ふたたび、ここから

著者 :
  • ポプラ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591124918

作品紹介・あらすじ

石巻市街から牡鹿半島の漁村まで。変わり果てた被災地を巡り、人々から託された「命の言葉」をつづるノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • 【東日本大震災関連・その33】
    (2011.11.01読了)(2011.10.20借入)
    本の題名からは、何の本かよく分かりません。副題を見ると、「東日本大震災・石巻の人たちの50日間」とありますので、3月11日以後の石巻の人々の様子を綴ったものということがわかります。「石巻赤十字病院の100日間」を読んだ頃、石巻をキーワードに本を検索してみたところ、ヒットした本です。東日本大震災に関する本は、結構チェックしていたつもりなのですが、知りませんでした。6月に出ていたのに。
    でも、石巻に関するものをまとめて読むことができたので、よしとしましょう。
    この本は、「2011年3月23日から4月28日まで、東日本大震災の被災地・石巻市及び女川町など現地を取材し、書き下ろしたものです。」(246頁)
    被災者が10人いると10の物語があります。それぞれに個別の体験があります。
    石巻では、津波の時に火災も多数発生したようです。津波で助かったと思う間もなく、火災からの逃れなければいけなかった方々がいたようです。
    津波に追われ、危機一髪で助かった人、あと一歩で津波にのみ込まれ流されていった人、自分は助かったけど、流されていく人を見るしかなかった人、津波の中で必死で助けた人、いろんな人たちがいます。
    瓦礫に覆われた状態では、どこから手をつけていいかわからず、気力がわかない人たちも、ボランティアの方々に瓦礫を片づけてもらって、綺麗になると、もう一回やってみようかとやる気が出てくるようです。

    章立ては以下の通りです。
    1、「卒業証書」は残った 石巻市・門脇小学校の卒業式
    2、南浜町の町内会長が語る「津波が奪ったもの」
    3、焼け跡にうまれた「こども避難所クラブ」
    4、牡鹿半島 小さな漁村の孤立
    5、女川町 破片すら見つからず―
    6、山の脇から、津波は突然やって来た
    7、高台の寺院で 日本登山医学会のボランティア医療団
    8、「黒い山が動いてきた」 道路寸断がもたらしたもの
    9、歴史ある「宮城交通」 会社の解散を一度は決意
    10、大衆食堂「味楽」のお母さんが思うこと
    11、再び、調理器具を拾い集めて
    12、石巻赤十字病院にて
    13、炊き出しの行列にも並べない人たち NPOの活躍
    14、シーツをつないで屋根をつたった「恵愛病院」
    15、せめて一杯のコーヒーを……

    ●石巻へ(9頁)
    仙台までは、東北新幹線はもちろん、まだ東北自動車道も開通していない。取材を開始した当初は、山形空港まで飛行機で飛び、山形駅から臨時バスに乗って仙台に入るのが最短ルート。信じられないくらい、遠い道のりだった。
    ●前兆(81頁)
    取材した日も大きめの余震が続いていたが、直前にゴゴッ、ゴゴゴッという地鳴りが聞こえてくる。ちょっと他では感じないような不気味な前兆現象だ。
    (都会のビルにいると感じることはないけど、田舎の平屋にいると、地震が揺れ出す前に、地鳴りが聞こえます。地震が来ることがわかります。)
    ●連絡が(82頁)
    ラジオからは、おしか清心苑の入居者名を挙げて、「無事かどうか連絡ください」というメッセージが聞こえてくるが、それにこたえる手段が何一つなかった。
    ●松の木(109頁)
    「近くの長面海水浴場に植えられている松の木が流れてきて、皆、流木にすっかりやられたみたい。見覚えのある建物が全然、残っていないんです」
    津波は、水の勢いも激しいが、多くの構造物は漂流物によって壊されていく。普段は風光明媚な、暴風や高潮を防ぐはずの松の木々が、皮肉にも凶器になって津波とともに町に襲いかかったのだ。
    (流木にやられたかどうか見ているわけでは、なさそうな発言を取り上げて、それに想像力を加えて、松の木が凶器になって町を襲ったことにしています。これは、危険な記述だと思います。確実な情報を確認していただきたい。)
    ●目の前にあることをやる(160頁)
    震災から20日あまりの間、周囲の光景に毎日ガクッときて、長期戦だからと行動を躊躇していたが、「それだといつになってもできない」と気持ちを切り替えたそうだ。
    いまできるのは目の前にあること。寝る前にやるべきことを書き出しておき、「きょうはここまで」と一つ一つ達成して行くのがコツだという。
    ●ニーズと支援(198頁)
    いまも本当に困っている人たちのニーズと、何か贈りたい側の支援が合っていない。
    (生身の人間たちなので、公平公正というのはなかなかに難しいことだと思います。)

    ☆関連図書(既読)
    「石巻赤十字病院の100日間」由井りょう子著、小学館、2011.10.05
    「奇跡の災害ボランティア「石巻モデル」」中原一歩著、朝日新書、2011.10.30
    (2011年11月6日・記)

  •  東日本大震災が起きてから50日間の石巻の人たちの記録

     震災から12日後に医療雑誌の依頼で、取材に入った著者が見た、そして出会った石巻の人々の姿が記されています。
     事実を事実として書いてあるので、震災後の人々や町の様子がよくわかりました。地図が細かく載っているので、場所が把握しやすかったです。
    震災から半年が経とうとしている「今」。この本に記された状況が、ずっとよくなっているようにと祈らずにはいられません。

  • 東日本大震災直後の石巻市を中心としたルポ的な本。
    被災した状況や、その後の避難生活、産業関係、病院関係などひととおり網羅している。
    個人的に興味深かったのは、石巻赤十字病院の章。石巻赤十字病院は内陸部なので津波の被害に遭っていないが、その分拠点病院として機能していた。災害対策マニュアルに従って、患者を選別するトリアージ部門、そして色ごとのエリアに分かれてやってきた患者の対応をしたらしい。ほかの本にもあったが、東日本大震災では多くの人が流されたため、重傷患者が多かったわけではなかった。津波による低体温症や、高齢者で津波で薬がなくなってしまった人が多かったらしい。災害によって、街の被害も、人の被害もさまざまなんだなと思った。

  • 震災後すぐの様々なエピソードがのっている。現地の生の声が読める。

  • 目を逸らしちゃダメだ
    ようやく手に取りました。

  • 石巻の震災ルポ。学びは多い。
    どんな視点を持つかで見えてくる事柄も変わってくる。

    今回は「想像力」の有無で、
    「生き死にの差」「事後対応の差」
    に直接的に表れてくる事が分かった。

    以下列挙。
    •門脇小学校校長:3/9の余震で防災対策を強化 → 学校にいた生徒をほぼ全員無事避難誘導した

    •同教員:震災時咄嗟にブルーシートを持ち出す → 寒さ対策に貢献した

    •同教員:同じく名簿を持ち出した → 保護者への引き渡しがスムーズに行えた

    •子供避難所クラブ代表柴田さん:門脇小に一時避難したが、瓦礫の山(津波)と猛火が容赦なく押し寄せてくるため、生きるために校舎の2階から裏山に橋をかけた → 歩けないお年寄りなども含め、手の届く範囲の全ての人を助け出した

    •石巻赤十字病院 災害対策マニュアルを日頃から実施 → ただちに災害対策本部の設置、院内アナウンス、トリアージを行い、医療活動をスムーズに行えた

    •千葉さん 津波が押し寄せてくるとき、咄嗟に犬の首輪を外す → 地区で2匹だけ残った犬の1匹となった


    など、
    まだまだ紹介したいエピソードはたくさんあるが、
    震災前に、また震災最中に
    想像力を持ち合わせていたか否かで、
    事後の結果に大きく影響している事が分かる。


    防災のためにぜひ読んでおきたい。

  • 震災時の石巻のエピソードは多々あり、ここにある人生の物語はごく一部。災害に直面した幾多の書き表されていない人々の物語があるのだろう。だからこそ、石巻の記録は貴重だ。

  • 資料番号:011415791
    請求記号:369.3/イ

  • 2011年3月11日の東日本大震災直後の3月23日から4月28日まで、被災地石巻市、女川町などを取材して書き下ろしたもの。小学校、食堂、タクシー会社、病院など様々な人達の被災直後の様子から、立ち上がって懸命に生きる姿が描かれている。

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著者プロフィール

1962年、神奈川県生まれ。ジャーナリスト。ひきこもり問題、東日本大震災、築地市場移転などのテーマを追う。NPO法人KHJ全国ひきこもり家族会連合会理事。

「2019年 『ルポ「8050問題」』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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