鉢の木 (日本の物語絵本 16)

  • ポプラ社
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (37ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591089460

感想・レビュー・書評

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  • [墨田区図書館]

    図書館の特集コーナー"かみさま"にあった一冊。「竜のすむ島」で著名なたかしよいちの絵本だけあって、いかにも昔話で読み聞かせにも使えるかも、と思える表紙絵が目に留まって立ち読み。ただこの本の"かみさま"は神様ではなく、(主人公にとって)"かみさまのようにえらい雲の上の人"といった立ち位置の人との話だった。

    出典は謡曲(能の脚本)から来たものらしく、話の流れとしてはかさこじぞうや何かの昔話でよくあるように、身分を隠した相手から一宿一飯の恩義を受けるという話。

    主人公の佐野源左衛門常世なんて知らないなぁでもこの話で有名な人なのかなと思いつつ読んだら、主人公自体は架空らしい。ただ、かみさま扱いの「最明寺入道時頼」は鎌倉幕府第5代執権北条時頼のことで、その諸国巡りにちなんだ逸話(というか寓話?)らしい。そして今もことわざとして使われる"いざ鎌倉"はこの話から生まれたというのも初耳。

    こういう裏ネタ?があると、一気に印象深く面白く思えてしまうな。単なる昔話としてではなく、能を学んだ時とか、6年の歴史で鎌倉幕府を学んだ際にも絡んで使えそうな本。

  • 雪深い上野の国(こうずけのくに・現代の群馬県)佐野の里あたりにて。
    一人の修行僧が、ある貧しい家で、一晩泊めてもらう。なけなしの粟の飯を出してもらい、「大好物の粟の飯が食えるとは果報者だ。日本一のおもてなしとぞんずる」とお礼を言う。
    主人は暖をとるために、丹精込めて育てた梅・桜・松の盆栽を囲炉裏にくべて、修行僧をもてなした。僧は盆栽を燃やしてしまうことをひきとめたが、主人は修行僧のために家を温めた。

    主人の名は佐野源左衛門常世(さのげんざえもんつねよ)。
    一族のものに家を乗っ取られてしまい、今は落ちぶれた身の上だという。鎌倉へ行き、幕府に訴えたものの、執権である西明寺どのが諸国視察のため不在で、どうすることもできずにいる。しかしもし鎌倉に事が起こるようなことがあれば、真っ先に馳せ参じるつもりだと話す。

    修行僧は翌朝、旅立って行った。鎌倉に来ることがあれば訪ねてくてください、幕府に訴えるための手引きをいたしましょう・・・と言い残して。

    そしてその年の春。関東8カ国の大名小名にむかって、鎌倉に馳せ参じるよう幕府からおふれが出された。常世は色あせた武具に、よぼよぼの老馬を連れて鎌倉を目指した。
    そして御殿前の広場で幕府の執権、西明寺どのが、かの大雪の晩に泊まっていった修行僧その人だと知る。
    鎌倉になんのことも起こってはいなかったが、西明寺どのは、一番に駆けつけた常世に、加賀国の梅田、越中の桜井、上野の国の松江(梅・桜・松の名が入った領地)そしてもともとの領地を与えた。


    謡曲などで知られる物語の絵本。「いざ鎌倉」の諺もこの物語から生まれたそう。

  •  謡曲『鉢の木』より。上野の国の佐野。雪の夜、旅の僧のために、その家のあるじは、丹精込めて育てていた鉢の木を薪がわりに、いろりにくべる。

著者プロフィール

熊本県生まれ。児童文学作家。壮大なスケールの冒険物語や、考古学の世界へ読者をいざなう書籍を、数多く執筆。『埋もれた日本』(牧書店)で日本児童文学者協会賞、『竜のいる島』(アリス館)でサンケイ児童図書出版文化賞・国際アンデルセン賞優良作品を受賞した。ほかに『狩人タロの冒険』『まんが世界ふしぎ物語 全10巻』(以上理論社)などの著書がある。2018年逝去。

「2023年 『まぼろしのくびながりゅう 改訂版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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