「平和構築」とは何か―紛争地域の再生のために (平凡社新書 178)

著者 :
  • 平凡社
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582851786

作品紹介・あらすじ

いまだ根強い民族間の憎悪と、冷戦後の複雑なパワーバランスの中で、紛争地域の人びとは、生存すら脅かされている。NGO活動に従事してきた政治学者が、紛争後社会の国際協力のあり方を提唱する。「祈る平和」から「創り上げる平和」へ。紛争地域で私たちは何ができるのか。

感想・レビュー・書評

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  • 平和構築の現状について、NGOの活躍を中心に、国際機関の活動もふまえてコンパクトにまとめた入門新書である。

    紛争の予防、解決、再発防止の流れのなかで、どのようなアクターが関わっているかを、
    主に筆者の選挙監視団への参加経験や、ゼミ学生を連れての研修の様子を具体例として、解説している。

    包括的な書ではないが、現場にいる気持ちになって読めるので、入門書として良いと思う。


    この本を読んで気づかされた事。

    平和構築には、
    ICRCなどの国際NGO、
    WFPなどの諸国際機関、
    多国籍軍やPKF、
    選挙監視団などやPKO、
    JICAなどの政府国際援助機関、
    などのアクターが関わっているということは知っていたが、
    それら外からきたアクターだけではなく、紛争地の中に存在するアクターの役割が非常に重要であるという事実に気づかされた。

    本書の第4章では、平和構築の基本書を著したというジョン・ポール・レデラックの提示したメソッドを使って、紛争地に存在するアクターの役割について解説している。

    それによると、平和構築に重要な役割をはたすアクターは三つの階層に分けられる。
    ・まずは、大統領や反政府組織の長などのトップリーダー
    ・次に最も重要な、宗教的リーダーや人道組織のリーダーなどの各セクターの尊敬を集めている人々
    ・さらに地元の会議やNGOなどの草の根リーダー
    これらのリーダーがどのような役割を果たすかによって、平和構築の結果が大きく左右されるという点に驚かされた。
    また、紛争解決には、外からきた組織がこれらのリーダーとうまく協力し合う事が重要になると感じた。

    平和構築の主体はどこまでも、紛争当事者であり、紛争当事国の国民である、といわれることの意味の理解が少し深まった気がする。

  • ▼「平和構築」の役割は、まず紛争後の社会を平和的に再建することだ。これを、「ポスト・コンフリクト・ピース・ビルディング」(Post Conflict Peace Building)という。さらには、これら国家が紛争社会に戻らないように紛争予防に取り組むことも含まれ、平和構築の扱う範囲は実に広い(本書「あとがき」より)。
    ▼「憎しみの連鎖は止めなければならない。」そう言うことは簡単だが、際限のない暴力を体感してしまった彼(女)らに、そう言い放つことは酷であろう。
    ▼なぜ紛争がおこってしまったのか。それを理解しようとしなければ、結局また同じ過ちが繰り返されてしまうに違いない。だが、「真実」を知るために、触れたくない過去を振り返りることもまた残酷なことなのかもしれない。
    ▼どのようなアプローチで、紛争後の平和を構築していくべきか、冷戦の終わっていないアジア地域に生きる私たちにとって、未だ終焉の見えていない課題である。

  • 積極的平和、消極的平和。
    平和、について考えさせられる。

    平和平和って軽々しく発言しているけれど、世界の状況は非常に複雑で、日本とは訳が違う。

    終章にて、一国民国家の努力で解決できるものではない。一部紛争国の固有の問題でもなく、地球に住むすべての人間の安全保障に対する脅威と認識すべきと述べられていて、印象的だった。

    まず認識すること、そして行動すること。

  • 東南アジアの平和構築。紛争予防は新しい概念で勉強になるやっ!

  • 貧困、差別、絶望、無視。
    負の連鎖と、それを断ち切るために求められる国際協力の在り方とは何か?

    講義の教科書ということもあり、簡潔に要所がまとめられているので、わかりやすく手軽に読める。
    価格は¥777、と、何かいいこと起きそうな数字。

  • 大学の講義の教科書として購入。
    教科書に指定されるだけあって、入門書的な内容。
    こういった分野に興味がある人には、とっかかりとして丁度いいかも。

  • 大学の教授が書いた本。

    授業の教科書だったが、基本的に知識を詰め込むことに終始している。

    授業と変わらない。

    紛争の現状とか、そういうことを知りたい方にはお勧めだが、

    特に新しい考え方が自分の中に芽生えるわけではない。

    そういう意味で☆は3こ

  • 戦争、難民でトラウマになっている人が世界にはたくさんいることを忘れてはいけない。民族同士で争うことの恐ろしさを感じる。

  • 「祈る平和」から「創る平和」へ。
    紛争が起こっている地域で一体何ができるのかを考えている本です。

    紛争社会の現状、紛争後の社会の平和構築の意義、そして今起こっている紛争の歴史的な背景をたどり、平和構築の実践とその手法・仕組みを詳しく書き手NGOの活動、最後には予防外交の考え方と国際社会の関わり方市民参加の重要性など盛り沢山な内容になっています。
    ですが、あまり難しく肩肘張らずに読めるのは著者が教員生活を経て人に教える方法をマスターしていてどう話せば、どう書けばより伝わるか、理解できるかを考えて書いているからでしょうか。

    一番よかったのは平和構築の実践とその手法・仕組みでしょうか。
    著名なリーダー間での合意が必要というだけでなく、大多数の草の根のリーダーや地元の人々の和解、協力だけでなく実は中間の各セクターで尊敬されているリーダーであるとか、民族的・宗教的なリーダーの関与がとても重要だという事実です。

    トップダウンでもボトムアップでもない中間レベルからの波及効果というのはここへのアクセスから見ても容易である点など多数の理由が掲げられてましたが納得する点が非常に多かったと思います。

    全体を通しても国際協力に興味があるような初心者から専門的に研究している人まで
    誰が読んでもある程度の満足は得られると思います。

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著者プロフィール

北海道生まれ。大学時代にバックパッカーを経験し、米国オハイオ大学大学院東南アジア研究科を修了。その後、定時制高校教諭時代に東京都立大学大学院博士課程に在籍。10年間の高校教員を経て、1995年から大学教員になる。独立直後の東ティモール国立大学客員研究員、台湾国立政治大学客員教授、現在はベトナム国家大学ハノイ校日越大学日本学プログラム共同学科長を兼務。社会活動として、開発や平和構築系の国際NGO代表、国連UNHCR協会理事、JICA専門家、外務省ODA評価主任や、アジアの紛争後国家の国際選挙監視員にも多数参加。現在、日本東ティモール協会副会長を務め、東ティモールの国家建設を支援。2009年4月より早稲田大学社会科学総合学術院教授。神戸大学博士(政治学)。
専門は、国際関係論、国際協力、平和構築、東南アジア政治。
主要著書として、『平和構築のトリロジー-民主化・発展・平和を再考する』(明石書店、2021年)、『新しい国際協力論-グローバル・イシューに立ち向かう【第3版】』(共編著、明石書店、2023年)など、その他多数。

「2024年 『国際協力入門 平和な世界のつくりかた』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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