豊乳肥臀 (上)

著者 :
  • 平凡社
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感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582829389

感想・レビュー・書評

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  • 一介の農民の視線から見た後日大、共産党時代(大躍進時代)市場経済時代を描いた作品。高密県東北号という地方の一代記であるがマルケスやフォークナー的な要素も持っている。上官魯氏などの母親の強さは、 100年の孤独のウルスラや千年の愉楽のオリュウノオバも、思い起こさせ、主人公はむしろしたたかな母性なのではないかとも思わせる。

  • 中国のノーベル賞作家はどのような小説を書くのだろうかと思い、読んでみることに。内容理解できないかなあ?第一章「 日本鬼子がやってきた」までを何とか読んでみました。わずか数時間の時間経過を50頁を割いて描写されている。一つ一つの描写がとても長いのと普段目にしない漢字や言い回しが随所に登場するため、一章を読み終えるとだけでもはやくも相当の疲労感に襲われる!何か受験の長文を延々読んでいるような、そんな疲労感。単に国語力がないだけなのでしょう(笑)

  • 『豊乳肥臀』を通読したあと、いちばん強く感じたのは文のここかしこに醸し出しているの生命の息だと言えよう。まず、題目の「豊乳肥臀」は女性の身体の曲線を思わせ、「妊娠」や「出産」など新しい命の始まりを連想させてくれた。実際に、主人公兼語り手の上官金童は「恋乳症」とでも名付けような、母や多数の姉たちをはじめ、巡り合う女性群の乳房に病的な執着を持ち、またしばしば乳房によって救われる。実際に、小説全体を通して見ると、登場してくる乳房も色にせよ、形にせよ実にさまざまである。

    乳房は題名になるキーワードでありながら、小説全体を貫く主題でもある。そこから芽生えた性行為及びその描写は中国近現代史の変遷を象徴的にかつ鮮明に語ってくれた。性は『豊乳肥臀』の重要テーマであることをかつて莫言も告白していた。小説のなかでは、性は男女の間に起こりうるあらゆる情愛関係(恋愛・婚姻・強姦・不倫など)の形を取って表れた。時間の関係で、性描写に対する分析はここで割愛し(一言だけ言えば、莫言と村上春樹は面白い対比になる)、ただその象徴意味を見てみる。例えば、母上官鲁氏+上官家→「不孝有三,无后为大 /重男輕女 の傳宗接代 」という封建思想との葛藤、上官来弟+沙月亮(日本軍の協力軍の司令)→日中の間の葛藤、上官招弟+司馬庫→国民党との葛藤、上官盼弟+鲁立人→共産党との葛藤、上官念弟+バビット→米中の間の葛藤などなど。主人公上官金童の乳房に対する細かな観察を通し、読者も彼と同様に、いつも「玉石を彫り上げたような、艶やかで柔らかい 」乳房は誰かに「ほしいままに掴まれ、触られ、もみしだかれる」たびに、「心が痛む」。なぜならば、概念的な乳房は上官金童の故郷「高密東北郷」でありながら、読者たちの蹂躪された祖国でもあるから。

  • 作者の莫言さんが来名し、懇談の機会が予定され読み始めた。莫言さんは「中国でノーベル賞に最も近い作家」との書評もある。
    抗日戦争・国共内戦・大躍進政策・文化大革命・改革開放政策、と目まぐるしく変わる社会の中で、主人公「金童」を取り巻く生活にはめまいを覚えるくらい。

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著者プロフィール

中国・山東省高密県出身。小学校中退後、1976年に人民解放軍に入隊し、執筆活動を開始。『赤い高粱(コーリャン)』(1987年)が映画化され世界的な注目を集める。「魔術的リアリズム」の手法で中国農村を描く作品が多く、代表作に『酒国』『豊乳肥臀』『白檀の刑』など。2012年10月、ノーベル文学賞を受賞。

「2013年 『変』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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