卵一個ぶんのお祝い。 (東京日記)

著者 :
  • 平凡社
3.63
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感想 : 164
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  • Amazon.co.jp ・本 (151ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582832822

感想・レビュー・書評

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  • 言葉は少ないのに、自然と情景が流れていくような、ずっと読んでいたくなる文章。フラットで等身大で、まるで友人の日記を読ませてもらっているかのような感覚になる。(こんな文章の上手な友人はそうそういないだろうけど。)
    本の一節にこんなシーンがある。部屋の鴨居にTシャツをかけたハンガーを3つ吊るし、その下を通る。何気ない誰もが見たことのあるなんの変哲もない日常を、著者の目には、『3人が揺れて笑っている』ように見えている。誰もが見ている世界を、ほんの少しの語句と感性の差で薄くきらきらしたフィルターがかかったような世界に変えてしまう、そんな魅力がここには詰まっている。

  • 夢心地のふわふわした中、
    少しだけ鼻がつんとしたり
    微かに寂しくなったり。
    なんか好きで、川上さんワールドを
    たゆたいたくなる。

  • 自然で不自然で、色んなものを、みて、居る と思いました。良かったです。きみょう。


  • もくじに並ぶ言葉が愉快で、どんな内容かと想像してから読む。

    パジャマの上に服を着て出かけて、知り合いにあわないかどきどきしたり、
    お風呂でスイカの種を飛ばしたり、
    世界征服できる可能性を占ってもらう友達がでてきたり。

    「るきさん」や「架空OL日記」が大好きなのでたまらなかった。


    毎年3月がよいな。
    「また、来年ね」と手を振ってくれる美容師さん。
    黒い傘が桃色になる雨の日。
    「桜が咲いてますよ」という電話。

    春は初夏に、カロライナ・ジャスミンの香りに移っていく。

    にがうりをくる日もくる日も食べ
    「夏はいつまで続くのだろう。」
    というが季節はいつのまにか変わり、また次の年の桜が咲く。

    「あら、よくってよ。」が流行した明治二十四年は遠くなっていく。


    「一度に一つのことしか考えられない質なのだ。」


    なんにも起こらない日常。しかひ主人公はまぎれもなく川上さん自身である。

    自分は最近、推しとか世間の人のことばかり気にしているな。
    推しの頑張りを応援して頑張ってる気になってるかもなと思う。

    別に頑張らなくていいし、愛し愛されとか、自己実現とか将来の展望とか、
    そういうのがこの世界観の前には白くぼやけていくよう。

    雨の日曜日にぴったりのしっとりした読後感でありました。

    ーーー

    ・「山の上ホテル」でソルティードッグを頼むのは村上春樹作品オマージュだろうか?
    ・3人で傘もささずに歩いてる〜の句がすごく刺さったので、加藤千恵歌集を読みたい

  • 2020/1/12(日曜日)

  • 「本書は、本当日記です。少なくとも、五分の四くらいは、ほんとうです。ふつうに生活していても、けっこう妙なことが起こるものだなあと、読み返しながら、なつかしく思い出しました。」(あとがきより)
    本書は、川上弘美さんが、雑誌『東京人』にて連載中の『東京日記』の単行本化です(2001年6月号~2004年5月号分を収録。 )
    著者ならではの、エッセイとも小説ともつかない、おかしみとシュールさの入り混じった世界が広がる本書は、川上的世界のエッセンスがたっぷりつまった、ファンの期待にこたえる一冊です。

    まるで創作のような、不思議さがぼんやり霞がかっているような出来事が書いてあるが、あとがきにもあるように、5分の4くらいは事実らしい。
    ふわふわと柔らかくて、どこか寂しさも漂う日常。おとぎ話の中にいるみたいで、少し癒やされる。

  • 一文を切り取るだけですてきなフレーズになる日記。

  • こんな風に暮らしたい。

  • 東京のローカル誌に連載された、川上弘美さんの不思議日常日記。
    五分の四くらいが本当だそうで、残り五分の一の作り事エッセンスが、この日記の妙だろう。
    一生懸命なようにもとぼけているようにも、狙っているようにも真面目なようにも思える、こんな女性が身近にいたら、間違いなくノックアウトされそう。

  • 川上弘美さんの本当日記。
    食べものがたくさんでてくる。食べものがあまりにもおいしそうだったからある日の夕飯が同じものになりました。

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著者プロフィール

作家。
1958年東京生まれ。1994年「神様」で第1回パスカル短編文学新人賞を受賞しデビュー。この文学賞に応募したパソコン通信仲間に誘われ俳句をつくり始める。句集に『機嫌のいい犬』。小説「蛇を踏む」(芥川賞)『神様』(紫式部文学賞、Bunkamuraドゥマゴ文学賞)『溺レる』(伊藤整文学賞、女流文学賞)『センセイの鞄』(谷崎潤一郎賞)『真鶴』(芸術選奨文部科学大臣賞)『水声』(読売文学賞)『大きな鳥にさらわれないよう』(泉鏡花賞)などのほか著書多数。2019年紫綬褒章を受章。

「2020年 『わたしの好きな季語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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