peperoniさんの感想
2011年12月31日
雨の降る幼い日に参列した父の葬儀の記憶から語り始められるこの物語、ひとことで言うと母親不在の物語だ。 心理学的にいうとファザコンめいた大人の女性たちの、「不在の父」に対する何らかの訴えかけとも受け取れるのだが、、、 父の記憶が欠落したままの柊子とある事情からかたくなにお墓参りを拒む姉との心の葛藤が、一本の芯のようにこの小説を貫いている。 表紙のイラストが児童書めいていて損をしている。十分に大人の鑑賞に耐えうる作品なのだから、、、
1975年、岐阜県生まれ。2005年に「ゆくとし くるとし」で第9回坊っちゃん文学賞大賞を受賞し、小説家としてデビュー。『真夜中のパン屋さん』で注目を集める。 「2019年 『路地裏のほたる食堂 3つの嘘』 で使われていた紹介文から引用しています。」