会社はこれからどうなるのか (平凡社ライブラリー)

著者 :
  • 平凡社
4.07
  • (38)
  • (48)
  • (22)
  • (4)
  • (0)
本棚登録 : 529
感想 : 52
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582766776

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 読みやすかった。大学一年生にはこの本を必修にしてほしい。今でも読む価値は十分にある。タイトルはタイトルとして、テーマは時勢により古くなるものではない。しかし展望については岩井先生少し甘かったのでは(というか歴史は繰り返されると言ってもグローバル経済と日本政府クソすぎない?)と思う。あるいは大企業正社員男子みたいなクラスを主に想定しているのかなぁ、そんなこともないはずだけど。面白く勉強にはなったけど自分の展望にどう役立てるかはちょっと…時間ができばまとめてから感想を書きたい。

  • とても示唆に富む一冊。

    会社とは法人である。すなわち、人であり、モノであるという二面性を持っている。株主主権のイメージが強すぎるのは、「会社=モノ」の側面が強く出すぎている。実際には、株主が所有する「モノとしての会社」は、株主に指名され、「モノとしての会社」から委任された経営者が運営している。そこには、「人としての会社」という忘れてはならない側面がある。

    会社が稼ぐためには、他社との差異化が必要。そのために必要なものが、「設備・資産」⇒「アイデア」に変わってきている。そのため、「アイデア」や「イノベーション」の重要性が大きくなる。そして、それらに向かって、金が動き回る。将来的には、規模/範囲の経済を活かした非常に少数のグローバル企業と、非常に多数かつ小規模でアイデアを継続的に生み出せる企業に二分化されていく。

    会社で働く人たちにとって必要なことも変わってくる。長く働くことを前提にした「組織特殊的な能力」の重要性が下がり、「汎用的(ポータブル)な能力」の必要性が高まる。両者のバランスするポイントが変わってくる。

  • 小林秀雄賞
    著者:岩井克人(1947-、渋谷区、経済学)

  • そもそも会社とはどのように誕生したのか、法人とは法律的にどのようなものであるのか、ありうるのかを考察し、これからの日本の会社と資本主義の形について考えます。

    各章、感動しましたが(ふわっとしたイメージに形が与えられる感じです)、特に第四章の「法人論争と日本型資本主義」に衝撃を受けました。世間で当たり前のように運用されている「法人」という概念が、現代においても「名目的なものであるか」「実在するのか」という形而上学的な議論の争点になっているのが驚きでした。法人のあり方について多様な解釈があるからこそ、日本的な会社、米国的な会社がどちらも存在しうるのだ(どっちが正しいということはなく)ということが理解できます。

  • 【目次】
    目次 [005-014]
    平凡社ライブラリー版へのあまえがき(二〇〇九年八月一二日 岩井克人) [015-021]
    はじめに [022-031]

    第一章 なぜいま、日本の会社はリストラをするのか 033
    「リストラ」と「クビ切り」 033
    日本経済の「失われた一○+α年」 034
    バブルの崩壊と景気の低迷 036
    リストラの三つの構造的要因 043
    グローバル化 045
    IT革命 049
    戦後日本の金融の仕組み 054
    金融革命 056
    バブルが起こった本当の理由 059
    金融革命とリストラとの逆説的な関係 063
    日本経済の特徴は、会社のあり方にある 065

    第二章 会社という不思議な存在 069
    ヒトとモノ 069
    企業と会社 072
    法人とは何か 077
    株式とは何か 080
    日本語の株式について 083
    株式会社の基本構造 085
    法人の存在理由 088
    法人の歴史的起源 093
    株式会社の公共性 097

    第三章 会社の仕組み 101
    株主の有限責任制 101
    企業の経営者 104
    会社の経営者 106
    信任について 111
    コーポレート・ガバナンスと信任義務 114
    株式オプションとアメリカ型コーポレート・ガバナンス 120
    エンロン事件とアメリカ型コーポレート・ガバナンスの破綻 123
    コーポレート・ガバナンスの実際(一)株主代表訴訟 128
    コーポレート・ガバナンスの実際(二)取締役会と監査役 130
    コーポレート・ガバナンスの実際(三)株式市場・メインバンク・従業員・官庁 134
    会社の種類 138
    従業員は、会社の外部の存在である 140

    第四章 法人論争と日本型資本主義 143
    日本の会社の特殊性と普遍性 143
    法人名目説と法人実在説 146
    会社を純粋にモノにする方法 151
    会社乗っ取りの仕組承 155
    持ち株会社 161
    ピラミッド型支配構造と財閥 164
    会社を純粋にヒトにする方法 169
    株式の持ち合いと日本型会社システム 175

    第五章 日本型資本主義とサラリーマン 179
    会社を背負って立つ日本のサラリーマン 179
    組織特殊的な人的資産について 182
    組織特殊的な人的投資をする日本のサラリーマン 187
    古典的企業と「ホールド・アップ」問題 189
    ヒトとしての会社が「ホールド・アップ問題」を解決する 193
    サラリーマンの「会社人間」としての貢献度 194
    所有と経営の分離のベネフィットとコスト 197

    第六章 日本型資本主義の起源 201
    日本の会社はどうして日本型の会社となったか 201
    第二次大戦と統制経済 202
    経済民主化と財閥解体 206
    財閥における総有制と経営の自律性 208
    「家」制度と法人 210
    終身雇用制 216
    年功賃金制度 219
    日本的雇用システムの原型 221
    澁澤榮一と会社制度 223
    近代における日本的雇用システムの系譜 225
    会社別組合の系譜 228

    第七章 資本主義とは何か 233
    資本主義とは何か 233
    商業資本主義、産業資本主義、ポスト産業資本主義 234
    IT革命、グローバル化、金融革命 239
    金融革命とおカネの力 246
    日本における産業資本主義からポスト産業資本主義への移行 247
    アメリカのポスト産業資本主義は六○年代から始まっている 251
    後期産業資本主義と組織特殊的人的資本 254

    第八章 デ・ファクト・スタンダードとコア・コンピタンス 261
    二一世紀における会社組織 261
    ポスト産業資本主義におけるモノや情報や金融の標準化 263
    オープン・アーキテクト化「にする」ことと「である」こと 268
    大きくなることと小さくなること 273
    大きくなることの利益 275
    デ・ファクト・スタンダード 279
    ゲイリー・キルドールとビル・ゲイツ 281
    コア・コンピタンス 286
    小さくなることの利益 288
    コア・コンピタンスと企業ネットワーク 292

    第九章 ポスト産業資本主義における会社のあり方 297
    二一世紀は株主主権の時代か? 297
    有形資産から知識資産へ  300
    おカネとヒト 303
    「サーチ&サーチ」社対サーチ&サーチ 305
    株主主権論の敗北 309
    古典的企業の復活 311
    シリコン・ヴァレー・モデル 313
    知的財産権について 318
    ポスト産業資本主義における企業の存在理由 320
    黄金の手錠をかけること 323
    個性的な企業文化を築くこと 324
    ポスト産業資本主義時代における法人化の意義 329
    ポスト産業資本主義的企業における組織デザイン 333
    従業員株式オプション制度について 337
    日本的経営のパラドックス 340
    NPOについて 342

    第十章 会社で働くということ 351
    起業家の条件 351
    ポスト産業資本主義において会社で働くということ 354
    会社の新陳代謝と起業意欲 360

    あとがき(二〇〇三年一月二五日 岩井克人) [365-369]
    平凡社ライブラリー版へのあとがき(二〇〇九年八月一二日 岩井克人) [370-373]

  • コアコンピタンスとは、たえず変化していく環境の中で生産現場の生産技術や開発部門の製品開発力や経営陣の経営手腕を結集して、市場を驚かす差異性をもった製品を効率的かつ迅速的に作り続けていくことのできる、組織全体の能力

    単純に得意な分野のことだと考えていたが、いつそれを越える技術が出てくるかわからないので、それを生み出す組織、力のことを指すという言葉に目から鱗。

  • インタビューを元にしているので読みやすい。
    分析は的確。
    デフレ脱却の策が失敗であるのは間違いないが,経済学者として正しい策は提示できないのか?

  • 会社の歴史的な経緯、現在の構造分析から、今後会社がどうなるかまで示唆している点が素晴らしい。将来像についても、会社は将来独立をするための修行の場と考えるという考え方が良いと思った。そうすると社内政治はさしずめ将来クライアントとやりとりをする際のコミュニケーション能力を磨く場ということかな。

  • 経済学者・岩井克人が書く易しい会社法人入門書のような一冊。産業革命以降の近代社会の黎明期から21世紀までを貫く資本主義のあり方と、その中で会社という法人がどういう立ち回りをしてきたか。バブル崩壊で低迷する日本的な「ヒト」的な会社共同体も捨てたもんじゃない。だって90年代敵対的買収ばかり行ってきたアメリカ的な「モノ」的な会社もエンロンショックで崩壊したじゃない。21世紀的な労働のあり方に、日本的な会社法人は実に有益ですよという、現代ニッポンの若者を心底励ましてくれる良書。とにかく難しい内容が分かりやすい!

  • 会社は株主のものなのか。会社が利益を上げることで、会社のためにお金を提供してくれた株主に恩返しをすることができます。株主あっての会社なのだから、なんとしても利益を上げなければいけない。利益が出れば、株価も上昇します。そうすれば株主も喜びます。また株を買ってくれる人が増えます。会社にとっても株主にとっても言うことなしです。しかし、経営者が株主ばかりを見ていて、従業員はついてくるのだろうか。ということで、日本の従来型の会社が見直されています。年功序列・終身雇用と従業員にとても優しい、家族的な会社。その中で高度な技術が伝承されたりもします。どちらが良いのか、もっと別の形があるのか、それは今後の世の中の様子を見ないと分かりませんが、環境問題をはじめ会社の社会的責任が問われている現在、会社は社会のものでなければならないようです。本書は前著「会社はこれからどうなるのか」の続編として出版されました。会社=法人企業の本当の意味は実に難解なのですが、本書を読めばその雰囲気が分かってもらえるでしょう。最後に収録されている、糸井重里との対談だけでも値打ちはあります。経済学を学ぶ意味が少し分かったような気がします。

全52件中 11 - 20件を表示

著者プロフィール

国際基督教大学客員教授、東京財団上席研究員
東京大学卒業、マサチューセッツ工科大学経済学博士(Ph.d.)。イェール大学経済学部助教授、プリンストン大学客員準教授、ペンシルバニア大学客員教授、東京大学経済学部教授など歴任。2007年4月紫綬褒章を受章。

「2021年 『経済学の宇宙』 で使われていた紹介文から引用しています。」

岩井克人の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
ヴィクトール・E...
ジェームズ アレ...
村上 春樹
村上 春樹
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×