([に]1-2)きのうの神さま (ポプラ文庫 日本文学)

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  • ポプラ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591130421

感想・レビュー・書評

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  • 人の卑屈な感情が、巡り巡って救ってくれる。
    そんな小さな奇跡の話。
    たとえば、自分にしか見せない姿を好きだとも思えなくなってしまった時に自分を認めてくれる言葉を言われたとき。
    本当に愛してるからこそ死んでほしいし、生きてほしいと相反する願いを心にもつとき。

  • 映画「ディア・ドクター」を観てから読みました。映画に出てきた登場人物のサイドストーリーなので、より映画の背景が理解できます。映画とセットで。

  • 映画監督、西川美和の短編集。人の心を描く上手さは小説でもいかんなく発揮されている。心の奥底に潜む、本当にささいな揺らぎをすくい取るという意味では、映画以上に繊細な作品になっている。それはもう、感心を通り越して恐ろしくなるほどに。でも、どことなく暖かいこの作品集が、私は好きだ。

  • 僻地の医療をテーマにした短編集。
    外では立派な医者、家の中ではダメ亭主である夫と、その夫を支える元看護師の妻を描いた「ノミの愛情」が印象深い。どこかで完璧だと、その綻びがどこかに出る、そしてその綻びによる被害を誰かが受けることになるのだ。
    先日両親の実家に帰ったばかりだからつくづく思うのだけど、田舎の方がより"生"とか"死"、特に"死"を意識せざるを得ない環境にある。そんな僻地に勤める現実の医者は、やはり思うところがたくさんあるんだろうな。

  • 西川美和監督の、小説。
    映画「ディア・ドクター」制作の際に取材したものを元に、
    「僻地医療」等をテーマに映画とは別の5つの話で語られている。

    さらさらと、読めるのに
    どうしてか、心にひっかかる。
    「重い」とはまた違う何か。
    それをなぜか言葉では表せない。

    中でも「ありの行列」が心に残った。
    好き、とも違うけれど、忘れられない。

  • 「ゆれる」や最近見た「夢売るふたり」の監督の西川美和の小説。
    短編集なんだけど、どれもがよかった。
    やっぱ、この人、すごいと思う。
    ささいなことだけど、人の心の揺れとか。

  • なんだろう、すごく人間らしいというか。
    主人公も周りの人も、至極人間。
    きれいなところと汚いところのブレンドが、現実世界のブレンド具合とちょうどおんなじくらいで、エンターテイメイントしている感じ。
    すごく好き。

  • 怖い描き方をする作家さんですね。

    この作品しか知らないのだけど。エグる心理描写。
    書き方は仰々しいけれど、あながち間違いではないと思う。
    田舎って、閉鎖的で人情味があるもの。

    映画ありきの小説ってのも、また新鮮ですな。

  • 今日ご紹介するのは西川美和さんの「きのうの神様」という一冊。
    人の心の闇や温かさを描いた名作だと思います。

    小さな村から一人だけ町の塾に通っている小学生のりつ子。
    変化の無い村の暮らしから飛び出すためには、
    町にある私立中学校を受験するしかないと思い勉強に励んでいる。
    町から村にある自宅に戻るには路線バスを利用するしか方法がなく、
    りつ子はいつも塾が終わったら閑散とした路線バスを利用していた。
    ある日、終点手前で珍しくバスの乗客がりつ子一人になったとき、
    運転手の一之瀬から自分の名前を呼ばれて戸惑った。
    一之瀬はもみ上げの長い無愛想な運転手で、
    村祭りのときにも酔った顔でブラブラと歩く姿に嫌な雰囲気を感じ取っていただけに、
    一人きりになったバスの中で名前を呼ばれることに不安を感じた。
    ところが、一之瀬が話し出したのは一之瀬自身の意外な話だった。
    (「1983年のほたる」)

    このほか、ありの行列・ノミの愛情・ディア・ドクター・満月の代弁者など、
    全部で5編の短編が収められています。
    どの話も人の心の中の切ない部分や不可思議な部分を描きながらも、
    登場する人物の心の移ろいや業の深さや温かさなどが心に響く物語ばかりです。

    著者の西川美和さんは映画監督をされていますが、
    小説家としてもその才能をいかんなく発揮されているなと思います。

    物語の中に大きな事件や謎が出てくるわけではなく、
    淡々とした日常の中にあるハプニングやちょっとしたエピソードを中心に、
    それを巡って揺れ動く登場人物達の心の動きが心に染み込んできます。

    ググっとのめりこんだりハラハラドキドキしたりする物語ではなく、
    ひとつずつの短編をじっくりと読んでは閉じるという、
    そんなさりげなく読み進める短編集だと思います。

    寝る前に枕元に置いてサラッと読んでから寝る。
    そんな感じで読むことが出来る一冊だと思います。

  • 著者が僻地の医療を題材にした映画作りのため脚本の素材として取材をしたものを小説にしたもの。映画の時間軸で語りきれなかったことを、この本で蘇らせたとのこと。
    5つの短編小説のどれもが、読み進めていくと何が起きるのか先を読むのが怖くなった。怖いもの見たさのような興味で読み終えた。人間の素のようなものを感じた。

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著者プロフィール

1974年広島県生まれ。早稲田大学第一文学部卒。在学中から映画製作の現場に入り、是枝裕和監督などの作品にスタッフとして参加。2002年脚本・監督デビュー作『蛇イチゴ』で数々の賞を受賞し、2006年『ゆれる』で毎日映画コンクール日本映画大賞など様々の国内映画賞を受賞。2009年公開の長編第三作『ディア・ドクター』が日本アカデミー賞最優秀脚本賞、芸術選奨新人賞に選ばれ、国内外で絶賛される。2015年には小説『永い言い訳』で第28回山本周五郎賞候補、第153回直木賞候補。2016年に自身により映画化。

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