([お]9-1)困ってるひと (ポプラ文庫 お 9-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (356ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591130216

感想・レビュー・書評

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  • 単行本のときに立ち読みして、ちょっとなあと思っておいた本だったけれど、友人がおもしろかったというので、文庫になって読んでみた。

    明るくユーモアを交えて書いてあるので、だまされそうになるのだが、彼女はそうとうにしんどい状態だ。自分だったらここまで自分のことを客観視したりできないかもしれないと思うし、もっとワガママなふるまいに出てしまうと思う。

    また、難病とはなにかや、日本の傷病者に対する支援制度の行き届かなさについても、考えさせられた。介護保険制度の問題などで、老人やしょうがい者がますます生きづらくなっている印象は受けていたけれど、それだけれではなくて、もっと全体的に相変わらず健常者というか、健康な男性中心に社会制度はできているのかーやっぱそうっぽい。っと思った。

    またまた、医療の現場で発揮される恩恵モデルというか、パターナリズムに対しても考えさせられた。医者は本当に患者より患者のことをわかっているのか?という問題。「こうした方がいい」という医師のアドバイスは確かに病気の治療に関しては、素人である患者にとって有効なアドバイスだろうが、生活や嗜好に関してまで、アドバイスするのはどうなのかと思った。患者の人権の問題について考えさせられた。

    病人だからといって、やれそうなことまで制限されるのはおかしい。でも、病気のときはこころも弱るものだから、果たして自分だったらばどこまで怒りを行動のエネルギーに変更できるかと考えたら。。。。

  • 文庫版なのでこちらに。

    年齢が近く環境も似ていた著者の書くとても軽妙でユーモア溢れる文章に、
    本当に毎日死にそうになってる人の日常なのかわからないほど
    笑ったり泣いたりしました。ムーミンとかおしりとか…!

    それでも必死に(きっと文字以上に必死に)日々を迎えて
    生きること(デート)を選択するそのタフネスには脱帽。


    人がひとり生活する、生活していくということ。
    それは社会と共存するということ。ときには書類になって。

    人を絶望の底に追いやるのは人だということ。
    人を絶望の底から救ってくれるのもやっぱり人だということ。
    感情があるから人はまだ生きられるということ。


    私も一時期「難」のつく病気になったときのことを思い出しました。
    まあ難聴だったんですけど。
    この本に書かれるようなことは全くなく、それでも結構困った。
    そして完治はしてないけどまあ「治った」範囲なんだろうけど。
    プレドニンも飲んでたけどこんなに覚悟しなかったけど、とか思いながら。

    著者はすごく頭のいい人だと思うし、いつか症状が緩和して
    ビルマに関わるお仕事をしてほしいと応援せざるを得ない。
    けど平和な普通の毎日も過ごして欲しい。
    もうなんでもいい。幸せになって欲しい。
    幸せってなんだろう。って打ったら幸せって難だろうって変換された。
    やっぱり難だらけかもしれない。けど、彼女なら乗り越えてくれるはず。

  • 確かに東日本大震災で目の前が真っ暗になった。しかし、作者は、それ以上の苦難を味わいながら、前を向いているように感じる。筋膜炎脂肪織炎症候群とは始めて耳にする難病だ。そんな難病を抱えながら、東京で独り暮らし、病気と闘う女子大学院生。何ともすごい!ここ数年、家族が病気で倒れることが相次ぎ、その度、打ち拉がれた気持ちになり、快復する都度、再び気持ちが晴れるの繰り返しだった。作者にはそういった束の間の安堵も無く、よくぞ前向きな気持ちを維持出来るなと感心する。男がこういう状況を味わえば、…ダメだろうな。女は強いよ。いや、強くなったのか。いやいや、男が弱くなったのだ。

  • 涙しながら読みました。
    ユーモアあふれる文章だけど、内容は悲壮です。
    社会福祉制度や役所の手続き、凄腕医師のエゴ…
    どうにかならないものか。
    世間の皆さんにぜひ読んでもらいたい本です。

  • ビルマ難民を研究していた女子大学院生が、原因不明の難病に罹った。
    全身が腫れ、触られただけで激痛が走り、手足は潰瘍だらけ、全ての関節が痛み軋み動かない、目は乾き腫れ、口の中は炎症で真っ赤、髪の毛も抜け、38度以上の熱が下がらない…。
    “皮膚筋炎”
    “筋膜炎脂肪繊炎症症候群”
    何軒もの病院を渡り歩き、病名が確定するまで1年。
    ビルマでは難民の「観察者」だったが、難病の「当事者」になってしまう。
    発病から入院、そして難病を抱えながらも独り暮らしを始めるまでを、ユーモアたっぷりに綴っている。

  • 想像を絶する困りっぷりだった。
    役所の仕事のわけわからなさったら健康でもそうなのに病気になったら更に無茶言われるんだな。
    でもそれができないならもう死ぬしかないってことなんだろうな。

  • 単行本を読んで印象に残ったので、文庫版を買って読んだ本。この本を読むと、入院の制度や福祉サービスが難病の人にとって変えた方が良いと考えさせられる本。難病を題材にした本だが、読んでいて重い気持ちになりにくい本。

  • ビルマ難民を研究していた女子大学院生が原因不明の難病にかかり、タイトル通り『困ってるひと』になる。痛そうな検査の連続、発症してから診断がつくまで1年もかかり、治る見込みのない病気と向き合い、自分の病状や、鬱になったりしたことも、ユーモラスに綴っている。暗くなりがちな『闘病記』にはしないという意図があるのか、文章が軽い。そして彼女独特の、自分の故郷=ムーミン谷とか、入院している病院=オアシス、宇宙プロフェッサーなどなど面白いとは思えない表現が多いところが私には合わなかった。日本の医療制度や社会保障など、ためになることも沢山書かれていたのに、その点がちょっと残念でした。

  • 病気になると困ること。
    一つ、病気の症状。
    一つ、治療のつらさと副作用。
    一つ、社会的制度の煩雑さ。

    病人と暮らす中で骨身にしみてるこの三つ。どの病気にも共通するのでしょうか。この本でも似たようなことが展開されており、うむうむとうなりながら読みました。

  • これはキタ…。間違いなく(去年ですが)2012年必読の一冊。ある日突然、「筋膜炎脂肪織炎症候群」という難病を抱えた著者が、発症から入院、退院するまでをユーモアのある文章で綴った作品。能町みね子さんのイラストなど、全体として暗くなり過ぎず、明るくポップな、しかし、日本の医療、介護、行政が抱える問題点にも踏み込んでいて、考えさせられる内容にもなっている。

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