この夏のこともどうせ忘れる (ポプラ文庫ピュアフル ふ 4-7)

著者 :
  • ポプラ社
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感想 : 49
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  • Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591163436

感想・レビュー・書評

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  • 短編あまり好きではないのですが…どーしてもその先が気になっちゃっう。
    どの話もとても面白くて
    あと何ページで終わっちゃうって思いながら読むくらい。
    ほんとに短編ってもどかしい(いい意味で)
    もっと続きが読みたい!
    それが短編のよいとこなのかな…

    ちょっと冷めてて、でもまだ知らない事もたくさんあってこれからだって感じが高校生のころあったなぁって何となくおもいだしました。
    読む世代によって感想が変わるでしょうね。
    また読みたいなって思う作品でした。

  • どの夏の話の二人組も全部全部「どうせ忘れる」、そうわかるのは読み手の大半が「どうせ忘れた」人たちだからなのか。きっとそうなんだろうな。忘れきってしまった夏の出来事がいくつもあった気がする。そのヒントというか、かけらがたくさんこの本の中には転がっていて、この夏読むのにふさわしい短編集である気がした。

  • タイトルと表紙に惹かれて

    短編集だと知らずに読んだ。
    特に良かったっていう感動が得られるよりもその余韻に永遠に浸れるような、でも一生追いつけない感じがした。

    少年少女が欲しかった誰かからの関心を、その夏限定の誰かで埋めるような寂しさと特別感があった。

    登場人物たちにどうしようもなく好きな恋人がいたり、家族関係が円満なら、このような感傷を生むこともないだろうと思う。

    どの話にも受験を控える人物がいて、(もう直ぐに大学生になり大人になる気配があり)勉強をきちんとしていると未来ある若者とわかる描写に、「この夏のこともどうせすぐ忘れる」存在であることを思い起こされた。

    空と窒息
    昆虫標本
    宵闇の山
    生き残り
    夏の直線

    各タイトルのセンスが好き。

    首を絞めないと息ができない可宮
    弟を取り込んでしまった栗栖
    お祭りの日だけ毎年蘇るミナミ
    誰も知らない場所に行ってしまう篠
    物語に出てくるようなアオ

    アンニュイって言うのかな、みんなどこか現実を生きていないみたいで、(実際に幽霊もいるけど)その危なさが作者の言う強烈な陽射しと得体の知れない影を形作ってた。

    大学を卒業する今、完全に大人になる前に自分の高校生の時に感じた永遠を思い出せて、まだ自分は何かを失ってないことを再確認できて良かった。

    ニアBLみたいな少し暗い雰囲気のお話が好きなので楽しく読めた。長野まゆみの小説をより現代チックにしたような感じもあった。こういうの増えないかなあ。

  • 日常と非日常のまじわるこの絶妙なかんじ…すごく好みだった。
    読者にゆだねる終わり方も◎
    自分好みでない結末よりは妄想する方がいいし…
    何回も読みたくなるし、読む返すと伏線もたくさん見つけられて感動した。
    この春自分も高三になるからか、同じ高三の女の子が主人公の「生き残り」が一番印象に残った。彼女のような恋への積極性は皆無だけど、似たような考え方に共感してしまったり、篠くんのような性格の子いるなぁ、そういう子が好きだった、と思ったり、最後は号泣してしまった。
    「空と窒息」蒸し暑い空気感が伝わってきたのと、秘密を共有したことで変わっていく香乃との関係がとてもよかった。
    「昆虫標本」兄にゲームで負けた、という藍莉のセリフでまさか?!となった。

    とにかくこの時期に読めてよかった。
    高三の夏を過ぎてからだともっと高校生活謳歌しておけばよかったって後悔しそうだし。
    今同級生に全力でおすすめしたい一冊。

    毎日を人生最後の日のように全力で生きよ、という発想は、わたしにはちょっとマッチョすぎるけど、毎日を高校生活最後の日のように全力で恋せよ、というのはいいな、と思った。きらきらしていて。「生き残り」

  • 深沢仁『この夏のこともどうせ忘れる』
    2019年 ポプラ文庫ピュアフル

    タイトルにひかれて購入。初読み作家さんでした。
    5編からなる短編集。
    どれもが高校生の夏の物語を描いています。
    ポプラ文庫ピュアフルだし、タイトルや高校生、夏といったキーワードからキラキラした青春や煌めき、そして葛藤みたいなものを勝手にイメージしてましたがかなり違っていました。
    悩みや人とのつながり、家族、人として生きるみたいなテーマがつまった短編集でした。
    ちょっと重めのテーマだったりもするけれど、いい意味でとても考えさせられたりもするお話でした。
    思春期って本当に色んな悩みを抱えているけど、高校生たちが抱えるには大きすぎる悩みだったり。
    個人的には「生き残り」が一番心に響いたかな。
    どれもがビジュアライズされ、とても湿度を感じる物語たちでした。

    #深沢仁
    #この夏のこともどうせ忘れる
    #ポプラ文庫ピュアフル
    #読了

  • 青春小説やっぱり好きだなと思った。
    切なくてチクリと胸を刺されるような感情になった。
    特に「生き残り」が好きだった。



  • 背ラベル:913.6-フ

  • はじめての作家さん。夏休みが舞台の短編集。なんだろう、この淡々とした語り口に立ち込めるそれぞれの湿度は。
    YA版今村夏子みたいな。違和感と焦燥感が這い回るんだけれども、一応青春小説の外枠は保っているというか……。でも嫌いじゃない。


    「空と窒息」
    不穏な湿度。
    小4の頃から夏限定で母親に首を絞められる圭人。別に日常的に虐待されているわけではない。その首を絞める瞬間だけ、母が正気ではなくなっている。その行為の前後は至って普通。そのときだけ空気が変わり、闇が這いずり回る。
    夏は常に扼痕があり、シャツで隠す習慣がついている高校 3年生現在。塾の夏期合宿で自分の内側にある何かに気づく。中学生に見せていいのかちょっと躊躇うくらいの不穏感。
    最後なによそれー。ある意味ハッピーエンドかよ。ザラザラするー。

    「昆虫標本」
    そこはかとなくイカガワシイ湿度。
    どこにでもいる平凡な姉弟が、いわゆるミックスルーツである美男美女兄妹が住まうグリフィン家に通うようになる。
    きっかけはそれぞれの共通の趣味だったのだが、姉の千夏は妹の藍莉と、弟の拓哉は兄の栗栖と、それぞれの部屋で時間を過ごす。
    千夏の視点で物語は進むのだか、グリフィン家は俗世と隔絶された異世界の様な雰囲気があり、お菓子の甘い匂いと外界の茹だる暑さが、藍莉との妖美な時間をより濃密なものにする。
    千夏以外の視点を想像する欲求に駆られるおはなし。

    「宵闇の山」
    濡れた緑を踏んだような懐かしく切ない匂いの湿度。
    前2話の味とはちょっと違う、でも夏らしい一編。
    「裏山」の秘密基地から花火を眺めることが5人の恒例行事になったのは小4の夏祭りから。
    性格もそれぞれな少年5人組が夏ごとに裏山に集まる様子が描かれるが、ほんのり香る違和感。前後する時系列。
    書きようによっては派手にも恐ろしくもできる展開を、あえて淡々と描くことで、どことなく匂いや温度、湿度が自分の記憶と共鳴してしまう切なさがなんとも言えない…。
    しかしサツキいい男だな。

    「生き残り」
    湿度は低め。でも後半の情緒はこの本で1番乱れたかも。
    「打っても響かない」「基本体勢が受動態」「表情から感情が読み取れない」「彼に対するあらゆる判定において決定打に欠ける」みたいな男子生徒がたまにいて、内心「シャキッとしろよ」と思うが、なぜかそういった男子が地味にモテていることが多い。
    肉食・草食通り越して光合成する側だぞ、と不思議に思っていたが、篠くんだったのかもしれない。それならなんとなく、彼らの発する引力も可視化されるような。
    いや、篠くんは「生き残り」の由来エピソードから考えると「受動態」項目には当てはまらない気もする。そして決定的に彼らとは「違うコト」があるから本筋は別モノなんだけど、なんだろう。梨奈ちゃんが触れた彼の外側と内側に似たものを感じたというか。
    しかし莉奈ちゃんいい女だな。

    「夏の直線」
    磯の湿度。
    いちばんつかみどころがない話。
    小説家である父の別荘に勉強の名目で1週間滞在することになった羽白。放浪癖のある父は現在行方不明。
    自分に金星にちなんだ名をつけた父が1人で過ごしたこの部屋で、彼の存在に近づいてみたいと考えていた。
    ふらふらと散歩をしていてたどり着いた、お世辞にも綺麗とは言えない小さな砂浜で、羽白は「アオ」に出会う。彼は頑なに顔を見せたがらないが、羽白の父とのエピソードを持っていたため、不思議な繋がりができることに。
    何か暗示されているのに自分がキャッチできていないのか、こういう味で楽しむ大人な飲み物なのかよくわからない。
    アオの正体をぼかされて、話の着地点をぼかされて、父に掴みどころがないからぼけた輪郭で父と重なる羽代もなんだかぼやけてて、結果「不思議」としか呟けない……。
    夜の海ってキレイで引力があるけど、入るのは怖いよね。

  • 学生時代に超はまっていた携帯サイトの作者さんが、
    まさかの商業デビューしていたと聞いて、とりあえず短編集をと購入。これからの季節にぴったりだし。
    読んだ瞬間、あーーーー好き!って思った。
    そうそう、この文章が好きだった。
    淡々としていて、だけど耽美で、切なくて、あふれるくらいの思いが読み取れるのに、直接的な言葉は言わない。
    もう最高。
    忘れられないようなひと夏の思い出なのに、
    このタイトルですよ。もう~~~~好き!

    生き残りがめちゃ好きだった。
    高校生の恋愛って「いつか終わる」が前提なところがあって、でもその時は全力で恋をしていて。
    終わりが見えている恋愛って苦しいなあって胸がぎゅっと痛くなった。

    あとがきに、BGMが書いてあって、
    そういえばこの作者さんこういうこと書く人だった~って終始エモかった。

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著者プロフィール

小説家

「2015年 『Dear(ディア)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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