([ん]1-4)明日町こんぺいとう商店街 (ポプラ文庫 ん 1-4)
- ポプラ社 (2013年12月5日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (265ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591137109
感想・レビュー・書評
-
大山さんの「あずかりやさん」で大好きになった明日町こんぺいとう商店街。
その商店街に七人の作家さんがお店を開店。
読んだことのない作家さんが3人。
彩瀬まるさん、千早茜さん、松村栄子さん。
どの方も気になっていた作家さんで、収録されていてうれしい。
アンソロジーの有難いところです。
収録作品を読む限りでは合うようなので、これまたうれしい。
好きなお話は……と考えて、どれも好きだ~♪と思う。
アンソロジーって、ひとつやふたつは「んー……」ってお話があるものなのに。
またまたうれしい。
元気なおばあちゃんたちの夢のカフェ、焼きおにぎりの香ばしい匂いがするお米屋さん、昔ながらのオムライスを出してくれる洋食屋さん……どのお店も居心地が良くて、何度も足を運びたくなる。
舞台が固定で別の作家さんの作品集なので「競作」と呼ぶのが正しいのかもしれないけれど、ゆるく繋がり、くるっと輪っかになるようなラストで「連作」と呼びたい一冊。
2弾目を読むのも楽しみ!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
東京の下町、スカイツリーのお膝元に位置する明日町こんぺいとう商店街は、昭和の香りを色濃く残す商店街。
図書館で ゛いつか読む ゛登録していたこちらが、先日読んだ「あずかりやさん/大山淳子作」と同じ商店街名だと知り、漸く手にしました。
アンソロジーですが、あちこちで他作品(他店舗?)の人も出てきて、こういうところも商店街っぽいなぁ、とほっこりしました。
いい話ばかりじゃないけれど、
商店街で暮らす人たちの生命力みたいなものを感じ、元気をもらった気がしました。
続きも出ているので、また読みたいです。 -
短編集ということで、気になり読んでみました。
色々な作家さんが書いているので、一つ一つ違った感じが、良かったです。 -
【最終レビュー】
7名の女性作家のリレー短編集・予約著書。図書館貸出。
彩瀬まるさんを通じて出会った、この著書。
この商店街の話の続編が発刊されたので、読み終わって、図書館在庫貸出予約を入れました。
肩の力を抜いて、今まで以上に、ありったけに、7つのお店をそれぞれに巡っていった感じです。新しく、一つ、二つと楽しい発見もあったり。こうして読んでいくだけでも、商店街の雰囲気に包まれながら、心地よく気分がよかったですよ。
では、それぞれのお店ごとのレビューにご案内します。
〈一軒目 大島真寿美さん作『カフェ スルス』〉
『人生、いつからでも、やれるものなら、やってしまおう』
がテーマ。
私より「年上の年代の女性達」が始める
[新たなスタートライン]
同じ一女性の目線からも、彼女達からエールを送られているかのようでした。本当に、その通りだということを改めて教えられ、何だか、嬉しい気持ちになりました。
ランチメニューのスープセット(野菜は産地直送)、本当に食べたい!そんな気分になるんですよ…
スルス…「泉(フランス語)」
〈二軒目 大山淳子さん作『おあずかりやさん』〉
盲目の、27歳男性店主。ひょんなことがきっかけで、この「おあずかりやさん」を始める。
代金前払い、期間限定で預けたいものを預ける。期間が過ぎると、彼が処理する。その繰り返し。
盲目だからこそ、逆にメリットもあること。
[記憶力や生活の「術」を知ること]
常に「本(点字)を読みながら…」
[本からでも、情報は得られる]
そう、盲目の彼から教えられた感じです。
〈三軒目 彩瀬まるさん作『伊藤米店』〉
伊藤米店、四軒目以降、それぞれ少しばかり出てきます。やはり、お米屋ということで、日本人にしかない文化ということを改めて実感します。
[土鍋で、お米を炊いた『手作りおにぎりの風味』]
なぜ、これだけ好評なのかの「意味合い」がとても強く伝わってきました。
一人の母親の目線から、語られています。
女同士(著書ではママ友)の付き合い方の現状も。
自身が思ってたこと・そのままに書いてたので
「本当、その通り」とズバリ、そう思いました。歯がゆくなりますね…同じ女性なのですが…
伊藤米店の息子のこの言葉を抜粋しながら
『変わらないもんって「ないよ」』
〈四軒目 千早茜さん作『チンドン屋』〉
ほんのかすかな記憶の中に、実際に、見たことがあるなというのがあったなと。
昭和40年代~50年頃のチンドン屋の最盛期
ちょうど、自身が生まれた年代に該当するので、重ねて見てしまう所がありました。
戦後から今日、生きてきた、チンドン屋さんの男性・清治郎のエピソードを通じ
「見てきたもの・時代の流れの変化」
上手く描かれていて、とても印象深いものがありました。
春ちゃんという女性の方の、お店を持つ心構えの姿勢
『知っていても、知っていることを「ひけらかさない女性」だから、安心できた』(清治郎)
彼女の人柄を感じさせる、
[素敵な「品のある、女性の姿」]
というのは、こういうことだということを…
清治郎の商店街に対する、この想いに、拍手を送ります。
『チンドン屋、商店街「地べた」にあるもんだ。「地続きで、人の生活」に「つながっているもの」空には行けない』
〈五軒目 松村栄子さん作『三波(みなみ)呉服店―2005―』〉
和服をまとう容姿。
[和服の着こなしで「その人本来の雰囲気」を更に深く感じさせるもの]
この内容から、特に自身が感じ取ったことでした。
「着物は、基本、オーダーメイド」
「生地へのこだわり・気品・染め上げ方」
「坂東巴流」
「京友禅」「江戸小紋」
これらをキーワードに、和装の本来の魅力というものを描いていました。
〈六軒目 吉川トリコさん作『キッチン田中(洋食屋)』〉
商店街で「商売をする人」
商店街を「訪れる人」
それぞれの「人」の「流れ」に対する
[的確で鋭い、リアリティー感]
七軒の中で、一番に飛び抜けて伝わってきました。
特に、雑誌を通じて初めて訪れただけの人達に対する
「本来の心理」
本当、その通りでドンピシャです。
中心人物の花屋の一人娘・ひな菊
花屋さんというのもあってか、花を通じての想いというのは、素行はやや荒さもあったり、不器用ながらも、ひたむきに、飾らず、自然体。
『花は枯れても、季節が巡れば、再生する』
と同時に
『商店街の人達の「働く、人間が使い込まれた手」』に染み込んだ『魂』
店に携わる女性達の姿から、ひしひしと感じられたことでした。
〈七軒目 中島京子さん作『砂糖屋 綿貫』〉
古びた『家』
「清潔で居心地がいい」
砂糖屋 綿貫
この空部屋に下宿している、学生が主人公。
『砂糖の種類』が、これでもかというぐらいに、数多くあるとは、とても驚きでした。
でも、それぞれの「個性ある、目的に応じた風味」があるからこそ、更に、創意工夫で楽しめるということでもあるからで。
中白糖(煮物)、きび糖・甜菜糖(お菓子)などなど。
81歳の店主、元気いっぱいです。
ということで、この辺りで、お開きとします。
楽しんでいただけたなら、それで十分です。
ありがとうございました。
では、おやすみなさい。