章 日本型資本主義の起源 201
日本の会社はどうして日本型の会社となったか 201
第二次大戦と統制経済 202
経済民主化と財閥解体 206
財閥における総有制と経営の自律性 208
「家」制度と法人 210
終身雇用制 216
年功賃金制度 219
日本的雇用システムの原型 221
澁澤榮一と会社制度 223
近代における日本的雇用システムの系譜 225
会社別組合の系譜 228
第七章 資本主義とは何か 233
資本主義とは何か 233
商業資本主義、産業資本主義、ポスト産業資本主義 234
IT革命、グローバル化、金融革命 239
金融革命とおカネの力 246
日本における産業資本主義からポスト産業資本主義への移行 247
アメリカのポスト産業資本主義は六○年代から始まっている 251
後期産業資本主義と組織特殊的人的資本 254
第八章 デ・ファクト・スタンダードとコア・コンピタンス 261
二一世紀における会社組織 261
ポスト産業資本主義におけるモノや情報や金融の標準化 263
オープン・アーキテクト化「にする」ことと「である」こと 268
大きくなることと小さくなること 273
大きくなることの利益 275
デ・ファクト・スタンダード 279
ゲイリー・キルドールとビル・ゲイツ 281
コア・コンピタンス 286
小さくなることの利益 288
コア・コンピタンスと企業ネットワーク 292
第九章 ポスト産業資本主義における会社のあり方 297
二一世紀は株主主権の時代か? 297
有形資産から知識資産へ 300
おカネとヒト 303
「サーチ&サーチ」社対サーチ&サーチ 305
株主主権論の敗北 309
古典的企業の復活 311
シリコン・ヴァレー・モデル 313
知的財産権について 318
ポスト産業資本主義における企業の存在理由 320
黄金の手錠をかけること 323
個性的な企業文化を築くこと 324
ポスト産業資本主義時代における法人化の意義 329
ポスト産業資本主義的企業における組織デザイン 333
従業員株式オプション制度について 337
日本的経営のパラドックス 340
NPOについて 342
第十章 会社で働くということ 351
起業家の条件 351
ポスト産業資本主義において会社で働くということ 354
会社の新陳代謝と起業意欲 360
あとがき(二〇〇三年一月二五日 岩井克人) [365-369]
平凡社ライブラリー版へのあとがき(二〇〇九年八月一二日 岩井克人) [370-373] -
インタビューを元にしているので読みやすい。
分析は的確。
デフレ脱却の策が失敗であるのは間違いないが,経済学者として正しい策は提示できないのか? -
会社の歴史的な経緯、現在の構造分析から、今後会社がどうなるかまで示唆している点が素晴らしい。将来像についても、会社は将来独立をするための修行の場と考えるという考え方が良いと思った。そうすると社内政治はさしずめ将来クライアントとやりとりをする際のコミュニケーション能力を磨く場ということかな。
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経済学者・岩井克人が書く易しい会社法人入門書のような一冊。産業革命以降の近代社会の黎明期から21世紀までを貫く資本主義のあり方と、その中で会社という法人がどういう立ち回りをしてきたか。バブル崩壊で低迷する日本的な「ヒト」的な会社共同体も捨てたもんじゃない。だって90年代敵対的買収ばかり行ってきたアメリカ的な「モノ」的な会社もエンロンショックで崩壊したじゃない。21世紀的な労働のあり方に、日本的な会社法人は実に有益ですよという、現代ニッポンの若者を心底励ましてくれる良書。とにかく難しい内容が分かりやすい!
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会社は株主のものなのか。会社が利益を上げることで、会社のためにお金を提供してくれた株主に恩返しをすることができます。株主あっての会社なのだから、なんとしても利益を上げなければいけない。利益が出れば、株価も上昇します。そうすれば株主も喜びます。また株を買ってくれる人が増えます。会社にとっても株主にとっても言うことなしです。しかし、経営者が株主ばかりを見ていて、従業員はついてくるのだろうか。ということで、日本の従来型の会社が見直されています。年功序列・終身雇用と従業員にとても優しい、家族的な会社。その中で高度な技術が伝承されたりもします。どちらが良いのか、もっと別の形があるのか、それは今後の世の中の様子を見ないと分かりませんが、環境問題をはじめ会社の社会的責任が問われている現在、会社は社会のものでなければならないようです。本書は前著「会社はこれからどうなるのか」の続編として出版されました。会社=法人企業の本当の意味は実に難解なのですが、本書を読めばその雰囲気が分かってもらえるでしょう。最後に収録されている、糸井重里との対談だけでも値打ちはあります。経済学を学ぶ意味が少し分かったような気がします。