観光のまなざし: 現代社会におけるレジャーと旅行 (りぶらりあ選書)

  • 法政大学出版局
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  • Amazon.co.jp ・本 (289ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784588021619

作品紹介・あらすじ

フーコーの〈まなざし〉の概念を手がかりに,ツーリストの視線とその対象を歴史的・経済的・文化的・視覚的レベルにおいて分析。観光をテクストに文化を読み解く。

感想・レビュー・書評

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  • 「観光」という非常に多面的な対象を分断された各論から語るのではなく、ミシェル・フーコーの「まなざし」の概念を用いて観光そのものの「構造」を捉えようとした作品。

  • 「こで言う過程は一部分、ヴィクター・ターナーの巡礼の分析で明らかにされているものである。ある段階から次の段階へ移るときには、重大な“通化儀礼”がそこに必ず伴う、と言うのである。そういう段階には次の三つがある。第一は通常の居住地や慣習的な社会上のしがらみからの社会的・空間的な切断。第二は〈境界状態>。そのなかでは各自は自分を「時間と場所から出た・・・反・構造」にあると感じる。慣習的なしがらみは宙吊りになり、強力な結合力をもつ<コムニタス(共同態)>が体験され、そこには聖なるものあるいは超自然的なものの直接的な体験がある。第三は再統合で、ここでは各個人は元の社会グループに再統合されるが、一般には以前よりやや高い社会的ステータスに合体する。」(p.18)
    観光において第一に「通常の居住地や慣習的な社会上のしがらみからの社会的・空間的な切断」があり、第二に差異との出会いがあり、第三に元の社会グループに再統合されるが、個人が内部に持っている文化は差異との出会いによるまなざしの交換によってより分節化している。個人が分節化された文化を内包することは、分節化された多層的な多文化社会での生活力を高めるであろう。
    「文化を変化させることが可能」(野田宣雄、「文化を変える戦略」、『産経新聞』、2001年9月16日付朝刊、第11面)であろうか。「既成の環境、歴史観、文化的象徴、社会の様態、政治形態、こういったものすべてがまなざしの対象として一部でも作り直されていく場合、一体、その社会的効果はどのようなものなのだろうか。」(アーリ,ジョン、『観光のまなざし---現代社会におけるレジャーと旅行』、1995年2月、法政大学出版局、東京、p.276)この問いに対する答えは「文化の変容」である。言いかえれば、「日本も経済再生するためには、さらに文化を変える必要がある」(野田宣雄、同上)のであれば、「場の見世物化」(アーリ,ジョン、同上)により文化を「まなざしの対象とし」(アーリ,ジョン、同上)、そのことを媒介として文化を作り直すことができるはずである。私達は「文化を戦略的に変えるという思想」(野田宣雄、同上)を持たなければならない。

  • Urry御大の傑作の1つ。社会学寄りなので実務向きではありません。ただし本書の色褪せない普遍的考察は,きっと実務の一助になります。基本書なので押さえておいて損はありません

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著者プロフィール

(John Urry)1946~2016年。ロンドン生まれ。英国の社会学者。ランカスター大学社会学科教授、英国王立芸術協会のフェローなどを務めた。21世紀における「移動」をめぐる新たな社会科学の中心的人物として、世界的に著名。
日本でも『観光のまなざし』『場所を消費する』『社会を越える社会学』『モビリティーズ』などの邦訳で広く知られ、その著作について、社会学者の北田暁大は「具体性と抽象性を往還するなかで理論が生成していく現場を読者は目撃することになる。……スリリングであると同時に論争的でもある」と評し、作家の髙村薫は「20世紀を生きた者なら誰でも身体感覚としてもっている感覚を初めて言葉にしてもらった驚き」と述べるなど、アカデミズムを超える広い読者層を獲得している。
2003~2015年、ランカスター大学に「モビリティ研究所」を設立し責任者を務めた。2015年、新たに「社会未来研究所」を設立し共同責任者となり、人生の最後の時間を“モビリティーズ・スタディーズ”の集大成としての“未来研究”にかけ、翌年の2016年に亡くなった。本書は、その最後の研究成果として結実したものである。

「2019年 『〈未来像〉の未来』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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