(003)畳 (百年文庫)

  • ポプラ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (172ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591118856

感想・レビュー・書評

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  • 林芙美子、獅子文六、山川方夫という最高の組み合わせ。テーマは「畳」。ずるさ、意地の悪さ、かわいらしさ、格好悪さ、惨めったらしさ、いじらしさ…様々な感情が三者三様の表現で描かれていて、昭和独特の毒っ気とユーモアがクセになりそう…と思った。
    林芙美子「馬乃文章」
    こんなダメ男が亭主だとしんどいな…と思うのだが、何だか憎めない。馬の肉を食べたがる五歳の娘が可愛い。
    獅子文六「ある結婚式」
    式をしたがらない若夫婦ってのが今どきだなぁと思った(否、今も昔も若者の考えることって同じなのかも)。テンポよく起承転結がキレイだったな、獅子文六の作品をもっと読んでみたい。
    山川方夫「軍国歌謡集」
    先の二篇がすごく短くて、この作品は中篇といっていい長さだったため若干たじろいだものの、予想に反してのめり込んで読んだ。
    登場人物らがそれぞれに拗らせてて、めんどくさい奴らよのぅと思いつつも、そのめんどくささが何となく理解できる。この若かりし日の思い出のほろ苦さよ…何だか後を引く作品だった。

    百年文庫を読むたび、よくこの漢字にこの三作品を選んできたなぁと感心する。これからも定期的に読んでいきたい。

  • 山川方夫『軍国歌謡集』途中から話が転調する気がするのだが、女は登場したほうが良かったのか?
    獅子文六『ある結婚式』小説というよりエッセイですね。
    林芙美子『馬之文章』私小説のようなスタイルだが、実際は主人公の性別さえ異なる。どこまでその要素があるのだろうか。

  • 山川方夫の軍国歌謡集が圧巻の面白さ。自分も下北に住んでいたので、タイムスリップしたような、何か、奇妙な気持ちのデジャヴがあった。

  • 畳、というテーマは忘れがちなまま読み進めたのだけれど
    3作、読み終わって、畳を想うと、なんとなくしっくりくる。

    「馬乃文章」
    お味ちょでぐちぐち、が、最高にかわいい。
    なよっとして、頼りないダメな男と
    からっとして、しっかりした女房。
    読んでいて、小気味よかった。

    「ある結婚式」
    私も、「式」というものがあまり好きではなく、
    比較的小ばかにして眺める癖があるのだけれど
    人生の節目で身を引き締める気持は、大切な経験なのだ、と思う。
    ささやかな、この結婚式は、とても素敵だ。
    と、思った。

    「軍国歌謡集」
    愛とは、実に滑稽なものなのだなぁ。
    大チャンの愛。
    晴子の、恍惚とした瞬間の愛。
    どちらも、非常に独りよがりだ。
    多かれ少なかれ、皆、幻想の中に生きているのだろう。
    昌二の冷めた感覚と、愛への憧憬が、おもしろかった。
    昌二は結婚するという。
    それは、彼の、愛への執着だろう。
    でも、最後の一文で、彼の今後の結婚生活がちらりと窺えたような気がする・・・
    あたたかい家庭を得て、感情の回路が取り替わることを、祈るよ。

  • 林芙美子の著作に触れてみたくて手に取りました。
    林芙美子「馬乃文章」、主人公である妻子ある売れない作家の
    心の描写が鮮やか。物書きだからこそ書ける、貧乏を知っているからこそ書ける。

    獅子文六「ある結婚式」スマートな文体の随想のような小説。
    繰り出される言葉が、スマートである。

    山川方夫「軍国歌謡集」この三編の中では一番長い。
    当初は淡々としているが、中盤から引き込まれ、ラストが気になる。軍歌のメロディーが全て判っていたら楽しく読めそう。
    著者は、教科書で読んだ「夏の葬列」の著者でもあるそうだ。
    主人公の心情が難解なところが似ているか。

    埋もれてしまいそうな小説達を発掘してくれるシリーズ本である。

  • 三篇のうち、山川芳夫の「軍国歌謡集」が一番好きです。この本がなかったら、出会わなかったでしょう。ポプラ社さん、ありがとう。

著者プロフィール

1903(明治36)年生まれ、1951(昭和26)年6月28日没。
詩集『蒼馬を見たり』(南宋書院、1929年)、『放浪記』『続放浪記』(改造社、1930年)など、生前の単行本170冊。

「2021年 『新選 林芙美子童話集 第3巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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