([あ]6-1)学校のセンセイ (ポプラ文庫 あ 6-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (333ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591120989

感想・レビュー・書評

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  •  飛鳥井千砂さん、初読です。2007年の発表でやや古いのですが、著者20代の作品でした。

     タイトル通り、高校教師のお話です。ただ、よくありがちな困難を乗り越えての成長譚ではありません。ちょっと変わってるんです。
     何がって、主人公の〝人そのもの〟です。友人から〝キングオブ面倒くさがり〟と呼ばれ、上辺の誠意はそこそこだが熱意はなしという、教師としてどうなのよ!と、突っ込みどころ満載なんです。

     ところが、物語が主人公・桐原の視点で、かつ一人称で心の内なる言葉が独白のように語られて進むうちに、なぜかテキトー、いい加減、ドライにもかかわらず、周囲との関わりの中で、桐原に少しずつ心理変化を起こさせるのです。これが、読み手の印象変化につながります。
     多分、人は多面的なのに、主人公の表も裏も炙り出し、若者の正直なモノの見方・考え方を鮮やか・リアル・精緻に描き切る著者の筆致力の成せる技なんだと思います。
     周辺の人物の書き分けも見事です。友人、女友達、学校の同僚や生徒、アパートの隣人など、特徴付けがよくなされ、主人公との絡みも興味深く読み進められました。

     この主人公を擁護するわけではありませんが、教師も人なんですよね。「聖職」などと死語のような言われ方をした時代もあったでしょうが、どんな職業にもいろんな人がいる(困った先生は最近の方が多いのでは?)のは当たり前で、著者は、たまたま一人の若い教師の日常を切り取り、瑞々しく描いたのでしょう。
     読後感がとても爽やかで、素敵な作品でした。

  • うん、これは面白かった。やる気はないが、仕事はそつなくこなす高校教師の話。熱血教師物語でもなく、大人の汚い事情でもなく、本当に何もない感じなのがいい。独り言っぽい地の文が妙にツボにはまる。主人公の考え方が面白い。それを先輩教師に見透かされているのが良し。少しだけ前に進んだのも良し。良作。お薦めです。

  • やる気はないのに、仕事はそつなくこなす高校教師の話
    生意気な茶化しをする生徒、教師に好意を寄せる生徒、気配りのできる生徒
    生真面目な先生、細かいことを言う先生、精神的に子供な先生などなど
    あと、女友達やツィギー似の激細女性とのあれやこれやとかも


    教師ってホント面倒くさいだろうなぁ~ としみじみ思いやる

    やる気はないのに、ある程度の距離感をもってそつなく生徒や先生たちと付き合っている桐原の姿に嫌悪感はない
    「信念」と言う名の「偏見」をもって他人に強制する教師よりもよほど好感を持てる
    教師に限らず、こんなバランスの取れた対応できる人って現実でも重宝するよね

    一方、永野先生のように生真面目な先生もいる
    まぁ、悪くはないけどそのせいで生徒に過剰な反応をしてしまうのもどうかと思うんだよなぁ
    まぁ、体験談として中学高校の先生を思い浮かべると、あの先生はどんなタイプなのか今ならよくわかる

    教師とはいっても所詮は人間だからな
    そりゃぁ完璧な人なんていないさ
    それでも本質的に教師に向いてる人はいると思う
    僕が思うのは、将にこの桐原みたいにやる気はないけど調整能力を持つ人が一番適切なんじゃないかと
    熱血教師も使いようによっては害悪でしかない場合があるしね
    かといって愚直に規則や原則を守る教師がいいわけでもないし

    やはり教師に限らず、人間力のある人って事なんだろうか

  • なんとなく先生になってしまった青年が、教師としての使命に目覚め、成長していく物語…

    …なのかな?と思って読み始めたらちょっと違った!!!

    そうですよね~
    先生だって、プライベートでもずっと先生、生活のどこを切っても金太郎飴みたいに先生…
    なわけ無いですよね?
    いつも演じていなきゃならないのかな?大変。
    みたいにふと思った事がある。
    接客業とか営業もそうかもしれないけど、なんだか“学校の先生”というと、“聖職”とか言われて特別扱いされがち。

    でも、“学校の先生”も、数ある職業の一つ、と考えて、今時の若者のお仕事とプライベート、という描き方をするとこんな感じになるのかな?
    ラノベっぽい感じもしますね。
    アニメにしても面白いかも。
    主人公のセリフが大変なことになってしまうけれど。

    そうです、何が面白いって、モノローグで突っ込みまくる主人公のセリフ。
    相手にも、自分にも。
    誰でもふだん、いろいろ心の中で考えている。
    突っ込みや感想、感情。
    まずいなと思ったことは相手に言わないし、一人の時はもちろん話さない。
    それが全て、心の声ダダ洩れみたいな感じでモノローグになっている。

    …面倒くさいし。
    あ、また面倒くさいって言っちゃってる、俺。

    といった具合に。

  • 生徒や同僚との関わりが面倒くさいといいながらも、内面が変化していく主人公。いい先生、というか、いい青年ではないか。
    しかし…。モテますね。

  • おもしろかったな。こういう平和なお話は大好きだ。
    平成版「坊ちゃん」と言ったら言い過ぎか。
    いいな、桐ちゃん。

  • 採用試験を受けたら受かったから学校の先生になった主人公の話。

    誰とも距離を取って、なんでも面倒かどうかで判断する。
    よくある判断基準だと思った。自分もそうだからでしょうね。
    カタカナで「センセイ」と書きたくなる、いわゆる先生キャラじゃないところが読みやすくて良かったです。

    この主人公には「面倒くさい」と言って踏み込まない癖が付くきっかけがあったのだけど、遠ざけてばかりじゃ前に進めない、周りにいるイイ奴らに気まずいって感じで頑張ってみる。

    だいたいキレイに話がまとまって、恋人も出来そうで、良いラストでした。

  • やっぱり飛鳥井さんの小説、好きだ♪
    読んでると、なんだかホッとする。
    人間観察が趣味の私にとって、飛鳥井さんの小説に出てくる人達は興味をそそられる。

    主人公の桐原は、なんとなく私立高校の社会科教師になってしまったが、行動原理はすべて「面倒くさい」。
    しかし、日常の周りの人達との関わりの中で、少しずつ変わっていく桐原がリアルで良い。

    「クイーンオブ面倒くさい」を自負する私には、桐原の呟きが手に取るように解る。だけど、大人になるって事は、面倒くさい事もこなしていかないとならない。

    この小説には、アッと驚くような大きな出来事は書いてない。けれど、本当の現実や生活が書かれている。

  • 一生懸命な学生、同僚を一歩引いて見ている主人公。
    その主人公が一生懸命枠に入っていく感じ。
    本人もそれを心地よく感じてる。
    真剣に取り組めるものがある方が、楽しいよなって思いました。

  • 行動原理がめんどくせー、テキトーな感じのセンセイの話
    先生になる人は、情熱とか夢とかなんかアツイものを持ってるんだと思ってたけどこんな感じのゆるい感じの先生もいいのかもね先生って特別な感じがしてたけど普通なんだね〜

著者プロフィール

1979年生まれ、愛知県出身。2005年 『はるがいったら』 で第18回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。11年に上梓した 『タイニー・タイニー・ハッピー』 がベストセラーとなり注目を集めた。他の著書に 『君は素知らぬ顔で』(祥伝社文庫) 『女の子は、明日も。』 『砂に泳ぐ彼女』 など多数。

「2021年 『そのバケツでは水がくめない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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