- Amazon.co.jp ・本 (171ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591118863
感想・レビュー・書評
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★★★★ 何度も読みたい
志賀直哉『流行感冒』、正岡容『置き土産』、里見弴『秋日和』収録
『流行感冒』は、一度の過ちで人の全てを評価することはできないし、状況が変われば今まで見えていなかったその人の一面も見えてくるというお話。
一度子供を亡くした経験から娘に過保護になっている父と、そんな彼の目からは首にしたいほどいい加減に見える女中の話。
ある時病が流行し、父は女中や妻に娯楽施設に出掛けるのはおろか、玄関先での立ち話すらも禁止した。しかし1人の女中がそれを破り芝居を見に行き、嘘をついた。そのため彼らの仲は険悪になり、彼は女中に暇を出そうとするが…
あたたかい気持ちになるお話。
『置土産』は、一見利己的な言動に見えても、その目的は自分のためかもしれないというお話。
講釈師として生計を立てる主人公は両親と師匠を亡くし、有名な講釈師に声をかけられたことで弟子入りする。その講釈師の十八番で、他の人には真似のできない芸を教えてもらいたい主人公。しかし師匠はのらりくらりとかわすばかし、主人公に面倒を押し付けるばかりで…
登場人物が講釈師であるためかもしれないが、口頭で説明するような文章で、軽い感じでオチまで読めた。
『秋日和』は、亡夫の友人があまりにウザくて途中でやめちゃった…もっと歳とれば読めるようになるのかな詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
漱石も「ようかかん」と感嘆した志賀直哉の文章は、確かに流れるようでいて、一種独特のものだ。正岡容は安藤鶴夫のライバルだったらしいが、物語る世界も単に寄席芸人を描いているというのを超えて確かに近しい。仲が悪かったのも、近親憎悪の類だろうか。
里見弴は小津映画の原作と言われれば、スクリーンが目に浮かぶ。昔のサラリーマンは本当にヒマだったのだなぁと。 -
百年文庫4冊目。
どこか牧歌的で濃密にも感じる人間模様。
憧れる気もするし、少し濃すぎにも感じる。
作品は凄くよかった。 -
『流行感冒』志賀直哉
教科書で読んだことがあったか「小説の神様」。私小説=心境小説とのことだが、まさに。平凡ながらもリアルな心情をたくみに描いている。どこが面白いか分からんところもあるが、子の病気を心配するってのはいまの自分にはいかにもリアルではある。オダサクや太宰からは批判されてたのね、よく分からんが。1919年発表。これはスペイン風邪か?
『置土産』正岡容
セリフの調子がたまらない。オチまでついて落語のよう。寄席評論家として安藤鶴夫と双璧だったらしい。うん、これはすばらしい。
『秋日和』里見とん
最後の白樺派だとか。小津映画の原作になった作品。小津映画自体見たことないのだがナルホドと感じる。少し女性の語りが伝法すぎやしないかとも思ったが。しかしこれ作者が70歳越えてからの作品なんだよね。多視点ってあたり技巧を振るっている。 -
秋といえばこの3作品、にどうしてなったのかはさておき、著作権フリーとかあるんかな。中でも志賀直哉、正岡容の2作品は突っ張ったところのない、ウォーミングなお話で、小説というと肩肘張りそうになるところで、人間の嫌疑とか、いやらしさとかに、最後は人情が勝るという作品を書けるところが著名人が著名たる所以だと思いますね。もちろん、それとは反対の姿勢を貫く太宰治みたいな人もいますが…3作品目はイブモンタン出てくるしね。しかし名前が「いるる」に「とん」だもんね。読めん。