私は若者が嫌いだ! (ベスト新書 207)

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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784584122075

感想・レビュー・書評

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  • 精神学者であり、評論家でもある著者がこの本で指摘する「若者」というのは、主に「ゆとり教育」にどっぷりハマった1987~1996年生まれを中心とする人たち。社会において「お客様意識」の抜けない若者たちは自分の事しか考えられなくなっており、簡単に傷ついたりすぐにキレたりして周囲と隔絶してしまう。経済や教育の格差が今の若者を生んだという社会学的な見地と、新型うつ病や通り魔犯罪のような心理学的な見地から、彼ら・彼女らの不可解な行動を分析する。タイトルに「嫌いだ!」とあるように、けっこう厳しい言葉を浴びせているが、本書を通して感じられるのはむしろ今の若者たちを良い方向に導きたいという応援の気持ち。本人が「バッシング覚悟で書いた」と言うように、嫌われても言わずにはおれない人生の先輩からの叱咤激励と受け止めよう。

  • 格差社会というタームが声高に語られるようになってからも積極的に若者擁護論を展開してきた"新人類"代表の精神科医による「若者への戦闘宣言」。

    プラトンの「最近の若者は…」と言う言葉が示しているように、人類は常に若年層を理解を超えた手に余る者として扱い嘆いてきた。

    本書を著者が挑発しているように"ババァの戯言"と片付けてしまうのは簡単だ。

    ITの革新によって誰もが自分の意見を世に公開できるようになった。
    それと平行して世界をアメリカ型資本主義=グローバリズムが覆い、金本位主義ならぬ金が市場であるというムードが世界のモードになっていった。

    産業革命以来の価値観の転換が目まぐるしく起こったことによって、常に世にある世代格差の溝も深くなったのではないか。

    若年層がなっていないと嘆くのもそうだが、それ以前に大人の不在が続いたことによってこの状況はもたらされている。

  •  著者は必ずしもヘイト(憎悪)している訳ではない。「時代という舞台の一番前にいる」とされる精神患者の事例を前に、どう考えても理解できない最近の印象を語るという。
     そこにはすぐ根を上げて逃げ、キレて甘え開き直る姿、他人に厳しく、すぐ傷つきやすい若者像がある。
     背景を、経済や教育の格差の拡大による弱さと推察し、ゆとり教育で学力向上したフィンランドや、フランスの若年貧困層との比較も示される。新型うつの増加や無差別殺人、ネット社会で増幅される若者の弱さについても考察する。
     将来を見込む時間感覚、他人の痛みへの想像力欠如? 自分が歳を取ったせい? 著者の逡巡は続くのである。

  • 爽快なタイトルをみて思わず手に取ってしまった本。

    若者の立場から若者論を語ってきた精神科医香山リカ先生。
    この本では、若者から一歩はなれ、若者の「得体の知れない弱さ」が何に基づくものなのかを分析し、それに対して大人は社会はいったい何ができるのか、という処方箋を呈示する。

    ちなみに、著者が嫌いな「若者」とは
    1)すぐ音を上げて逃げる若者
    2)居場所がない、とさまよいすぎる若者
    3)「キレた」「落ちた」「真っ白になった」といえば許されると思っている若者
    4)大人を信頼しすぎる若者
    5)大人に甘えすぎる若者
    6)学力がない、知識がないのに開き直っている若者
    7)自信がありすぎたり、なさすぎたりする若者
    8)自分のことしか考えられない若者
    9)簡単に傷つきすぎる若者

    よくもここまで言えたなぁという内容。
    納得いく部分もあれば、本論からずれてしまっている内容までさまざま。
    若者のネット利用似ついては偏見もあるのかも知れないなと、古谷経衡(著)『若者は本当に右傾化しているのか』を思い出した。

    ----------------
    【内容(「BOOK」データベースより)】
    ネトウヨ、弱者いじめ、シュガー社員、うつ病セレブ、誰でも殺人…自己責任か、社会の犠牲者か。
    ————————
    【著者略歴 (amazonより)】
    香山リカ(かやま りか)
    1960年、北海道生まれ。東京医科大学卒業。精神科医。立教大学現代心理学部教授。豊富な臨床経験を活かし、現代人の心の問題のほか、政治・社会評論、サブカルチャー批評など幅広いジャンルで活躍する。『知らずに他人を傷つける人たち』『おとなの男の心理学』(ベスト新書)、『親子という病』『なぜ日本人は劣化したか』(講談社現代新書)、『「私はうつ」と言いたがる人たち』(PHP新書)、『キレる大人はなぜ増えた』(朝日新書)、『スピリチュアルにハマる人、ハマらない人』『イヌネコにしか心を開けない人たち』(幻冬舎新書)、『いまどきの「常識」』(岩波新書)など著書多数。
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    【目次】
    第1章 経済格差が生んだ若者の弱さ
    第2章 教育格差が生んだ若者の弱さ
    第3章 弱い若者を襲う新型うつ病
    第4章 「誰でもよかった」殺人と気遣い型の親殺し
    第5章 ネット社会で増幅される若者の弱さと甘さ
    第6章 若者はなぜ想像力を失ったのか
    ————————

  • 新型うつなどもとりあげられる。経済格差や教育格差で生まれる若者の弱さを臨床経験からあぶりだしていく。

  • あるある的な感想。ちょっと読んでいて疲れるけれどなるほどとは納得する。読後感はあまりよくないし、建設的な内容ではないと思うけれど、日頃多くの患者さん、若者に接している筆者ならではの本。

  • 香山リカなんで、読んでみた。それほど新鮮味とかはないが、バランス良く、わかりやすい。

  • 若者の味方だと思いきやいきなり突き放してきました。ただ中身はそんな辛辣な内容ではなかったです。さすが香山さん。

  • 無理してバブリーな生活を続ける人、ケータイとコンビニの空間に引きこもる人、競争と自己責任の世界でかろうじて糊口をしのいでいる人。個々人それぞれで、社会はチリヂリになったようにみえます。(p110) http://www.yobouigaku-kanagawa.or.jp/kenkana/443-2.htm 印象に残ったのはここかな(著者の意見ではなく引用だけど)。新書にありがちなキャッチーな題名への批判も多いが、内容的には概ね納得できる。ひとことで言えば、「文句言う前に努力しろよ」って事なんだけど、そう言われると反発しちゃう人も居るのかな?と。若者に限らずね。

  • いわゆる「最近の若者」に

    ・精神的に傷つきやすい
    ・プライベートでは元気なのに、仕事となると無気力
    ・ネットの世界に引きこもる
    ・想像力が欠如している(ex.筑紫哲也氏の死を喜ぶ2chの書き込み)

    といったような特徴が見られ、だからこそ若者が嫌いだと主張する本。タイトルからも分かる通り、かなり感情的な内容。

     中には確かに共感できるものもある。特に筑紫氏が死んで「メシウマ」と書く行為は醜悪だった。死んだ人が誰であれ「死屍に鞭打つ」のは日本人にそぐわない行為だと思っているので。

     でも「統計的な裏付けあるのか」、「若者に対する偏見ではないのか」という批判に対して「印象論でも事実だからいいじゃないか」と開き直る様は見苦しい。自分の見聞きした範囲内だけで「今の若者はこんなにダメな連中だ!」という著者の主張に説得力はない。

     この人は主にネット上のナショナリズムの高揚を批判したり、9条擁護を主張したりすることから、リベラル派のはずなのに、若者観は「最近の若者は情けない」、「自分の若い頃はもっとマシだった」と悪い意味で保守的。年をとるとこうなるものなのか…

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著者プロフィール

たくましいリベラルとして、右傾化する政治状況から現代社会の病理まで、メスをふるう行動派知識人。1960年生まれ。精神科医。立教大学現代心理学部教授。『若者の法則』『ぷちナショナリズム症候群 若者たちのニッポン主義』『生きてるだけでいいんです。』『弱者はもう救われないのか』『「悩み」の正体』『リベラルじゃダメですか?』ほか、著書多数。

「2017年 『憲法の裏側 明日の日本は……』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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