作品紹介・あらすじ
並はずれた美男子と結婚した「私」は、夫が夜ふけになると床をぬけ土蔵に行くことを怪しみはじめる。闇の中、手探りで梯子段をのぼっていくと-。隠さねばならなかったこの世ならぬ歓楽と哀しみ(江戸川乱歩『人でなしの恋』)。自信に満ちた裕福な学者が、ベッドの下に光る二つの目に神経をかき乱されてゆく(ビアス『人間と蛇』)。放蕩の限りをつくす名門一族の「私」が、同姓同名の同級生に追われる恐怖を描いたポーの『ウィリアム・ウィルスン』。背筋のさむくなる三篇。
感想・レビュー・書評
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現代のホラーの原型がすでにここにあると言えるだろうか。しかしまた原型は原型なので、刺激という部分ではやや物足りない気もする。特に『人間と蛇』については何故そういう結末に至るのか、今ならよほどの追加材料で説得力を持たせない限り成立しないプロットだと思う。95/100
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どれも幻覚に惑わされる話。江戸川乱歩『人でなしの恋』 は人形にガチ恋する話だが、現代でもアニメやマンガキャラと結婚する人がいると思うと随分前からそういう概念はあったのかと興味深い。ビアスの『人間と蛇』 とポーの『ウィリアム・ウィルスン』は読みづらくてあまり好きではなかった。
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名作短編集。
江戸川乱歩「人でなしの恋」
ピアス「人間と蛇」
ポー「ウィリアム・ウィルスン」
いずれも自ら生み出した幻想、妄想に溺れる、あるいは引き摺り込まれる話で、怪しくも面白い。
中でも江戸川乱歩は、今の漫画でもありそうな設定で、レトロな語り口も相まって随分面白く読んだ。
ウィリアム・ウィルスンは、途中まで面白いし、きっとこうなんだろうな、という予想通りで期待を裏切らない感じではあったけど、この結末だとすると、今、語ってるのは誰なん?となった。途中まではウィルスンが語る過去の話、途中からは今でウィルスンが体験してること、にならないと、辻褄が合わない気がするんだけど、何か見落としてるのかな。
いずれにしても、この3編、いい取り合わせには違いない。
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乱歩作品に乱歩訳のポーと言う贅沢な取り合わせ。
告白もののこの二作品は次の展開が気になり頁を捲るのももどかしく読みました。
ビアス作品は思い込みの力と言うか人間の想像力の怖さを感じました。
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「人でなしの恋」
展開が想像できるものの、妖艶で暗く静かな完結した世界を感じた。
人形にはどこか魂のようなものを感じることがある。
それは見ている人間の意識の投影なのかもしれないけれど、だからこそ深く共鳴できる(と錯覚してしまう)のかもしれない。
人でなし、といえばそうなのかもしれないが、人と結びつくほど深く人形と結びついてしまった門野は、哀れでもあり、ひょっとしたらそれなりに幸福だったのかもしれない。
「人間と蛇」
結末より、呪詛というものは恐怖心から来ているのかもしれない、と改めて思った作品だった。
暗示にかかってしまったのだなぁ。
異界というよりは、人間の心の強さ、思い込みの力、を感じた。
「ウィリアム・ウィルスン」
2人目は人間ではないよね、もう。
あれは良心の部分で、良心を殺してしまった男の話、なのだ。
良心の部分を疎ましく邪魔に感じるというあたりが、もう病んでいると思う。
現実と妄想がいりまじっているかのような、不思議な作品だった。
ちょっと読みにくかったな。
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著者プロフィール
1894(明治27)—1965(昭和40)。三重県名張町出身。本名は平井太郎。
大正から昭和にかけて活躍。主に推理小説を得意とし、日本の探偵小説界に多大な影響を与えた。
あの有名な怪人二十面相や明智小五郎も乱歩が生みだしたキャラクターである。
主な小説に『陰獣』『押絵と旅する男』、評論に『幻影城』などがある。
「2023年 『江戸川乱歩 大活字本シリーズ 全巻セット』 で使われていた紹介文から引用しています。」
江戸川乱歩の作品