ビオレタ (ポプラ文庫 て 3-1)

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  • ポプラ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (292ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591154359

感想・レビュー・書評

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  • 婚約者に一方的に別れを告げられて、道端で泣きじゃくっていた田中妙は、いきなり菫さんという身長が170㎝もある女に呼びかけられ、家まで連れて行かれた。
    菫さんの経営する、棺桶を売っている「ビオレタ」という雑貨屋で働くことになる。
    ボタン屋の千歳さんとも知り合い、とりあえずの職場と、とりあえずの恋人と、とりあえずの日々を過ごすことになる。
    妙がノートに書き連ねた言葉や、菫さんの言葉がチクッと突き刺さるんだけど、いやな感じがしない。
    さびしいとか、必要とされていないとかうじうじ考えちゃってるけど、妙はほんとは幸せなんだよ。
    出てくる人みんなが飾り気がなくて、優しくて、ほんの少しの目に見えない何かに気づいて成長していく妙が微笑ましかった。

  • 3人の心の悩み心につかえたもの聞くとグッとくる。小4から学校を休みがちになり、それも理由があるのに、解決出来ない。猫を見捨てたってずーっと思い悩み、そして予定のない1日が始まるので。無口な娘とダジャレのおじいさんと後半に人となりがわかって展開するってグーっと来た=2回目。お母さんを死なせた十字架を背負った娘の、それから能力が本当にあればいいなぁ。のり弁に唐揚げにオニギリ2個に、必要な物を渡す、凄い才能でした。静かな始まりで粛粛と進む加藤元さん、3冊目だろうか。やっぱりいいですね

  • 社訓が「いつも心に棺桶を」!

    なんてシュールな(笑)

    さすが寺地さん。いたるところにグッと心をわしづかみする言葉が散りばめられていて、もう1度、いやもう3,4度読み返してその言葉を飲み込みたい。

    寺地さんの本は、何とも言えない気持ちや思いを言葉にしてくれるので、つい手に取って読んでしまう。強さも弱さもその人の短所も長所も、丸ごと受け入れていく感じがとてもいい。
    妙が「庭になる」とつぶやいた時、ちょっと感動した。
    してもらうことより、してあげられるようになると人は強くなるんだな...としみじみ思った。

    「でもさびしいのは標準仕様でしょ。なんというか。人間の。」
    そうか!寂しいと思う事は、とくべつなことではなかったんだ、と目から鱗。
    寂しさとの付き合い方を考えさせられた。

    最後の〝夢の種〟では、うっかり号泣する所だった。夢との付き合い方も、いいな。

    明日のハチミツ…に似た感じの作品だった。

  • 主人公の妙が婚約者に婚約破棄されてしまうところから始まる。
    大雨の中、道端で泣いていたら、ビオレタっていう雑貨屋を営む菫さんに拾われ(?)る。雑貨屋で働くことになった妙が、菫さんや、菫さんの周りの人、お客さんたちとの関わる様子が描かれている本。

    妙に共感どころありすぎて、菫さんにズバッと言われるたびに、「え!そうなの!?」ってなってた。「世間話ぐらいもっと気軽にしたらどう、その程度で失うものなんてないと思うけど」とかw

    自分はダメと言ってしまったり、
    人の言動を深読みしてしまったり、
    あの人みたいに強くなりたいと思ったり、
    その度に妙にかけられる言葉が、めちゃくちゃ沁みたなー。

    今までずっと、他の人と自分はそれぞれ違ったいいところがある、他の人にはない自分のいいところがあるって言葉をうまく消化できなかったんだけど、
    この本を読んだ後は、なんとなく、うん、そういうものかもしれない。ってなれた。

  • 寺地さんの作品はどれも登場人物が個性的ですがいつも、大好きなキャラクターばかり。
    こんかいも、物語の世界にずっといたいぐらい途中何度も読み返してすすみました。
    くすっと笑う場面があるなかで
    私の中にあるどこか妙ちゃんぽいところを
    刺激されすてきな家族や周りの温かさに
    何度も泣いてしまいました。

  • 「居場所なんて、自分がいまそこにいる場所しかないのにね。」
    当たり前だけど温和な登場人物が言うと深く納得してしまった。
    みんなジタバタしながら生きている、それで良いんだと思わせる、温かい作品でした。

  • 「『余白』って大切だと思う」

    ないと、見てる人が疲れる。それからこのスペースだけじゃなくて、と菫さんはわたしの肩を掴んで後ろに下がらせた。棚全体、店全体のバランスも考えなさい、と言い終えて居間に戻っていった。

    わたしは長いこと迷って棚に飾る五枚を選びながら、菫さんはダメなことをダメで、そしてなぜダメなのか、をちゃんと教えてくれるからありがたいな、と思った。白石さんを相手にしたときのように、わからなくて途方にくれるということがない。

    ノートに書いた自分の字を眺めているうちに、見てる人を疲れさせる、ということばが自分自身にも当てはまっている気がして、つらくなってきた。

    気まぐれな人に会っても動じない。

    そうだったのか、とノートを閉じる。
    問題点がクリアになると、尚更つらさが増す。
    全然、揺るぎなくない。
    いまのわたしは、揺らぎっぱなしだ。

    「でも妙、強いっていうのは悩んだり迷ったりしないことじゃないよ。それはただの鈍感な人ですよ」
    「強い」は「弱い」の対極じゃないよ。
    自分の弱さから目を逸らさないのが強いってことだよという父の話を理解しようとつとめたがわからず、頭がぼんやりしてきた。

    わたしは、慎一にとっての白石さんだったのだ。毎日毎日、わたしを見下して喜んでいたあの人と、わたしは同じことをしていた。
    頼りないけどかわいい。というわたしの思いには、きっと慎一を見下す思いが混じっていた。優位に立っているのが気持ちよかったのだ。そういう相手にこどもだと馬鹿にされて、去られたのがただただくやしかったのだ。

    いつか、自分ではどうしようもないほどのものを抱えたときに、わたしはこの棺桶を手に取るかもしれない。でも、それまでは。それまでは、めいっぱい、じたばたしようと思う。

    そもそも棘に苛まれる必要などなかった。わたしは菫さんじゃない。ずっと菫さんのように強くない自分が嫌だった。でもわたしはわたしだ。わたしにできなくて、菫さんにはできることは山程ある。でも菫さんにできなくてわたしができることだってある。菫さんにはない種類の強さがわたしに備わっている可能性だってなくはない。

  • 『余白って大切だと思う。
    ないと、見てる人が疲れる。』

  • 「わたしは、慎一にとっての白石さんだったのだ」
    果たしてこの本を読んでいるわたしは、誰かの白石さんになってないだろうか。
    「その人が持っている、けれども隠れている美質を引き出して育てられる人と駄目にしてしまう人がいる」
    共感して、心に残った言葉だ。
    最後は、ほっこりして読了感の良い話だった。

  • 「大人は泣かないと思っていた」でとても好きだと思った寺地さんの作品、こちらもとっってもよかった。胸に響く言葉がたくさん。菫さんの作る棺桶を買いに来る人たちの物語かと思いきや、妙をメインに、その周りの人達の物語でした。妙の、自分の過ちにきちんと気が付いて反省して、少しずつ成長していくところがぐっとくる。そしてその姿をちゃんと見ていてくれる家族の温かさを感じた。お父さんのキャラクターが特に好きでした。ずっと持っていたい一冊。

著者プロフィール

1977年佐賀県生まれ。大阪府在住。2014年『ビオレタ』で第4回ポプラ社小説新人賞を受賞しデビュー。他の著書に『わたしの良い子』、『大人は泣かないと思っていた』、『正しい愛と理想の息子』、『夜が暗いとはかぎらない』、『架空の犬と嘘をつく猫』などがある。

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