みんなちがって、みんなダメ

著者 :
  • ベストセラーズ
3.65
  • (14)
  • (27)
  • (21)
  • (4)
  • (3)
本棚登録 : 327
感想 : 37
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784584138861

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 多くの人が、まずタイトルに導かれて手に取ってしまうと思う。

    「多様性、多様性」と言われオンリーワンが素晴らしいように謳われるこの時代に、このタイトルはぶっ刺さる。

    ボクもそうだった。
    「なぜ、みんな違うことがダメなのか?」
    その主張の根拠を知りたい。
    著者の考え方を知りたい。
    そう思って、気がついたらAmazonでポチッていた。

    手元に届いてまず著者情報を読んでビビった。
    自分がミミズに思えるくらいの高学歴!!
    なおかつ、「イスラーム」と馴染みのないワードが書いてある。あまりいいイメージのない宗教ワードだっただけに、逆に学ぶにはいい機会だと思ってしまった。

    冒頭から「バカ」という言葉を滝のように浴びることになった。おもしろい。
    気持ちいいくらいにバカと言われる。
    俺もバカ、みんなバカ、世の中バカだらけ。実際、そうだよね。だから社会がギクシャクしてる。
    ソクラテスさんの「無知の知」を思い出した。まずは自ら気づくことから。

    本書は宗教が信じられなくなった時代に、信仰の重要性を説く。信仰なき人間に「すべきこと」などない。確かに、そうかもしれない。
    どう生きるべきか、何のために生まれたのか、そんなこと考えるより「したいこと」をすればいい。それが信仰なき人間の幸せな生き方だと著者は言う。

    ちなみに多くの日本人は自分は無宗教だと信じているけど、それ勘違いだと思う。だって、「これはやっちゃダメ」とか「こうした方が正しい」とか道徳的な基準はしっかりある。こういう規範となるものが海外では宗教なだけだと思う。

  • 中田考という人の事ははじめて知った。

    またイスラムの考え方についてもほとんど知らなかったので、たまたま手に取ったこの本の考え方には結構衝撃を受けた。


    いまの産業資本主義全体を覆う生きにくさの原因は、

    本当の意味で、

    「何をしたいか」

    「何ができるか」

    「何をすべきか」

    についてそれぞれが知らないことだという。


    著者の表現では、

    「自分をヘビだと勘違いしたミミズ」と書かれている。


    勘違いしたミミズはカエルを食べてやると言い残してで出かけていったっきり戻ってこない。


    身の程を知る。

    つまり、「自分には何ができるか」ということに対して、より現実的にならないといけないし、

    そもそも生きる価値や人間に価値はないと言うことを認められるかどうか。ということ。


    たいがい出来もしないのに、もっとやるべきことがある、こうならなくちゃいけない。にふりまわされているのが現代の人々である。よく言われることだと、

    「承認欲求が強すぎる」という一言になるんだと思う。


    無限に肥大化する「承認欲求」とうまくつきあうべしということには、自分も大きく賛同するし、

    改めて自分を戒めないといけないなと。


    一方で後半のくだりの、しょせんみんなバカなんだから、何も考えず優秀な人やボスと思った人に黙ってついていけばだいたい幸せ。という話はちょっと分かりにくく感じた。


    誰かが決めたすべきことや、価値があること、承認欲求にふりまわされるな。と説いておいて、何も考えずにボスについていけば大丈夫。と言うのはちょっとな。


    全体的にはものの見方を広げてくれる良著だとおもう。

    キュートな表紙も良いね。

  • イスラーム教徒である著者による人生論。

    判りやすい言葉でありながら内容は剛速球w
    内容はとても論理的、なのに小賢しさは感じられないので受け止めるのは結構大変かも。
    言ってる事は難しいことじゃないんだけれどね。

    >人が知るべきは「自分が何をしたいのか」、そして「自分には何ができるのか」の二つしかありません。
    >本書を読み終えて「自分が何をなすべきか」が気になり始めたあなたとは、主がお望みなら、またどこかでお会いすることになるでしょう。

    内容に賛同するも反感を持つのもあるのだろうけれど、前書きにあるこの言葉は真理なのだろうと思う。

  • タイトルにビックリして手に取りました。
    金子みすずも仰天することでしょう。

    表紙のイラストのかわいらしさに油断してはいけません。
    読み始めるとけっこうな辛口評論。きつい言葉の上に、自論が語られていきます。

    知るべきことを知らない人はバカであり、不幸な人間も基本的にバカ。

    バカな自分をバカなままに見つけることが大事ですが、気づくだけではだめで、何をするかが大事だということ。

    「バカ」が頻発しますが、ようやくこの辺から変わります。

    「何をしたいか」「何ができるか」「何をすべきか」がわかるのが賢い人間だという話になります。

    これは「何をしなければならないか」ではないとの注意が入ります。
    それは善悪の問題で、その判断基準は神であり、自分ではないのだそう。

    なるほど。バカの羅列が消え、ようやく挑発的な表現が薄れてきました。

    先ほど、不幸な人間はバカだと語りましたが、それは幸せを求めようとする気持ちがある限り、不幸を感じてしまうのが問題なのだそう。
    幸せでなくてもかまわないと気づくと幸せになれるということで、仏教的な考え方が感じられます。

    また、自殺の原因は、承認欲求であるため、生きていることに意味がないと知ることで、生きることができるということ。
    これもまた仏教的ですね。

    挑発的な表現のタイトルから入りましたが、著者が言わんとすることはかなり哲学的な内容だったということに気づきました。

  • ツイッターで「〇〇礼拝だん」と淡々と呟くハサン先生。以前から気になっていましたが、今回初めて読んでみました。

    自己肯定感の低さと、それと裏腹に生じる自己承認欲求の強さというのはたしかに現代の病理だと思う。

    それは、資本主義・リベラリズムが生んだファンタジーに洗脳されているからだ、というようなお話。

    まずイスラム教的には、生まれてきた時点で承認されているから、承認を求めるのは無意味ということがあるらしい。これは自己啓発系の方々が好む「だからあなたには価値がある」という言説に繋がっていきそうだけど、もちろんそんなことはなく、「だから自己実現など無意味な努力はやめておけ」というところに繋がっていく。


    仏教ではなかなか到達しづらい、じゃあ実際この社会をどう生きていったら良いか?という部分を改めて考えるのに良い材料になると思った。というか、その、バカが下手に「考える」のは、頭の中でこねくり回すだけでなんの意味もないからやめろっておっしゃっているんですね、そもそも。

  • 「生きているということ自体が承認されているということだ」(「やさしい神様のお話」より)/神に承認されて入れば、そもそも承認欲求自体がなくなります。なくなるというより、どうでもよくなる。/といったあたりはムスリムとしての実感から出てきたものか。「あなたは世界に一つだけの花だ」「みんなちがって、みんないい」ではなく「みんなちがってみんなダメ」といったフレーズが繰り返され、人間など大した存在ではない、分を知りなさい、できることをしなさい、ということか。そして”全体の八割ぐらいいるバカにとって賢い生き方は、周りに合わせること。そして親分についていくこと"と。このへんの指針は編者にも疑問を持たれてるように結構穴のある話だなと感じた。/賢さとは「何をしたいか」「何ができるか」「何をすべきか」を知っていること、と/生きづらさみたいなものについては、それはこういうことですねという解析はあるが、いまいち指針には共感できないという雑感。/"いま流行りのテーラワーダ仏教のヴィパッサナー瞑想"というワードがあったが寡聞にして知らず。ちょっと調べてみようかな、と。

  • 「みんな違って、みんないい」とは、
    "みんな"のそれぞれに価値を認めるということ。
    しかし価値があるということはそこに比較が否応なしに生まれる。
    比較は評価、競争へと向かう。「みんないい」は
    そうした価値の評価によって生まれる差別や不平等から目をそらして
    「みんな大丈夫」と丸め込むような欺瞞をはらんでいる。

    みんなダメ="バカ"は
    バカな自分を"バカ"と認識するところから始まる。
    イスラムでは神以外の一切が他人を評価することを許さない。
    人は産まれた時点で神によって承認されており、イスラムにおける「すべきこと」さえ淡々と遂行していれば生きているだけで承認され続ける。
    非イスラムな大半の日本人には「すべきこと」すらないので、「したいこと」をしていればいい。

  • 人間はみなダメ
    知るべきことを知らないから
    知るべきこととは、
    自分が何をしたいのか
    自分は何ができるのか

    自分が何をなすべきか

    第一章 あなたが不幸なのはバカだから

    承認欲求という病
    カトリックの告解にルーツあり
    西洋文化は親の承認を求める本能的な欲求がある

    生きていることはすでに承認されているということ

    信仰があると承認欲求はいらない
    神を満足させることのみ

    教育するとバカになる
    わかるということを重大視し過ぎるのでつらくなるんです

    学校は洗脳機関

    バカとは自分がヘビだと勘違いしたねずみ

    答えなんかない

    ピーターの法則、能力主義の階層社会ではいずれ全員が無能になる

    民意というのはバカ

    バカは死んでも治らない

    気づきは救済とは関係ない

    賢さの3条件
    何をしたいか
    何ができるか
    何をすべきな

    賢さは分を知ること


    第二章 自由という名の奴隷

    第三章 宗教は死ぬための技法

    第四章 バカが幸せに生きるには

    言論の自由には実体がない

  • 今まで考えもしなかったイスラームの視点を提示されて、初めこそ戸惑うものの、段々と既存の視点を客観視できるようになるのがとても新鮮。今抱えてる悩みは、自分で勝手に無駄に難しく考えてるんだと思えるくらい、頭スッキリしました。

  • この本、20年前のドン底の時に出会っていたら、どうだったろうか。
    受けても受けても落とさる就職氷河期を実感し、バイトを複数掛け持ちし、不眠に悩まされ、睡眠導入剤を飲みながら、就活をしていた。

    「どんな環境でも喜びなさい。」なんて誰も言ってくれなかった。働かなくてはいけないという考え方は、資本主義による洗脳であると、今なら理解できます。「幸せを手放せば幸せになれる」ということも。

全37件中 11 - 20件を表示

著者プロフィール

中田考(なかた・こう) イスラーム法学者。イブン・ハルドゥーン大学客員教授。著書に『イスラームの論理』『帝国の復興と啓蒙の未来』『13歳からの世界制服』『ハサン中田考のマンガでわかるイスラーム入門』『タリバン 復権の真実』『俺の妹がカリフなわけがない』『宗教地政学から読み解くロシア原論』など多数。

「2023年 『みんなの宗教2世問題』 で使われていた紹介文から引用しています。」

中田考の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×